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神戸市情報公開審査会 答申第123号 区画整理部長宛書留郵便の収受簿等

2008年07月11日 | 事務・事業に関する情報
答申第123号
平成20年7月11日

神 戸 市 長
矢 田 立 郎 様

神戸市情報公開審査会
会長 佐 伯 彰 洋

神戸市情報公開条例第19 条の規定に基づく諮問について
( 答 申 )


平成19年6月27日付神都市清第131号により諮問のありました下記の件について、別紙のとおり答申します。

1 申立人から区画整理部長あて送付した書留郵便(親展)の収受簿及び受取記録、決裁文書、同書留郵便に対する区画整理部長の回答文書及び決裁文書
2 泉通3丁目整地工事の展開図、構造図など補償金計算の根拠である文書(図)の編纂現況での決裁文書、補償金の計算書及び決裁文書
の公開請求に係る部分公開決定に対する異議申立てについての諮問

別紙
答 申


1 審査会の結論
平成5年当時に作成した「実施設計書工事費内訳書・代価内訳表」の工種ごとの「単価」及び本件単価に数量を乗じた「金額」を非公開とした決定は妥当ではなく、公開すべきである。その余の決定については妥当である。

2 異議申立ての趣旨
(1)異議申立人(以下「申立人」という。)は、神戸市情報公開条例に基づいて、以下の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
「1 請求人が平成18年12月18日付で区画整理部長○様あてに書留郵便(親展)で
  照会し、回答を求めた書簡について
  ① 上記文書の収受簿及び受取記録
  ② 上記文書の決裁文書
  ③ 上記文書に対する区画整理部長様の回答文書及びその決裁文書
 2 灘区泉通3丁目○-○に係る泉通3丁目整地工事の展開図、構造図など補償金計算の根拠である文書(図)について
  ① 上記文書等の編纂現況での決裁文書
  ② 上記文書による補償金の計算書及び決裁文書」

(2)市長(以下「実施機関」という。)は、
ア「文書収発簿」
イ「河原地区西工区土地区画整理事業に関する問い合わせに対する回答について(伺)」
ウ「建築物等の移転又は除去による損失補償金の決定及び支出について(伺)」
を特定し、公文書ア~ウの一部を非公開とする部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行った。

(3)これに対し、申立人は、本件決定を取り消し、請求の趣旨にあう公文書を特定して公開すること、及び一部非公開とされた情報を公開すること等を求める異議申立て(以下「本件申立て」という。)を行った。

3 申立人の主張
申立人の主張を、平成19年6月6日付の異議申立書(以下「申立書」という。)及び平成20年5月15 日付の意見書から要約すれば、概ね以下のとおりである。
神戸市情報公開条例に基づく申立人からの情報公開請求に対して、実施機関が行った公文書部分公開決定処分の取り消しを求める。
実施機関は、申立人の求める文書のうち、平成18 年12 月18 日付で区画整理部長あてに照会し、回答を求めた親展、書留、配達証明付郵便物収受簿及び受取記録について「文書収発簿」と標題のある書面1枚を公開したのみであった。しかし、当該書簡は、親展書留の郵便物であって、公文書管理規程に照らしても申立人を軽視した実施機関の対応であるので、全ての公開を求める。申立人に非公開(隠す)とする理由がない。
上記○部長あての親展照会文書に対して同部長からいまだ回答がない。実施機関が公開した書面は申立人が公開を求めた文書に当たらないことから不存在通知処分とすべきである。
部分公開した当該実施設計書代価内訳表の単価及び金額を非公開としているが、当該単価は、十数年前の単価であり、現在において非公開とするに値しないので全ての公開を求める。このシステムを明示して具体的な説明を求める。

4 実施機関の主張
実施機関の主張を、平成19年7月12日付の非公開理由説明書、平成20年1月28日における事情聴取から要約すれば、概ね以下のとおりである。
申立人が請求する「収受簿及び受取記録」については、神戸市では、到達した文書は収受印を押し、文書収発簿に所要事項を記録し、処理している。このため、実施機関で保有する公文書は「文書収発簿」のみである。
なお、「文書収発簿」のうち個人の氏名については、特定の個人が識別される情報であって、公にしないことが正当であると認められるため、非公開とした。
申立人が請求する○部長からの「回答」については、河原地区土地区画整理事業は、神戸市が施行者として事業を行っており、申立人の質問もこの事業に関するものであり、事業施行者である神戸市として回答することが適切と考え、代表者の神戸市長名で回答した。このため、この文書が申立人の請求する公文書であると考えている。
なお、「回答」のうち個人の氏名等については、特定の個人が識別される情報であって、公にしないことが正当であると認められるため、非公開とした。
申立人が請求する「実施設計工事費内訳書・代価内訳表」の単価及び金額については、公共土木工事の設計積算業務用として定めたものであり、契約時の設計金額等の基になる情報であって、公にすることにより、市の財産上の利益を著しく損なうものと考えている。
以上のことから、本件請求については条例第10条第1号ア及び第5号イに該当するとして、本件決定を行ったものである。

5 審査会の判断
(1)本件申立てについて
本件の争点は、
①「文書収発簿」(以下「公文書ア」という。)の文書特定の適否
②「河原地区西工区土地区画整理事業に関する問い合わせに対する回答について(伺)」(以下「公文書イ」という。)の文書特定の適否
③「建築物等の移転又は除去による損失補償金の決定及び支出について(伺)」(以下「公文書ウ」という。)に添付された「実施設計書工事費内訳書・代価内訳表」の工種ごとの「単価」及び本件単価に数量を乗じた「金額」の非公開決定等である。以下検討する。

