諮問庁 : 独立行政法人大学入試センター
諮問日 : 平成18年 6月19日 (平成18年(独情)諮問第48号)
答申日 : 平成19年 2月21日 (平成18年度(独情)答申第46号)
事件名 : 個別音源機器類に関する基本仕様等審査結果等の一部開示決定に関する件
答 申 書
第1 審査会の結論
個別音源機器類(ICプレーヤー,記憶媒体等。以下「ICプレーヤー等」という。)の機種選定に関する法人文書(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定について,諮問庁がなお不開示とすべきとしている部分については,別紙に掲げる)採択されたICプレーヤー等を製造したメーカー(以下「採択されたメーカー」という。)の名称に係る部分及び)採択されたメーカーが使用する記憶媒体の名称のうち,採択されたメーカーの名称に係る部分が特定できるため,なお不開示が妥当としている部分を開示すべきである。
第2 異議申立人の主張の要旨
(略)
第3 諮問庁の説明の要旨
(略)
第4 調査審議の経過
当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
① 平成18年4月20日 諮問の受理
② 同日 諮問庁から理由説明書を収受
③ 同年5月19日 異議申立人から意見書を収受
④ 同月22日 異議申立人から意見書を収受
⑤ 同年6月19日 本件対象文書の見分及び審議
⑥ 同月26日 審議
⑦ 同年7月10日 審議
第5 審査会の判断の理由
1 本件対象文書,原処分等について
(1) 本件対象文書及び原処分
本件対象文書は,大学入試センターが保有するセンター試験における英語リスニングテストに使用するICプレーヤー等の機種選定に関する文書1から文書23までの文書である。
原処分では,本件対象文書について,文書5,文書7ないし文書10,文書12ないし文書19,文書22及び文書23の法5条2号ロ,3号及び4号ハに該当する部分を除いて開示する旨の一部開示決定を行っている。
当審査会において,本件対象文書のうち,不開示部分を含む文書を見分したところ,これら文書の内容並びに不開示部分及びその根拠条項は,次のとおりである。
ア 文書5,文書7ないし文書10
文書5,文書7ないし文書10は,個別音源機器類仕様策定委員会等において,各メーカーから提出された提案内容が,リスニングテストに使用するICプレーヤー等の基本仕様等に適合するか否かについて検討・審査を行うための検討・審査事項が記載されたチェックリストであり,当該検討・審査についての内容及び結果が記載された文書である。
これらの文書に記載された提案した又は採択されたメーカーの名称及びICプレーヤー等の製造に係る記述部分が,法5条4号ハの不開示情報に該当するとして,不開示とされている。
イ 文書12ないし文書15
文書12は,個別音源機器類仕様策定委員会が,各メーカーから提出された提案内容のリスニングテストに使用するICプレーヤー等の基本仕様等への適合性について,審査した結果の最終段階の内容が記載された文書であり,文書13及び文書14は,個別音源機器類仕様策定委員会において,製造責任,製品検査,輸送,記憶媒体等の各項目について,各メーカーの提案内容を比較検討した結果等を記載したものを部内報告用として取りまとめものの成案と検討中のものであり,また,文書15は,リスニングテストに使用するICプレーヤー等の基本仕様等の策定の検討経緯の概要が記載された文書である。
これらの文書に記載された提案した又は採択されたメーカーの名称,これらメーカーの使用する記憶媒体の名称,ICプレーヤー等の製造に係る記述部分及びICプレーヤー等の輸送方法が,法5条4号ハの不開示情報に該当するとして,不開示とされている。
また,文書13に記載された技術審査職員の氏名,所属大学名及び学内所属が,同条3号及び4号ハの不開示情報に該当するとして,不開示とされている。
ウ 文書16及び文書17
文書16及び文書17は,複数のメーカーから提出を求めたICプレーヤー等の製造に関する提案書であり,提案したメーカーの名称とともに,これらメーカーが提案した)ICプレーヤー,記憶媒体等の仕様・特性,)製造・保管・管理・製品の検査体制及び警備体制,)輸送体制等の内容が具体的に記載された文書である。
文書16の全部及び文書17の文書タイトルを除く部分に記載された提案したメーカーの名称及び提案内容が,法5条2ロの不開示情報に該当するとして,不開示とされている。
エ 文書18及び文書19
文書18は,個別音源機器類仕様策定委員会において,各メーカーの提案内容を比較検討するための資料として使用するために作成された,価格,記録メディア,製造会社等の項目別に,各メーカーの提案内容の概要が表形式で記載された文書であり,文書19は,個別音源機器類仕様策定委員会において,各メーカーに対して提案を求める内容や方法等について,検討するために作成された,メーカーの名称,提案方法,提案書の記載方法等が記載された文書である。
これら文書に記載された提案した又は採択されたメーカーの名称,これらメーカーの使用する記憶媒体の名称及びICプレーヤー等の製造に係る記述部分が,法5条4号ハの不開示情報に該当するとして,不開示とされている。
オ 文書22及び文書23
