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長野県情報公開審査会 審査案件第46号 県道上松御岳線改良工事のために長野県に買い上げられた…

2006年06月12日 | 事務・事業に関する情報
(審査案件第46号)
答 申


第1 審査会の結論
県道上松御岳線改良工事のため長野県に買い上げられた木曽郡上松町大字上松○○番○に係る補償積算内容に係る公文書のうち、別紙「公開すべき部分」欄記載の部分は公開すべきであるが、本件実施機関のその余の判断は妥当である。

第2 異議申立ての経過
(略)


第3 異議申立人の主張の要旨
(略)


第4 実施機関の説明の要旨
(略)


第5 審査会の判断
1 基本的な考え方
本件条例は、その第1条に定められているとおり、県民の知る権利を尊重し、公文書の公開請求権を保障するとともに、情報公開の総合的な推進を図ることで県の諸活動を県民に説明する責務を全うし、県民参加による公正で開かれた県政の一層の推進をすることを目的に制定されたものである。
この目的を実現するために、実施機関が保有する公文書は原則公開とされており、本件条例の運用に当たっては、この理念が十分に尊重されなければならない。しかし、一方で原則公開の理念を持つ本件条例においてもなお、例外的に他の公益等との調整を図るため非公開とせざるを得ない情報があることから、第7条で非公開情報が定められている。個々の請求に対しては、条例の原則公開の理念を尊重しつつ個別に判断する必要がある。

2 本件文書
本件文書は、一般県道上松御岳線に係わる平成8年度県単道路改良工事(以下「本件工事」という。)のために長野県が木曽郡上松町大字上松○○番○の土地(以下「本件土地」という。)を買収したことに関する契約書、支出に関する文書、補償金額の算定に関する文書、買収価格の算定に関する文書及び用地交渉の経過を示す文書など、別紙に掲げる文書である。
本件実施機関は、これらについて、本件条例第7条第2号及び第6号に該当することを理由に一部非公開とする決定を行ったものである。

3 本件処分で適用された非公開条項について
(1)本件条例第7条第2号
本件条例第7条第2号は、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公開することにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」を非公開と規定している。
ただし、法令等の規定により又は慣行として公にされ又は公にすることが予定されている情報(ただし書ア)、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公開することが必要であると認められる情報(同イ)、公務員の職・氏名・職務遂行の内容で個人の権利利益を不当に害さないもの(同ウ)は公開するものとされている。

(2)本件条例第7条第6号
本件条例第7条第6号は、「県又は国若しくは他の地方公共団体が行う事務又は事業に関する情報であって、公開することにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるもの」を非公開と規定している。また、同号アからオには典型的な事務が例示され、それぞれ公開することによる支障の要件を定めている。
本号の適用に際しては、公開することにより生ずる支障のみでなく将来同種の事務又は事業の適正な遂行に支障が生ずるおそれも勘案すること、公開することによる支障は名目的なものでは足りず実質的なものでなければならないこと、公開することによる支障のおそれは単なる確率的な可能性では足りず、法的保護に値する程度の蓋然性がなければならないことが、実施機関には求められているところである。
以上を踏まえて、本件処分について検討する。