(2)公文書アの文書特定の適否等について
実施機関によると、神戸市では公文書管理規程(昭和35 年4月30 日訓令甲第8号)に基づき、到達した文書は収受印を押し、文書収発簿に所要事項を記録し処理しており、実施機関として保有する文書は「文書収発簿」のみであるとしている。
公文書管理規程によると、
「第8条 所管課に次に掲げる帳簿を備え置く。
  (1)文書収発簿(文書を収受し,及び発送する場合に記録する帳簿をいう。以下同じ。)
  (略)
 第12 条 公文書主任は,前条の規定により配布された文書のほか,庶務課長又は区公文書担当課長を経由しないで所管課に到達した文書を次に掲げるところにより処理する。
  (1)(略)
  (2)文書の余白,封筒その他の適当な箇所に収受印を押し,文書収発簿に所要事項を記録すること。(略)」
と規定されている。実施機関は、この規程に基づいて文書の収受を記録したものとして公文書アを作成していることが明らかであることから、公文書アは申立人の請求の趣旨にあった公文書であると認められる。
つぎに、公文書アにおいて所管課への差出元または所管課からの差出先である特定個人の氏名を非公開としているが、本件情報は特定個人が識別され若しくは識別されうる情報であり、公にしないことが正当であると認められることから、条例第10条第1号アに該当し、非公開とした決定は妥当である。
以上のとおり、実施機関が公文書アを特定し、一部非公開とした決定は妥当である。

(3)公文書イの文書特定の適否等について
実施機関によると、公文書イは、河原地区土地区画整理事業の地権者が都市計画総局区画整理部長あての親展文書によって区画整理に関する照会を行った際に、実施機関が当該地権者に対する回答文案を起案した決裁文書であるとしている。
実施機関によると、河原地区土地区画整理事業は、神戸市が事業施行者として事業を行っているが、申立人の照会内容は当該事業に関する内容であるため、組織として回答することが適切であると考え、代表者の神戸市長名で回答したとしている。
審査会が見分したところ、当該照会文書は特定された部長への親展文書として送付されており、差出人は当該部長名での回答を求めていたことが窺える。他方、照会に対する回答は、「神戸国際港都建設事業河原地区土地区画整理事業施行者神戸市 代表者 神戸市長矢田立郎」名によってなされており、実施機関の判断と責任において回答されていることが窺える。本件のように、当該土地区画整理事業に関する照会に対して職務上回答する場合、当該部長の上位にあたる者から回答することについて不合理ではなく、また、本件請求において広く対象文書として特定するという趣旨から、実施機関が公文書イを特定したことは適当である。したがって、公文書イは申立人の請求の趣旨にあった公文書であると認められる。
つぎに、公文書イにおいて照会元である特定個人の住所、氏名、印影を非公開としているが、本件情報は特定個人が識別され若しくは識別されうる情報であり、公にしないことが正当であると認められることから、条例第10 条第1号アに該当し、非公開とした決定は妥当である。
以上のとおり、実施機関が公文書イを特定し、一部非公開とした決定は妥当である。

(4)公文書ウに添付された「実施設計書工事費内訳書・代価内訳表」の工種ごとの「単価」及び本件単価に数量を乗じた「金額」の非公開決定等の該当性について
実施機関によると、公文書ウに添付された「実施設計書工事費内訳書・代価内訳表」の工種ごとの「単価」及び本件単価に数量を乗じた「金額」は、公共土木工事の設計積算業務用として定めたものであり、一般に入札段階での設計金額等の基になる情報であって、公にすることにより同種の土木工事の予定価格を類推することが可能になり、市の財産上の利益を著しく損なうことから非公開決定を行ったとしている。
審査会が見分したところ、本件公文書には泉通3丁目整地工事に係る設計金額等が記載されており、平成5年1月20 日時点の単価を適用していることが認められ、本件請求段階ではすでに14年経過していることが認められる。実施機関によると、本市が発注する土木工事の積算に用いる単価表は毎年度見直しが行われているが、この単価表は標準的なものであり、本件「単価」は土木工事ごとに構造や仕様、地理的条件等諸条件を勘案のうえ、個別に単価設定しているとしている。
そのような状況のもとで、実施機関がいうような同種の土木工事の予定価格を類推が可能か否かについてであるが、本件請求段階までの14 年間に、通常、物価変動や技術向上等の社会経済情勢も変化しているのであるから、本件「単価」を公にすることによって14 年以上経過した現在の同種の土木工事に使用される単価を正確に推測することには一定の限界があり、市の財産上の利益を著しく損なう可能性は低いものと考えられる。
したがって、平成5年当時に使用された単価表を基準にして算出された工種ごとの「単価」及び本件単価に数量を乗じた「金額」を条例第10 条第5号イに該当するとして非公開とした決定は妥当ではなく、公開すべきである。
つぎに、公文書ウにおいてその余の非公開とされた部分では、工作物に係る損失補償金の相手方の住所、氏名、印影、電話番号、口座情報、補償対象となる敷地の地番等を非公開としているが、本件情報はいずれも特定個人が識別され若しくは識別されうる情報であり、公にしないことが正当であると認められることから、条例第10条第1号アに該当し、非公開とした決定は妥当である。

(5)結論
以上のことから、冒頭の審査会の結論のとおり判断する。

(参 考)審査の経過
年 月 日審査会経 過
平成19年6月27日*諮問書を受理
平成19年7月12日*実施機関から非公開理由説明書を受理
平成20年1月28日第214回審査会*実施機関の職員から非公開理由等を聴取
*審議
平成20年3月17日第215回審査会*審議
平成20年5月15日*申立人から意見書を受理
平成20年5月19日第217回審査会*審議
平成20年6月30日第218回審査会*審議


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