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細谷まりもより。。。

JCFが誇るシニア・チャンピオン、片山のり子先生よりバトンを受けました。
アマノダンスアカデミー、松下吉志先生のパートナー、細谷まりもです。

超長文なので、最初の数行だけお読みいただけたらと思います。

以下のビデオは、元世界チャンピオンのピエール・ドゥレイン氏が今年6月に行った講演の全容です。
残念ながら、英語で、14分という長さなのですが、非常にゆっくり、明瞭、丁寧に語られていますので、
英語はちょっとという方にもお勧めです。
(動画の下に、つたない概訳を載せましたので、お暇があればどうぞ。)

講演は、「誰かにが触れると、何かが変わる」というタイトルで、
「この曲で踊っていただけませんか?」という誘いの言葉で始まっています。
ボールルームダンスは、長い間敵だった人との障壁をも崩し、触れ合うことを通じて
尊敬、尊重の念や、信頼、チームワーク、思いやりの心を育てます。

また、ボールルームダンスは、研究の結果、子供達の教育や、痴呆化の防止や、
精神病患者の回復に有効であることが実証されており、
「子供達が変われば、親が変わり、ひいては世界が変わるのを助けることができる。」と結んでいます。

このスピーチ内容とともに、冒頭で語られる、「her」という映画についても、
後日アマノダンスアカデミー「まりものブログ」で感想を書きたいと思います。
よろしかったら覗いてみてくださいね。
「まりものブログ」(←クリック!)



(以下スピーチの内容です。)

May I have this dance please.
「この曲で踊っていただけませんか?」
私を含め、多くの人が口にする、ダンスのお誘いの言葉です。
敬意をこめて誰かに触れると、何かが変わります。

しかし、今日、新しいテクノロジーに囲まれて、人は人と触れ合うことをしなくなりました。
人類は今や、メールなどの媒体を通じて連絡をとりあい、実際に顔を合わせてのコミュニケーションをせず、
それにより、自然な気持ちや感情を簡単に避けることができます。

昨年のスパイク・ジョーンズの映画、「her/世界でひとつの彼女」では、
コンピューターと恋に落ちるという未来が描かれました。
電車やバス、エレベーターに乗るときでさえ、私たちは、アイコンタクトをとりません。

人は、自分を孤立化させるエキスパートになりました。
これは、全世界的な問題です。
アインシュタインは、テクノロジーが人類の交流をしのいで、世界が白痴化する日がくる恐れがあると予言しました。

今日、私は皆様の前で、楽しくて、簡単で、人生をまったく違ったものにする、もうひとつの方法をお見せします。
もし私が、「あなたが恥ずかしがり屋でも、もっと自信を持ったり、振舞いを変えることができる。」と言ったら、
また、「知らない人と、たとえ敵であろうと、信頼を築くことができる。」と言ったらどうでしょう。

すべては可能です。ボールルームダンスを通じて。
あなたは、「え?、何、どうやって、なぜ?」と聞くかもしれませんね。
ボールルームダンスでは、ふたりの人が向かい合って立ち、顔を見合わせ、お互いの目を見つめ、
そして、一緒に動かなくてはなりません。

その間、ホールドに包まれながら、お互いを知ることができ、楽しみを分かち合います。
ボールルームダンスは私の人生を変えました。
あなたの人生も変えることができるのをお見せしたいと思います。

私が、「紳士・淑女の皆様」と呼びかけたら、あなたは自分を少し違って感じるでしょう。
より姿勢を正し、積極的で、自信があるように感じ、
ボディーラングイッジや、態度を変えて、自信と確信を持っているように振舞うでしょう。

人々が私のところに初めてレッスンに来るときは、みんな背中を丸めて、うつむいて、入ってきます。
3ヶ月後には、少し頭が上り、6ヵ月後にはより真っ直ぐに立ってきます。
1年たつと、とても背が高く、とても真っ直ぐで、自信に満ちて、エレガントに見えるようになります。

これが、ボールルームダンスのマジックなのです。
ボールルームダンスは、自分を尊重することや、自制心、チームワークや、よいマナーといった、
人生での多くのスキルを教えてくれます。