4 土地の権利者の氏名等
(1)土地所有者の住所及び氏名
本件処分においては、別紙文書番号1~5、8、9、14、18、20~33に記載された本件土地の所有者(文書によりそれぞれ契約相手方、補償金請求者、補償金支払相手方、交渉相手方、登記名義人、登記義務者として記載されているが、以下併せて「本件土地所有者」という。)の住所及び氏名、本件土地の登記名義人で本件土地所有者以外の者の氏名、本件土地以外の買収地の所有者住所及び氏名が非公開とされている。
これらはいずれも、本件条例第7条第2号にいう個人が識別される情報に該当することから、例外的な公開情報を規定した同号ただし書の該当性について検討する。
本件実施機関は、土地登記簿について、相続登記が未了であるなどの理由で、真実の権利関係が反映されていない場合があり、登記名義人が真実の土地所有者と一致しない場合もあるから、土地所有者に関する情報は、同号ただし書アには該当しないと主張している。また、実際に当審査会で見分したところ、本件文書に記載された土地の中には、本件実施機関が調査した土地所有者と登記名義人とが一致しない土地があることが認められた。
本件公開請求のように、県等が行う公共事業のための土地の取得については、公共事業の実施場所は一般に容易に知り得る情報であること、土地が取得された時点で元の土地所有者から県に登記名義人が変更されることから、本件条例に基づく公開請求によるまでもなく、当該土地の土地登記簿を閲覧することによって(土地登記簿記載の情報は、何人も入手可能である(不動産登記法第119条以下))、当該土地所有者の住所及び氏名を知ることができると考えられる。ところが、不動産登記法は権利に関する登記申請を義務付けておらず、職権登記も例外として位置付けられているに過ぎないため、現実には、実際の土地所有者と登記名義人が異なる事態が生じることもある。
しかし、土地の所在、地番、地目及び地積を表示する部分については登記申請義務等が規定(不動産登記法第36条以下)され、所有権移転等の登記を怠る者には不利益が生ずることがあることとされている(民法第177条)こと、土地所有者は特定の土地について権利を有するだけでなく様々な法的責任を負うべき立場にあること(民法第209条以下)などからすれば、法は、すべての土地について登記簿が作成され、実際の土地所有者が公示されることを予定しているものと考えることができる。これら規定を勘案すると、法制度上、土地所有者の氏名等は秘匿されるべき情報というよりは、公示されてしかるべき性質の情報と位置付けられているものと解すべきである。
したがって、土地所有者の住所及び氏名については、それが現実に登記され、公示されている場合はもちろん、権利に関する登記申請が行われず登記されていない場合であっても、本件条例第7条第2号ただし書アにいう「公にすることが予定されている情報」というべきであるから、本件実施機関の主張は採用することができない。

(2)土地の所有者以外の権利者の氏名
本件処分においては、別紙文書番号21に記載された土地2筆に関する借地権の存在とその権利者の姓を記載した部分が非公開とされている。当審査会で見分したところ、当該文書の他の記載と照合すると、本件条例第7条第2号本文にいう特定の個人が識別される情報と認められることから、例外的な公開情報を規定した同号ただし書の該当性について検討する。
この文書は、用地買収のために本件実施機関が作成した実測平面図であるが、借地権が設定された2筆を含む土地3筆にかかって1棟の建物(以下「本件建物」という。)が所在する状況が、土地境界線と建物の輪郭線として描かれており、その図面は本件処分で既に公開されている。
また、本件実施機関を通じて確認したところ、本件建物は、上記3筆上に所在するものとして建物登記簿に登記されており、所有権の保存登記もされている。これと土地登記簿を照らし合わせると、本件建物の所有者は、3筆の敷地のうちの1筆を所有していることが分かるので、残る2筆についても、同人が何らかの権原を有するであろうことは、事実上容易に推測しうるものと認められる。
加えて、借地権については、借地借家法第10条が、登記されている建物を所有する借地権者は、借地権自体の登記がなくても第三者に対抗できると規定している。
同条は、建物の所有を目的とする土地賃借権等について、借地権設定者との共同申請が必要なため利用しにくい土地登記簿への賃借権等の登記による公示(民法第605条)に代えて、借地権者の意思のみによって具備しうる建物登記によって、第三者への対抗要件と認める趣旨の規定であるから、登記された本件建物によって本件借地権の存在及びその権利者は一般に公示されていたものと評価することができる。
これらのことからすると、本件借地権の存在及び権利者の姓は、本件条例第7条第2号ただし書アに規定する「法令等の規定により公にされている情報」に該当するから、公開すべきである。

5 本件土地所有者の銀行口座、実印
(略)


6 売買事例地及び標準地の地番及び所有者氏名、標準地の評価格及び取引事例地の売買価格、価格形成要因
(1)土地評価格の算定方法
本件実施機関が公共事業用地を取得する際の土地評価格は、「長野県の公共用地の取得に伴う損失補償基準」等により算定することとなっている。
これによれば、まず、買収しようとする土地の存する地域の特性に着目して、同一の状況にある近隣地域を設定し、その中で標準的な画地(以下「標準地」)を選定する。次に、近隣地域における土地売買の取引事例を調査し、標準地と取引事例地の価格形成要因を比較・数値化して、取引事例地の売買価格を補正する。この結果求められた標準地価格と買収しようとする土地の価格形成要因を比較・数値化して、標準地価格を補正し、最終的に買収地の土地価格が算定される。
また、都市計画区域内の土地を取得する場合においては地価公示法第6条の規定により公示された標準地の価格を基準とすることとしている。