文書22は,ICプレーヤー等を調達するための仕様策定等に関して技術的な意見を述べる技術審査職員として特定の個人を委嘱するに際し,当該個人の所属大学に対して,特定の個人を技術審査職員に委嘱することに同意を依頼する文書の決裁伺い文書及び発出した同意依頼文書の写しであり,文書23は,特定の個人本人に対して,技術審査職員への委嘱を依頼する文書の決裁伺い文書及び発出した承諾依頼文書の写しである。
これら文書に記載された技術審査職員の氏名,所属大学名及び学内所属が,法5条3号及び4号ハの不開示情報に該当するとして,不開示とされている。
(2) 諮問庁の判断等
諮問庁は,理由説明書及び補充理由説明書において,原処分において不開示とした部分のうち,)文書13,文書22及び文書23に記載された技術審査職員の所属大学名並びに) 文書13,文書14及び文書18に記載している採択されたメーカーの使用する記憶媒体の名称のうち,記憶媒体の名称を含む文書の記述内容及び採択されたメーカーの名称と一体的に記述された記憶媒体の名称の字句数から採択されたメーカーの名称に係る部分が特定できるとする部分以外の部分については,開示することとするが,その余の部分については,)文書16及び文書17に記載された提案したメーカーの名称及び提案内容が,法5条2号ロに加えて同号イの不開示情報にも該当し,)文書13,文書22及び文書23に記載された技術審査職員の氏名及び学内所属が,同条3号及び4号ハに加えて同条1号の不開示情報に該当し,) 文書5,文書7ないし文書10,文書12ないし文書15,文書18及び文書19に記載された提案したメーカーの名称に係る部分及び提案内容,提案したメーカーの使用する記憶媒体の名称,提案したメーカーのICプレーヤー等の製造に係る記述部分並びにICプレーヤー等の輸送方法は,同条4号ハではなく,同条2号イ及びロの不開示情報に該当し,)文書5,文書7,文書8,文書10,文書12ないし文書15及び文書18に記載された当該メーカーの名称に係る部分,採択されたメーカーの使用する記憶媒体の名称のうち,記憶媒体の名称を含む文書の記述内容及び採択されたメーカーの名称と一体的に記述された記憶媒体の名称の字句数から採択されたメーカーの名称に係る部分が特定できるとする部分は,同条4号ハに加えて,同号ニ及びトの不開示情報にも該当するとして,これらの部分の不開示とした理由を追加又は変更し,なお不開示が妥当であるとしている。
そこで,諮問庁がなお不開示とすべきとしている部分について,以下,不開示情報該当性を検討する。
2 不開示情報該当性について
(1) ICプレーヤー等のメーカーの名称
ア 提案したメーカー(採択されたメーカーを除く。以下同じ。)の名称に係る部分
諮問庁は,提案したメーカーの名称に係る部分については,)ICプレーヤー等の製造の受注を目的として,大学入試センターに対して提案書を提出したこと自体が,提案したメーカーにとっては経営戦略に係る情報であり,提案したメーカーの名称に係る部分を開示した場合,このような情報が公になり,当該メーカーの競争上の地位を害するおそれがあること及び)メーカーの名称を公表しないことを条件に,提案書を提出させていることから,法5条2号イ及びロの不開示情報に該当すると説明する。
提案したメーカーの名称に係る部分については,提案したメーカーにとっては,ICプレーヤー等の製造の受注を目的として,大学入試センターに対して提案したものの,受注できなかったという事実は,これを公にした場合,一般的には,メーカーとしての評価を低下させるなど,当該メーカーの事業活動や営業活動に支障を生じさせるおそれがあることから,当該メーカーの正当な利益を害するおそれがあり,法5条2号イの不開示情報に該当すると認められるので,同条2号ロ該当性を判断するまでもなく,不開示が妥当である。
イ 採択されたメーカーの名称に係る部分
(ア) 諮問庁は,採択されたメーカーの名称に係る部分については、これを開示した場合,)当該メーカーのICプレーヤー等の製造場所への侵入その他の手段による不当な行為を容易にし,試験開始以前における試験問題の漏えい等があることから,公正に試験を実施しようとする大学入試センターやセンター試験結果を利用する多数の大学の入試等の実施業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるため,当該情報は,法5条4号ハの不開示情報に該当し,また,)採択されたメーカーとの間で定めた,その名称を公表しないこととした契約に基づき製造受注したという条件が崩れ,採択されたメーカーの契約違反に基づく契約破棄等によってICプレーヤー等の調達ができなくなることによりリスニングテストが中止となることや採択したメーカーからの契約違反による損害賠償等法的措置を含む対応に迫られることにつながるため,採択されたメーカーの名称に係る部分は,法5条4号ニ及びトの不開示情報にも該当すると説明する。
(イ) しかし,次の理由から,採択されたメーカーの名称は,既に明らかといえる情報である。
① 平成18年度センター試験のリスニングテストで採用されたICプレーヤー等のうち,記憶媒体については,当該記憶媒体に,記憶媒体の名称が印字され,また,ICプレーヤーについては,当該ICプレーヤーの本体に,当該記憶媒体の名称を図案化したロゴマークが標記されている。
諮問庁の説明によれば,)ICプレーヤー等の高等学校に対する事前配布や予備校,塾等の団体に対する貸出をし,)受験生にはリスニングテスト終了後,当該記憶媒体を持ち帰ることを認め,実際に,受験生の約8割に当たる約39万人が持ち帰っており,また,)ICプレーヤーの映像を大学入試センターのホーム・ページに掲載し,入学志願者等に配布する「受験案内」(17年度は94万部作成)にその写真を掲載しているとのことである。