ダンスに誘い、エスコートし、そしてホールドすることが、尊重するという関係を作り出します。
男性が、「この曲で踊っていただけませんか」と誘い、女性が、「喜んで」と答えます。
男性はそこで、女性の腕を取ってダンスフロアーにエスコートし、ホールドで包みます。
あなたが敬意を持ってふるまえば、相手はそれにふさわしい態度で答えます。
そして、ギブアンドテイクの関係が生まれます。

ここに、38年間のパートナー、イボンヌと私の写真があります。
私たちは、4回世界チャンピオンになったことを誇らしく思っています。

それでは、触れ合うこと、についてお話しましょう。
人が誰かと踊るとき、あなたは相手を、言葉で言い表せない方法で知ることになります。
あなたが触れた相手のリアクションを感じた時、印象は変わります。
あなたは、だれか他の国の人や、別の民族の人や、社会的、経済的ステータスや、人種の違う人と踊るかもしれません。
しかし、あなたが相手に触れ、目を見つめたとき、ふたりは、他にない唯一の個になり、人種や肩書きではなくなります。
あなたは、思いやりの気持ちや、信頼を学びます。

さて、男性の皆様に質問です。
あなたが奥様や、ガールフレンドと踊っていて、彼女がリードし始める事はありませんか。
女性は音楽を感じ、男性よりうんと速くステップを覚えますが、ダンスをするときには、特別な関係が必要になります。
教師として、私は女性に目を閉じるように言います。
それは信じられないほどの効果があります。

女性には、コントロールしないで、相手を信頼し、流れにまかせるように促します。
人生で、一緒にいる人を、心から信頼することがどれだけ頻繁にあるでしょうか。
今、ふたりはひとつになって、4本の足が、2本であるかのように、美しく動いています。
ダンスをしているときは、怒ったり、悲しんだりすることはありません。
体も、心も高揚します。

ところで、ボールルームダンスが痴呆化を防ぐ効果があることをご存知でしょうか。
アインシュタイン医科大学の研究によると、週に2~3回ボールルームダンスをすることによって、
アルツハイマーのリスクが76%減ったそうです。

他でもっとも近いのは、週に4回クロスワードパズルをするというもので、これは、47%でした。
ゴルフのプレーは、忘れてください。0%、本当です。

ボールルームダンスはどの年代でも楽しめます。
どうか、コンピュータの椅子から立ち上がって、サルサや、メレンゲや、タンゴを習いに行ってください。
きっと楽しいに違いありません。

私は1944年にジャファに生まれました。
父は北アイルランドのベルファースト出身でプロテスタント、母はパレスチナ人で、カソリック信者でした。
イスラエル国が誕生したとき、パレスチナ人であることから、1948年に故郷を追われることになり、
どこにも行くところがなかったので、ジョーダンのアマンに落ち着きました。
私はそこで育ち、前歯が欠けてとても恥ずかしかったので、笑うのが嫌でした。

その後、10代の時にはイギリスで、英語の訛りのせいで、からかわれ、いじめられました。
ある日、学校の友達のマーガレットが、地元のダンススクールに一緒にいかないかと誘いました。
私は、最初とてもへたくそで、私の最初のダンスの先生にどなられてばかりでした。
本当にどなられても、1、2、3、とワルツのビートを数えることができませんでした。
それでも私はやり抜いて、ついにダンスを職業にしました。

ブロードウェイのグランドホテルで、パートナーのイボンヌと踊ることになって、日中の空き時間ができました。
ボールルームダンスで自分の人生がどれほど変わったかを知っていましたから、
ボランティアでニューヨークシティの公立学校で、
やる気がなくて、手に負えない11歳の子供たち30人にダンスを教えました。
彼らも最後にはダンスが好きになり、私はそれこそ、教えることを愛しました。

この活動は、「ダンスクラス」と呼ばれ、社会的、情緒的芸術教育の場となり、
社交ダンスを通じて、子供達が、大事な生活技能を養なえるようデザインされた開発プログラムとなりました。
今日までに、「ダンスクラス」は世界31の都市で、40万人の子供達にダンス指導をしました。
研究によると、子供達の成績は上がり、いじめは減少し、学校全体の文化が向上しました。