(2)売買事例地の地番及び売主氏名、標準地の地番及び所有者の氏名
別紙文書番号10~11、14、16~18には、売買事例地の地番及び売主氏名並びに標準地の地番及び所有者の氏名が記載されている。
本件実施機関は、これら情報は、標準地所有者及び売買事例地売主個人に関する情報であり、本件条例第7条第2号に該当するとともに、これを公開すると、私的な土地取引に関する情報を提供したり、聞き取りに協力する者が得られなくなり、今後取引事例の収集に支障を来すおそれがあるから同条第6号にも該当すると主張する。
一般に、本件土地のような公共事業用地については、事業計画の策定や工事の実施等を通じて、請求者が土地の所在及び地番を知ることができる場合が多く、公開請求によらずとも、土地登記簿を調査することにより、土地所有者の住所及び氏名を知ることができるものといえるから、前記4(1)で判断したとおり、これら情報は「公にすることが予定されている情報」として公開されるべきである。
これに対し、標準地や売買事例地については、実施機関がどの土地を標準地等に選定したかを公にする制度はなく、請求者はこれら土地を特定して土地登記簿を調査することができないものと考えられるから、これら土地の所有者の住所及び氏名については、「法令等又は慣行により公にされ又は公にすることが予定されているもの」と認めることができない。
したがって、標準地及び売買事例地の地番(地番が明らかになると土地登記簿から特定の個人を識別できることとなるから、地番だけでも特定の個人が識別される情報といえる。)、所有者及び売主の氏名は、特定の個人が識別される情報であり、本件条例第7条第2号ただし書のいずれにも該当しないことから、これらを非公開とした本件実施機関の判断は妥当である。
なお、本件条例第7条第2号により非公開とすべき情報に該当することが明らかであるため、同条第6号の該当性については判断するまでもない。

(3)売買事例地と標準地の価格形成要因
土地の価格形成要因を比較するために用いる項目、格差認定基準、格差の計数化に用いる各項目間・格差の程度別の重み付け等については、公刊されている地価調査研究会編「土地価格比準表」によっている。非公開とされたのは、別紙文書番号11~13、15に記載された売買事例地の取引価格から標準地の価格を比準するための売買事例地の街路条件、交通接近条件、環境条件、画地条件及び行政的条件と、標準化補正値、格差認定基準であり、本件実施機関は、これらの事項がいずれも売主又は所有者個人が識別される情報であると主張する。
確かに、これらの情報は、それ自体に個人の氏名等を含むものではないが、いずれも特定の土地の客観的性状に関するものであるから、公開することにより、本件条例第7条第2号にいう、他の情報と照合することで当該土地が特定され、その結果、土地登記簿等と照らし合わせて所有者等特定の個人を識別できる情報となるか否か、または特定の個人を識別することができないが、公開することにより、なお個人の権利利益を侵害するおそれがあるか否かについて判断する。

ア 接面街路幅員、最寄駅、商店街、小中学校、官公署及び公共施設からの距離、
間口並びに奥行を示す数値
これら数値は、それぞれ単独では当該土地を特定できる情報とはいえないが、複数の数値を併せ用いて条件を絞り込むと、具体的地番の特定には及ばないとしても、当該土地のおおよその所在及び形状等を限定することができる情報ということができる。
ところで、標準地は、本件実施機関内部で、本件土地等の価格算定の過程で設定されたものに過ぎないが、売買事例地は、現実に売買が行われた土地であり、売買の事実は、土地登記簿等に外形的に現れるものである。そうすると、売買事例地について各種公的施設からの距離等の数値を公開した場合、土地登記簿等、売買の外形的事実と照合することによって、具体的な地番、ひいては売買当事者の特定が可能となるから、これら事項は、本件条例第7条第2号に該当する非公開情報というべきである。