このため,採択されたメーカーの使用する記憶媒体の名称は,受験関係者等にとっては,周知の事実となっていると言えるものである。
このことから,当該記憶媒体を使用するICプレーヤーを製造するメーカーは,当該記憶媒体を開発したメーカー及び当該メーカーと製造についてのライセンス契約を締結したメーカーに限定される。
② 一方,採択され得るメーカーは,センター試験に用いられるICプレーヤー等を製造するメーカーであることから,)実際にリスニングテストに用いられるもののほか,試行テスト等にも用いられるものも含めて約50万台を生産する能力を有するという条件に加え,)センター試験の特性から,基本的に1台も不具合があってはならず,このような1台も不具合を出さないような製造の技術・能力,体制等を備えるという条件,更には,)記憶媒体には,試験問題が記憶されており,これが内外から盗難等により漏えい等しないよう,いわゆる秘密保持のための情報漏えい対策等の体制を備えているという条件をも満たされなければならない。
このような条件を満たすメーカーは,相当規模の開発・生産能力,品質管理体制等を有する,国内のいわゆる大手メーカーに限られる。
これに加えて,現在,ICプレーヤーや携帯情報端末等で用いられるカード型の記憶媒体は,数種類,すなわち,採択されたメーカーが使用するものと,その他の種類のものがあるところ,採択されたメーカーが使用する記憶媒体を製造するメーカーで,国内のいわゆる大手メーカーは,それを開発したメーカー1社のみであるが,他の種類の記憶媒体を製造するメーカーで,国内のいわゆる大手メーカーは複数社存在する。また,記憶媒体を使用せず,ICプレーヤーの本体に内蔵したICチップに情報を書き込む方式の機器を製造するメーカーで大手メーカーも存在する。
このように採択され得る国内の大手メーカーが複数社存在する中で,一定のメーカーに提案させて,当該メーカーの提案内容を比較検討の上,採択されたメーカーが決定したことを考慮すると,採択された記憶媒体を使用するメーカーは,大手である採択された記憶媒体を開発したメーカー以外に考えられないところである。
③ さらに,大学入試センターが提案しようとする各メーカーに対し提示し,かつ,本件開示請求により開示された受注メーカーの要件,ICプレーヤー等の基本仕様等をみると,)ICプレーヤー又はICレコーダーを製造した実績のある日本国内のメーカーであること,)音声問題の記憶媒体への書き込みは,受注した会社又は受注した会社の日本国内にある子会社で行うこと,また,この書き込みは記憶媒体を製造する途中で行うこととされている。
このような条件を満たすメーカーは,当該記憶媒体を開発した1つのメーカーのみである。
以上のことから,約50万人の受験生や全国の高等学校,予備校,大学等の多数の受験関係者等にとっては,既に知っている,あるいは採択されたメーカーが運営するインターネットのサイトや専門誌等で調べることにより容易に知ることができるものと認められる。
このため,採択されたメーカーの名称は,明らかとなっていると言える情報である。
(ウ) そこで,諮問庁が説明する不開示情報該当性について検討すると,次のとおりである。
諮問庁は,採択されたメーカーの名称に係る不開示理由について,当該メーカーの名称を開示すると,当該メーカーのICプレーヤー等の製造場所への侵入その他の手段による不当な行為を容易にし,大学入試センター等の入試の実施業務に支障が生ずるおそれがあり,法5条4号ハに該当すると説明するが,採択されたメーカーについては,上記のとおり,当該メーカーの名称が明らか,又は,少なくとも,当該メーカーが運営するインターネットのサイトや専門誌等を調べれば明らかであることから,当該メーカーから音声問題が記録された記憶媒体等を強奪等することにより,センター試験で不正等を働こうとする者は,当該メーカーの名称を調べてでも特定し,これに基づき,当該記憶媒体等の強奪等を図るものと考えられ,本件のような開示請求に基づき,開示されることによって,当該強奪等を特段容易にするものではないと考えられる。
このため,採択されたメーカーの名称は,法5条4号ハには該当しないものと認められる。
また,諮問庁は,採択されたメーカーの名称を開示すると,当該メーカーの名称を公表しないこととした契約に違反することとなり,契約違反に基づく,契約破棄等が行われたり,損害賠償等法的措置を求められるおそれがあり,法5条4号ニ及びトに該当する旨説明するが,上記(イ)のとおり,当該メーカーの名称は,採択された記憶媒体に記載された記憶媒体の名称から,明らかになるものであると認められること,そして,採択された記憶媒体の名称は,諮問庁の説明によれば,当該メーカー自身が記憶媒体に明記することを求めたものであるとのことから,当該メーカーは,契約違反を主張できないものと考えられるところである。
このため,採択されたメーカーの名称は,法5条4号ニ及びトに該当しないものと認められる。
以上のことから,採択されたメーカーに係る情報すなわち,別紙に掲げる採択されたメーカーの名称に係る部分は,法5条4号ハ,ニ及びトに規定する不開示情報に該当するとは認められず,開示すべきである。
なお,諮問庁は,口頭説明において,平成18年度センター試験のリスニングテストに使用された記憶媒体を使用したICプレーヤーを製造する日本国内メーカーについて,採択された特定のメーカー以外の複数のメーカーの具体的名称を明らかにして,これらメーカーが存在することから,採択されたメーカーの名称は,容易に,特定できないと主張する。