私のニューヨークシティー公立学校への道のりは、”Take the Lead”というタイトルで映画化され、
アントニオ・バンデーラが主演しました。

私はまた、学校で、自閉症の子供専門に働くという栄誉も得ました。
そこには、話すことも、声を聞かれることすらも、とりわけ嫌いな少年がいました。
終業式のパーティーで、父兄や友人達が招待されていたときに、予想外に突然、その子が円の真ん中に入ってきて、
自分がどれだけ素晴らしい時を過ごして、どれだけダンスが好きかを全員に発表しました。
彼は9歳でした。彼の両親の目から、涙が零れ落ちました。
その他にも同じような話がとてもたくさんあります。

でも、ボールルームダンスは子供達のためだけではありません。
ジュネーブの精神科診療所では、医者や介護人が、患者と一緒にダンスを踊って、効果がありました。
また、アリゾナの大人のホームレス施設でも同じです。
どちらも、参加者の多数が、再び普通の感覚を持ち始め、自己の尊重と、尊厳を回復しました。
これはすべて、彼らが、社交上のたしなみとして手に手をとって、ボールルームダンスをすることによって、
紳士・淑女として扱われたからです。

ボールルームダンスは、長い間敵であった人との間の壁を崩し、憎しみや、偏見や、疑いを晴らすこともできます。
2011年には、私は生涯の夢が叶い、ジャファに戻りました。
そこで、ユダヤ人、パレスチナ人、イスラエル人の子供達と働き、彼らを一緒にダンスさせることができました。
これは、わたしがかつてしたなかで一番大変なプロジェクトでしたが、一番満足のいくものでもありました。
それは、とてもとても大事な瞬間でした。
その紳士・淑女たち、つまり、少年少女たちをボールルームスタイルでダンスをするようにいざなったのは、
触れることのパワーでした。

私のこの旅は、「Dancing in Jafa」という映画となって、公開されました。
そして、ここで皆様に言いたいのは、

「子供達が変われば、親が変わり、それは、世界を変えることにつながる」ということです。

映画の予告編がそれを提示しています。

(予告編の内容)
子供達が会場に集まっています。
ピエールは、「ジャファで生まれたのに、4歳で去ってしまった私が、子供達に返してあげられるのは、
ボールルームダンスです。10週間のプログラムで、パレスチナやユダヤの子供達が一緒に参加します。」
と言って、ダンスの指導を始めます。

しかし、イスラムでは、子供達がダンスをするのは禁じられていて、誘われた子供達はびっくりします。
「もし父親がアラブ人といるところを見たら、僕は殺されるよ。」
「ユダヤ人とアラブ人なんてありえない。」

ついに、クラスを中止しなければならない事もありました。
ユダヤとアラブ、ふたつの文化で引き裂かれた町。
子供達は一緒にひとつになることを学ばなければなりません。
どうするかといえば、敵とダンスをするのです。

最初はつぼみだったのが、今は大きく開き始めました。
子供達に、まず自分を尊重し、他の人々も尊重する事を教えるのが私の夢です。
そうです、ダンスをすると、何かが変わります。
「この曲で踊っていただけますか」、と誘うだけでいいのす。

(予告編終了後)
スピーチの最後に、皆さんにお願いがあります。
この会場を出るときは、腕を取ってエスコートして出てください。
そして、自分の姿勢や立ち方がどう変わるか、どれだけ楽しいかを感じ、家に帰ったら何か音楽をかけて、
パートナーをやさしくホールドで包み、ふたりの関係がどう変わるかを体験してください。

きっと一歩一歩ごとに、あなたの人生が変わるでしょう。
皆様の幸運とご多幸をお祈りします。
ありがとうございました。

さて、次は、ブログ初登場(多分)、いつも明るい笑顔が素敵な、
アマノダンスクラブの吉村美恵子先生にバトンタッチ。
挽回よろしくお願いしま~す。

【管理人からのお願い!】

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コメント ( 2 ) | Trackback (  )
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コメント
 
 
 
いい記事ですね (愛読者)
2014-08-13 09:36:40
わかりやすい、とても素敵な翻訳ですね。ありがとうございます!
 
 
 
Unknown (まりも)
2014-08-13 13:08:20
愛読者様
長い文章をお読みいただきありがとうございました。
ボールルームダンスが、たくさんの人たちの人生を変え、幸せを運ぶことがでれば素晴らしいですね。
私たち教師がそのお手伝いをできたら、と思います。
 
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