イ 売買事例地の売買単価、上記ア記載の数値を除いた個別的要因の調査結果が記載された部分及びその結果を標準地と比較して求められた係数が記載された部分
これらの事項は、他の情報と照合したとしても特定の個人を識別することができる情報とは認められず、また特定個人は識別できないがなお個人の権利利益を侵害するおそれのある情報とも認められないから、公開すべきである。

(4)標準地の評価格、取引事例地の売買価格
別紙文書番号10~12、14、16~18に記載された、標準地の評価格、取引事例地の売買価格について、本件実施機関は、特定個人が識別できる情報と主張している。
しかし、前述のとおり、当審査会は標準地及び売買事例地の地番、所有者及び売主の氏名、さらに売買事例地等を特定し得る情報は非公開と判断しており、これらを除けば標準地の評価格、取引事例地の売買価格を公開しても特定個人を識別することができる情報とは言えず、また個人は識別できないがなお個人の権利利益を侵害する情報とも認められないから、公開すべきである。

7 本件土地の個別要因の調査結果が記載された部分と本件土地価格
別紙文書番号14、18に記載された本件土地の個別要因の調査結果、また別紙文書番号9、14、18に記載された本件土地の単価、別紙文書番号1、3~6、8、9、14、18に記載された本件土地の価格について、本件実施機関は、本件条例第7条第2号に該当するとしている。
本件土地の個別要因の調査結果については、当該土地の所在地はすでに公にされていることから、当該土地の価格に影響する諸要因、例えば、駅や商店街への接近の程度、周辺の環境、前面道路の状況、公法上の規制、当該土地の形状、地積等については、一般に周知されている事項か、容易に知り得る事項である。
また、前述の通り、本件実施機関が公共事業用地を取得する場合は、「長野県の公共用地の取得に伴う損失補償基準」により、正常な取引価格をもって補償するものとされている。この正常な取引価格は、都市計画区域内の土地を取得する場合においては地価公示法第6条の規定により公示された標準地の価格を基準とすることとしており、それ以外については近傍類地の取引価格を基準とし、これらの土地及び取得する土地について、土地価格形成上の諸要素を総合的に比較考量して算定するものとされている。これらのことから、売買の当事者間の自由な交渉の結果が買収価格に反映することは比較的少ないものというべきである。したがって、これら価格要因に基づいて近傍類地の取引価格等を考慮して算定された本件土地の単価は、当該土地の客観的性状から推認し得る一定の範囲内の相当な単価であって、一般人であればおおよその見当をつけることができるものということができる。
そうすると、買収地の価格要因及び単価は、性質上不特定の者に知られ得る状態に
あるものといえるから、本件条例第7条第2号ただし書アに規定する法令上又は慣行として公にされることが予定されている公開情報に該当するものというべきである。
また、本件土地の面積は既に公開されているから、単価を乗じた価格も同様に公開情報というべきである。

8 物件の補償金額とその算定書、契約総額等
(略)


9 用地交渉等の内容等
別紙文書番号23ないし33「計画・設計・事業説明・現説・用地・工法協議及び許認可関係の問題点・打合せ議事録」及び「口頭電話記録用紙」には、本件工事用地の買収のために行われた本件土地所有者との交渉経緯が記載されている。本件実施機関は、本件条例第7条第2号及び同6号に該当するとしていることから、非公開とされた部分について、以下検討する。

(1)「件名」欄に記載された事項
本件処分に記載された公開しない理由及び当審査会で対象文書を見分したところによれば、「件名」欄に記載された事項が非公開とされたのは、本件土地所有者の氏名が含まれているためと認められる。
しかし、土地所有者氏名は、すでに判断したとおり、公開すべきものと認められるから、「件名」欄についてもこれを公開すべきである。