しかし,諮問庁が提示したメーカーは,当該メーカー又は当該メーカーの日本国内にある子会社において平成18年度センター試験のリスニングテストに使用された記憶媒体を製造していないことなど,受注メーカーとしての要件を欠くことから,諮問庁の主張は当たらない。
(2) 記憶媒体の名称
ア 提案したメーカーの使用する記憶媒体の名称
諮問庁は,提案したメーカーの使用する記憶媒体の名称は,)ICプレーヤーにどのような種類の記憶媒体を使用するかという情報は,提案したメーカーにとっては,重要な情報であり,当該記憶媒体の名称を開示することは,当該メーカーの競争上の地位を害するおそれがあること及び)記憶媒体の名称を公表しないことを条件に,提案書を提出させていることから,法5条2号イ及びロの不開示情報に該当すると説明する。
提案したメーカーの使用する記憶媒体の名称については,当該メーカーがどのような種類の記憶媒体を使用しているかという当該メーカーにとって重要な情報であり,公にすることにより,当該メーカーの利益を害するおそれを否定できず,法5条2号イの不開示情報に該当すると認められるので,同条2号ロ該当性を判断するまでもなく,不開示が妥当である。
イ 採択されたメーカーの使用する記憶媒体の名称
諮問庁は,採択されたメーカーの使用する記憶媒体の名称については,基本的に開示するが,記憶媒体の名称を含む文書の記述内容及び採択されたメーカーの名称と一体的に記述された記憶媒体の名称の字句数から,採択されたメーカーの名称に係る部分が特定できるとする部分は,不開示を維持するとしている。
しかし,上記(1)のイにおいて記述するとおり,採択されたメーカーの名称に係る部分が不開示情報に該当しないと認められることから,記憶媒体の名称を含む文書の記述内容及び採択されたメーカーの名称と一体的に記述された記憶媒体の名称の字句数から採択されたメーカーの名称に係る部分が特定できるとする部分,すなわち,別紙の2に掲げる部分については,不開示とする理由はなく,開示すべきである。
(3) ICプレーヤー等の製造に係る記述部分及びICプレーヤー等の輸送方法
ア 提案したメーカーのICプレーヤー等の製造に係る記述部分及びICプレーヤー等の輸送方法
諮問庁は,提案したメーカーのICプレーヤー等の製造に係る記述部分(ICプレーヤー等の製造場所の名称等)及びICプレーヤー等の輸送方法については,競合他社等には知られたくない各メーカーのノウハウ等の技術情報であり,これら情報を開示した場合,提案したメーカーの競争上の地位を害するおそれがあることから,法5条2号イの不開示情報に該当し,また,公表しないことなどを条件に,提案書を提出させていることから,法5条2号ロの不開示情報にも該当すると説明する。
提案したメーカーのICプレーヤー等の製造に係る記述部分及びICプレーヤー等の輸送方法については,これを公にすれば,提案したメーカーの本来秘匿されるべき製品開発や営業上のノウハウ等を明からすることとなり,当該メーカーの競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められることから,提案したメーカーのICプレーヤー等の製造に係る記述部分及びICプレーヤー等の輸送方法は,法5条2号イの不開示情報に該当し,不開示とするのが妥当である。
なお,諮問庁は,法5条2号ロ該当性も主張するが,上記のとおり,同条2号イに該当し,不開示とすべきであると認められることから,この点には判断するまでもない。
イ 採択されたメーカーのICプレーヤー等の製造に係る記述部分及びICプレーヤー等の輸送方法
諮問庁は,採択されたメーカーのICプレーヤー等の製造に係る記述部分(ICプレーヤー等の製造場所の名称等)及びICプレーヤー等の輸送方法を開示した場合,試験業務の妨害や試験問題の漏えいにつながるおそれがあるなど,試験実施業務の遂行に支障があることから,法5条4号ハに該当すると説明する。
確かに,大学入試センターにおいて,試験問題として取り扱っている音声問題が電子的に記録された記憶媒体及びこれを再生するICプレーヤーの製造場所,輸送等に関する具体的な内容を公にした場合,製造場所への侵入や輸送途中での襲撃などの不法な手段によるICプレーヤーや記憶媒体の強奪が容易になり,リスニングテストの問題が漏えいするおそれが増大することは否定できないと考えられる。
したがって,採択されたメーカーのICプレーヤー等の製造に係る記述部分及びICプレーヤー等の輸送方法は,法5条4号ハの不開示情報に該当し,不開示とするのが妥当である。
(4) 提案内容
(略)
(5) 技術審査職員の氏名及び所属
(略)
3 異議申立人の主張について
異議申立人は,種々主張するが,いずれも当審査会の上記の判断を左右するものではない。
4 本件一部開示決定の妥当性について
以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条2号ロ,3号及び4号ハに該当するとして不開示とした決定について,諮問庁が同条1号,2号イ及びロ,3号並びに4号ハ,ニ及びトに該当するとしてなお不開示とすべきとしている部分は,別紙に掲げる情報以外の情報については,同条1号,2号イ及び4号ハに該当すると認められるので,同条2号ロ及び3号について判断するまでもなく,不開示とすることは妥当であるが,別紙に掲げる)採択されたメーカーの名称に係る部分及び)採択されたメーカーが使用する記憶媒体の名称のうち,採択されたメーカーの名称に係る部分が特定できるため,なお不開示が妥当としている部分は,同条4号ハ,ニ及びトのいずれにも該当せず,開示すべきであると判断した。
(第5部会)
委員 上村直子,委員 稲葉 馨,委員 新美育文
別 紙
(略)
諮問日 : 平成18年 6月19日 (平成18年(独情)諮問第48号)
答申日 : 平成19年 2月21日 (平成18年度(独情)答申第46号)
事件名 : 個別音源機器類に関する基本仕様等審査結果等の一部開示決定に関する件
第1 審査会の結論
個別音源機器類(ICプレーヤー,記憶媒体等。以下「ICプレーヤー等」という。)の機種選定に関する法人文書(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定について,諮問庁がなお不開示とすべきとしている部分については,別紙に掲げる)採択されたICプレーヤー等を製造したメーカー(以下「採択されたメーカー」という。)の名称に係る部分及び)採択されたメーカーが使用する記憶媒体の名称のうち,採択されたメーカーの名称に係る部分が特定できるため,なお不開示が妥当としている部分を開示すべきである。
第2 異議申立人の主張の要旨
第3 諮問庁の説明の要旨
第4 調査審議の経過
当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
① 平成18年4月20日 諮問の受理
② 同日 諮問庁から理由説明書を収受
③ 同年5月19日 異議申立人から意見書を収受
④ 同月22日 異議申立人から意見書を収受
⑤ 同年6月19日 本件対象文書の見分及び審議
⑥ 同月26日 審議
⑦ 同年7月10日 審議
第5 審査会の判断の理由
1 本件対象文書,原処分等について
(1) 本件対象文書及び原処分
本件対象文書は,大学入試センターが保有するセンター試験における英語リスニングテストに使用するICプレーヤー等の機種選定に関する文書1から文書23までの文書である。
原処分では,本件対象文書について,文書5,文書7ないし文書10,文書12ないし文書19,文書22及び文書23の法5条2号ロ,3号及び4号ハに該当する部分を除いて開示する旨の一部開示決定を行っている。
当審査会において,本件対象文書のうち,不開示部分を含む文書を見分したところ,これら文書の内容並びに不開示部分及びその根拠条項は,次のとおりである。
ア 文書5,文書7ないし文書10
文書5,文書7ないし文書10は,個別音源機器類仕様策定委員会等において,各メーカーから提出された提案内容が,リスニングテストに使用するICプレーヤー等の基本仕様等に適合するか否かについて検討・審査を行うための検討・審査事項が記載されたチェックリストであり,当該検討・審査についての内容及び結果が記載された文書である。
これらの文書に記載された提案した又は採択されたメーカーの名称及びICプレーヤー等の製造に係る記述部分が,法5条4号ハの不開示情報に該当するとして,不開示とされている。
イ 文書12ないし文書15
文書12は,個別音源機器類仕様策定委員会が,各メーカーから提出された提案内容のリスニングテストに使用するICプレーヤー等の基本仕様等への適合性について,審査した結果の最終段階の内容が記載された文書であり,文書13及び文書14は,個別音源機器類仕様策定委員会において,製造責任,製品検査,輸送,記憶媒体等の各項目について,各メーカーの提案内容を比較検討した結果等を記載したものを部内報告用として取りまとめものの成案と検討中のものであり,また,文書15は,リスニングテストに使用するICプレーヤー等の基本仕様等の策定の検討経緯の概要が記載された文書である。
これらの文書に記載された提案した又は採択されたメーカーの名称,これらメーカーの使用する記憶媒体の名称,ICプレーヤー等の製造に係る記述部分及びICプレーヤー等の輸送方法が,法5条4号ハの不開示情報に該当するとして,不開示とされている。
また,文書13に記載された技術審査職員の氏名,所属大学名及び学内所属が,同条3号及び4号ハの不開示情報に該当するとして,不開示とされている。
ウ 文書16及び文書17
文書16及び文書17は,複数のメーカーから提出を求めたICプレーヤー等の製造に関する提案書であり,提案したメーカーの名称とともに,これらメーカーが提案した)ICプレーヤー,記憶媒体等の仕様・特性,)製造・保管・管理・製品の検査体制及び警備体制,)輸送体制等の内容が具体的に記載された文書である。
文書16の全部及び文書17の文書タイトルを除く部分に記載された提案したメーカーの名称及び提案内容が,法5条2ロの不開示情報に該当するとして,不開示とされている。
エ 文書18及び文書19
文書18は,個別音源機器類仕様策定委員会において,各メーカーの提案内容を比較検討するための資料として使用するために作成された,価格,記録メディア,製造会社等の項目別に,各メーカーの提案内容の概要が表形式で記載された文書であり,文書19は,個別音源機器類仕様策定委員会において,各メーカーに対して提案を求める内容や方法等について,検討するために作成された,メーカーの名称,提案方法,提案書の記載方法等が記載された文書である。
これら文書に記載された提案した又は採択されたメーカーの名称,これらメーカーの使用する記憶媒体の名称及びICプレーヤー等の製造に係る記述部分が,法5条4号ハの不開示情報に該当するとして,不開示とされている。