(2)「場所」欄に記載された事項
本件処分に記載された公開しない理由及び当審査会で対象文書を見分したところによれば、「場所」欄に記載された事項は、本件土地所有者の氏名、同人の勤務先事業所名及び同人の自宅の電話番号であると認められ、これらは本件条例第7条第2号にいう特定個人が識別される情報である。
このうち、土地所有者の氏名は、すでに判断したとおり公開すべきものと認められる。
しかし、個人の勤務先を公にするという法令又は慣行は認められない。また、個人住宅の電話番号は、必ずしも電話帳等に登載されるものではなく、他に公にするという慣行等があるとも認められないところである。
したがって、同人の勤務先事業所名及び自宅の電話番号は、法令等又は慣行により公にされ、又は公にされることが予定されている情報など例外として公開すべき情報のいずれにも当たらないから、本件条例第7条第2号に該当する非公開情報というべきである。

(3)「相手方」又は「出席者」欄に記載された事項
本件処分に記載された公開しない理由及び当審査会で対象文書を見分したところによれば、これらに記載された事項は、本件土地所有者の氏名及び同席した関係者、同人の勤務先事業所名及びその電話番号並びに交渉に同席した関西電力従業員の氏名であると認められる。
このうち、すでに判断したとおり、土地所有者の氏名は公開すべきものであり、勤務先事業所名は非公開情報と認められる。
また、勤務先事業所の電話番号は、これを公開すると勤務先事業所が特定されるおそれがあるから、公開すべきものではないというべきである。
交渉に同席した関係者及び関西電力従業員の氏名は、特定の個人が識別できる情報であり、例外として公開できるいずれの場合にも当たらない。
したがって、同席した関係者に関する情報、勤務先事業所名及びその電話番号並びに関西電力従業員の氏名は、本件条例第7条第2号に該当する非公開情報と認められる。

(4)議事録の「説明の主旨」及び「打合せ結果」並びに口頭電話記録用紙の「内容」及び「処理伺い」の各欄に記載された事項
本件処分に記載された公開しない理由及び当審査会で対象文書を見分したところによれば、これら部分には、本件土地所有者との用地交渉の内容及び対処方針等が記載されていることが認められる。
一般的に用地交渉は、起業者が調査した買収地及び補償対象物件の状況について、土地所有者等に確認を求めた上で、その調査結果に基づいて算定した土地代金及び補償額について説明し、また、代替地のあっせん等、買収後の土地所有者等の生活再建等についても協議を行う中で、土地売買契約等の合意を求めていくという手順で行われる。実際に、これら非公開部分には、本件土地所有者の生活等の詳細を推知させる多数の情報が含まれ、これを公開すると、交渉相手方との信頼関係を損ない、同人の生活再建を図るため及び補償価格を適正に決定するための有益な情報が得にくくなるなど、調整、協議が困難となり、本件実施機関が行う将来の用地買収事務の適正な遂行に著しい支障を生ずるおそれがあると認められるから、本件条例第7条第6号に該当するとして非公開とした本件実施機関の判断に誤りはない。

(5)添付の補償額明細書に記載された土地の単価、金額、立木補償料及びその合計金額
議事録に添付された補償額明細書は、前記(4)に記載したような手順で進められる用地交渉の過程の中で、本件土地所有者に対する説明、確認等に用いられた暫定的な資料と認められ、用地交渉の内容の一部というべきであるから、前記(4)と同様に本件条例第7条第6号に該当する非公開情報であると認められる。

(6)添付図面に記載された個人の氏名等
本件処分に記載された公開しない理由及び当審査会で対象文書を見分したところによれば、記載された個人の氏名等は、本件土地所有者及び本件土地所有者以外の補償契約当事者に関する情報であると認められる。
このうち、土地所有者の氏名は、前述のとおり公開すべきものと判断される。
本件土地所有者以外の補償契約当事者は、被買収地上に建物を所有し居住していた者であるところ、当該建物は不動産登記簿に登記され、その所有者として同人が登記されていることが認められた。この点からすると、被買収地に建物を所有する者としての同人の氏名は、法令により公にされている情報ということができるから、本件条例第7条第2号ただし書アに該当する公開情報と判断する。

(7)添付の図面に記載された雑種地の買収単価
この買収単価は、本件契約以前に本件実施機関が買収した土地の単価である。
本件実施機関は、この買収単価は売主個人に関する情報であって、本件条例第7条第2号に該当する非公開情報と主張するが、当審査会は、すでに判断したとおり本件実施機関が買収した土地の単価は公開すべきものと判断する。

10 結論
以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 審査経過
(略)


別紙
(略)


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