オ 文書22及び文書23
文書22は,ICプレーヤー等を調達するための仕様策定等に関して技術的な意見を述べる技術審査職員として特定の個人を委嘱するに際し,当該個人の所属大学に対して,特定の個人を技術審査職員に委嘱することに同意を依頼する文書の決裁伺い文書及び発出した同意依頼文書の写しであり,文書23は,特定の個人本人に対して,技術審査職員への委嘱を依頼する文書の決裁伺い文書及び発出した承諾依頼文書の写しである。
これら文書に記載された技術審査職員の氏名,所属大学名及び学内所属が,法5条3号及び4号ハの不開示情報に該当するとして,不開示とされている。
(2) 諮問庁の判断等
諮問庁は,理由説明書及び補充理由説明書において,原処分において不開示とした部分のうち,)文書13,文書22及び文書23に記載された技術審査職員の所属大学名並びに) 文書13,文書14及び文書18に記載している採択されたメーカーの使用する記憶媒体の名称のうち,記憶媒体の名称を含む文書の記述内容及び採択されたメーカーの名称と一体的に記述された記憶媒体の名称の字句数から採択されたメーカーの名称に係る部分が特定できるとする部分以外の部分については,開示することとするが,その余の部分については,)文書16及び文書17に記載された提案したメーカーの名称及び提案内容が,法5条2号ロに加えて同号イの不開示情報にも該当し,)文書13,文書22及び文書23に記載された技術審査職員の氏名及び学内所属が,同条3号及び4号ハに加えて同条1号の不開示情報に該当し,) 文書5,文書7ないし文書10,文書12ないし文書15,文書18及び文書19に記載された提案したメーカーの名称に係る部分及び提案内容,提案したメーカーの使用する記憶媒体の名称,提案したメーカーのICプレーヤー等の製造に係る記述部分並びにICプレーヤー等の輸送方法は,同条4号ハではなく,同条2号イ及びロの不開示情報に該当し,)文書5,文書7,文書8,文書10,文書12ないし文書15及び文書18に記載された当該メーカーの名称に係る部分,採択されたメーカーの使用する記憶媒体の名称のうち,記憶媒体の名称を含む文書の記述内容及び採択されたメーカーの名称と一体的に記述された記憶媒体の名称の字句数から採択されたメーカーの名称に係る部分が特定できるとする部分は,同条4号ハに加えて,同号ニ及びトの不開示情報にも該当するとして,これらの部分の不開示とした理由を追加又は変更し,なお不開示が妥当であるとしている。
そこで,諮問庁がなお不開示とすべきとしている部分について,以下,不開示情報該当性を検討する。
2 不開示情報該当性について
(1) ICプレーヤー等のメーカーの名称
ア 提案したメーカー(採択されたメーカーを除く。以下同じ。)の名称に係る部分
諮問庁は,提案したメーカーの名称に係る部分については,)ICプレーヤー等の製造の受注を目的として,大学入試センターに対して提案書を提出したこと自体が,提案したメーカーにとっては経営戦略に係る情報であり,提案したメーカーの名称に係る部分を開示した場合,このような情報が公になり,当該メーカーの競争上の地位を害するおそれがあること及び)メーカーの名称を公表しないことを条件に,提案書を提出させていることから,法5条2号イ及びロの不開示情報に該当すると説明する。
提案したメーカーの名称に係る部分については,提案したメーカーにとっては,ICプレーヤー等の製造の受注を目的として,大学入試センターに対して提案したものの,受注できなかったという事実は,これを公にした場合,一般的には,メーカーとしての評価を低下させるなど,当該メーカーの事業活動や営業活動に支障を生じさせるおそれがあることから,当該メーカーの正当な利益を害するおそれがあり,法5条2号イの不開示情報に該当すると認められるので,同条2号ロ該当性を判断するまでもなく,不開示が妥当である。
イ 採択されたメーカーの名称に係る部分
(ア) 諮問庁は,採択されたメーカーの名称に係る部分については、これを開示した場合,)当該メーカーのICプレーヤー等の製造場所への侵入その他の手段による不当な行為を容易にし,試験開始以前における試験問題の漏えい等があることから,公正に試験を実施しようとする大学入試センターやセンター試験結果を利用する多数の大学の入試等の実施業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるため,当該情報は,法5条4号ハの不開示情報に該当し,また,)採択されたメーカーとの間で定めた,その名称を公表しないこととした契約に基づき製造受注したという条件が崩れ,採択されたメーカーの契約違反に基づく契約破棄等によってICプレーヤー等の調達ができなくなることによりリスニングテストが中止となることや採択したメーカーからの契約違反による損害賠償等法的措置を含む対応に迫られることにつながるため,採択されたメーカーの名称に係る部分は,法5条4号ニ及びトの不開示情報にも該当すると説明する。
(イ) しかし,次の理由から,採択されたメーカーの名称は,既に明らかといえる情報である。
① 平成18年度センター試験のリスニングテストで採用されたICプレーヤー等のうち,記憶媒体については,当該記憶媒体に,記憶媒体の名称が印字され,また,ICプレーヤーについては,当該ICプレーヤーの本体に,当該記憶媒体の名称を図案化したロゴマークが標記されている。
諮問庁の説明によれば,)ICプレーヤー等の高等学校に対する事前配布や予備校,塾等の団体に対する貸出をし,)受験生にはリスニングテスト終了後,当該記憶媒体を持ち帰ることを認め,実際に,受験生の約8割に当たる約39万人が持ち帰っており,また,)ICプレーヤーの映像を大学入試センターのホーム・ページに掲載し,入学志願者等に配布する「受験案内」(17年度は94万部作成)にその写真を掲載しているとのことである。
このため,採択されたメーカーの使用する記憶媒体の名称は,受験関係者等にとっては,周知の事実となっていると言えるものである。
このことから,当該記憶媒体を使用するICプレーヤーを製造するメーカーは,当該記憶媒体を開発したメーカー及び当該メーカーと製造についてのライセンス契約を締結したメーカーに限定される。
② 一方,採択され得るメーカーは,センター試験に用いられるICプレーヤー等を製造するメーカーであることから,)実際にリスニングテストに用いられるもののほか,試行テスト等にも用いられるものも含めて約50万台を生産する能力を有するという条件に加え,)センター試験の特性から,基本的に1台も不具合があってはならず,このような1台も不具合を出さないような製造の技術・能力,体制等を備えるという条件,更には,)記憶媒体には,試験問題が記憶されており,これが内外から盗難等により漏えい等しないよう,いわゆる秘密保持のための情報漏えい対策等の体制を備えているという条件をも満たされなければならない。
このような条件を満たすメーカーは,相当規模の開発・生産能力,品質管理体制等を有する,国内のいわゆる大手メーカーに限られる。
これに加えて,現在,ICプレーヤーや携帯情報端末等で用いられるカード型の記憶媒体は,数種類,すなわち,採択されたメーカーが使用するものと,その他の種類のものがあるところ,採択されたメーカーが使用する記憶媒体を製造するメーカーで,国内のいわゆる大手メーカーは,それを開発したメーカー1社のみであるが,他の種類の記憶媒体を製造するメーカーで,国内のいわゆる大手メーカーは複数社存在する。また,記憶媒体を使用せず,ICプレーヤーの本体に内蔵したICチップに情報を書き込む方式の機器を製造するメーカーで大手メーカーも存在する。
このように採択され得る国内の大手メーカーが複数社存在する中で,一定のメーカーに提案させて,当該メーカーの提案内容を比較検討の上,採択されたメーカーが決定したことを考慮すると,採択された記憶媒体を使用するメーカーは,大手である採択された記憶媒体を開発したメーカー以外に考えられないところである。
③ さらに,大学入試センターが提案しようとする各メーカーに対し提示し,かつ,本件開示請求により開示された受注メーカーの要件,ICプレーヤー等の基本仕様等をみると,)ICプレーヤー又はICレコーダーを製造した実績のある日本国内のメーカーであること,)音声問題の記憶媒体への書き込みは,受注した会社又は受注した会社の日本国内にある子会社で行うこと,また,この書き込みは記憶媒体を製造する途中で行うこととされている。
このような条件を満たすメーカーは,当該記憶媒体を開発した1つのメーカーのみである。
以上のことから,約50万人の受験生や全国の高等学校,予備校,大学等の多数の受験関係者等にとっては,既に知っている,あるいは採択されたメーカーが運営するインターネットのサイトや専門誌等で調べることにより容易に知ることができるものと認められる。
このため,採択されたメーカーの名称は,明らかとなっていると言える情報である。
(ウ) そこで,諮問庁が説明する不開示情報該当性について検討すると,次のとおりである。
諮問庁は,採択されたメーカーの名称に係る不開示理由について,当該メーカーの名称を開示すると,当該メーカーのICプレーヤー等の製造場所への侵入その他の手段による不当な行為を容易にし,大学入試センター等の入試の実施業務に支障が生ずるおそれがあり,法5条4号ハに該当すると説明するが,採択されたメーカーについては,上記のとおり,当該メーカーの名称が明らか,又は,少なくとも,当該メーカーが運営するインターネットのサイトや専門誌等を調べれば明らかであることから,当該メーカーから音声問題が記録された記憶媒体等を強奪等することにより,センター試験で不正等を働こうとする者は,当該メーカーの名称を調べてでも特定し,これに基づき,当該記憶媒体等の強奪等を図るものと考えられ,本件のような開示請求に基づき,開示されることによって,当該強奪等を特段容易にするものではないと考えられる。
このため,採択されたメーカーの名称は,法5条4号ハには該当しないものと認められる。
また,諮問庁は,採択されたメーカーの名称を開示すると,当該メーカーの名称を公表しないこととした契約に違反することとなり,契約違反に基づく,契約破棄等が行われたり,損害賠償等法的措置を求められるおそれがあり,法5条4号ニ及びトに該当する旨説明するが,上記(イ)のとおり,当該メーカーの名称は,採択された記憶媒体に記載された記憶媒体の名称から,明らかになるものであると認められること,そして,採択された記憶媒体の名称は,諮問庁の説明によれば,当該メーカー自身が記憶媒体に明記することを求めたものであるとのことから,当該メーカーは,契約違反を主張できないものと考えられるところである。
このため,採択されたメーカーの名称は,法5条4号ニ及びトに該当しないものと認められる。
以上のことから,採択されたメーカーに係る情報すなわち,別紙に掲げる採択されたメーカーの名称に係る部分は,法5条4号ハ,ニ及びトに規定する不開示情報に該当するとは認められず,開示すべきである。
なお,諮問庁は,口頭説明において,平成18年度センター試験のリスニングテストに使用された記憶媒体を使用したICプレーヤーを製造する日本国内メーカーについて,採択された特定のメーカー以外の複数のメーカーの具体的名称を明らかにして,これらメーカーが存在することから,採択されたメーカーの名称は,容易に,特定できないと主張する。
しかし,諮問庁が提示したメーカーは,当該メーカー又は当該メーカーの日本国内にある子会社において平成18年度センター試験のリスニングテストに使用された記憶媒体を製造していないことなど,受注メーカーとしての要件を欠くことから,諮問庁の主張は当たらない。
(2) 記憶媒体の名称
ア 提案したメーカーの使用する記憶媒体の名称
諮問庁は,提案したメーカーの使用する記憶媒体の名称は,)ICプレーヤーにどのような種類の記憶媒体を使用するかという情報は,提案したメーカーにとっては,重要な情報であり,当該記憶媒体の名称を開示することは,当該メーカーの競争上の地位を害するおそれがあること及び)記憶媒体の名称を公表しないことを条件に,提案書を提出させていることから,法5条2号イ及びロの不開示情報に該当すると説明する。
提案したメーカーの使用する記憶媒体の名称については,当該メーカーがどのような種類の記憶媒体を使用しているかという当該メーカーにとって重要な情報であり,公にすることにより,当該メーカーの利益を害するおそれを否定できず,法5条2号イの不開示情報に該当すると認められるので,同条2号ロ該当性を判断するまでもなく,不開示が妥当である。
イ 採択されたメーカーの使用する記憶媒体の名称
諮問庁は,採択されたメーカーの使用する記憶媒体の名称については,基本的に開示するが,記憶媒体の名称を含む文書の記述内容及び採択されたメーカーの名称と一体的に記述された記憶媒体の名称の字句数から,採択されたメーカーの名称に係る部分が特定できるとする部分は,不開示を維持するとしている。
しかし,上記(1)のイにおいて記述するとおり,採択されたメーカーの名称に係る部分が不開示情報に該当しないと認められることから,記憶媒体の名称を含む文書の記述内容及び採択されたメーカーの名称と一体的に記述された記憶媒体の名称の字句数から採択されたメーカーの名称に係る部分が特定できるとする部分,すなわち,別紙の2に掲げる部分については,不開示とする理由はなく,開示すべきである。
(3) ICプレーヤー等の製造に係る記述部分及びICプレーヤー等の輸送方法
ア 提案したメーカーのICプレーヤー等の製造に係る記述部分及びICプレーヤー等の輸送方法
諮問庁は,提案したメーカーのICプレーヤー等の製造に係る記述部分(ICプレーヤー等の製造場所の名称等)及びICプレーヤー等の輸送方法については,競合他社等には知られたくない各メーカーのノウハウ等の技術情報であり,これら情報を開示した場合,提案したメーカーの競争上の地位を害するおそれがあることから,法5条2号イの不開示情報に該当し,また,公表しないことなどを条件に,提案書を提出させていることから,法5条2号ロの不開示情報にも該当すると説明する。
提案したメーカーのICプレーヤー等の製造に係る記述部分及びICプレーヤー等の輸送方法については,これを公にすれば,提案したメーカーの本来秘匿されるべき製品開発や営業上のノウハウ等を明からすることとなり,当該メーカーの競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められることから,提案したメーカーのICプレーヤー等の製造に係る記述部分及びICプレーヤー等の輸送方法は,法5条2号イの不開示情報に該当し,不開示とするのが妥当である。
なお,諮問庁は,法5条2号ロ該当性も主張するが,上記のとおり,同条2号イに該当し,不開示とすべきであると認められることから,この点には判断するまでもない。
イ 採択されたメーカーのICプレーヤー等の製造に係る記述部分及びICプレーヤー等の輸送方法
諮問庁は,採択されたメーカーのICプレーヤー等の製造に係る記述部分(ICプレーヤー等の製造場所の名称等)及びICプレーヤー等の輸送方法を開示した場合,試験業務の妨害や試験問題の漏えいにつながるおそれがあるなど,試験実施業務の遂行に支障があることから,法5条4号ハに該当すると説明する。
確かに,大学入試センターにおいて,試験問題として取り扱っている音声問題が電子的に記録された記憶媒体及びこれを再生するICプレーヤーの製造場所,輸送等に関する具体的な内容を公にした場合,製造場所への侵入や輸送途中での襲撃などの不法な手段によるICプレーヤーや記憶媒体の強奪が容易になり,リスニングテストの問題が漏えいするおそれが増大することは否定できないと考えられる。
したがって,採択されたメーカーのICプレーヤー等の製造に係る記述部分及びICプレーヤー等の輸送方法は,法5条4号ハの不開示情報に該当し,不開示とするのが妥当である。
(4) 提案内容
(5) 技術審査職員の氏名及び所属
3 異議申立人の主張について
異議申立人は,種々主張するが,いずれも当審査会の上記の判断を左右するものではない。
4 本件一部開示決定の妥当性について
以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条2号ロ,3号及び4号ハに該当するとして不開示とした決定について,諮問庁が同条1号,2号イ及びロ,3号並びに4号ハ,ニ及びトに該当するとしてなお不開示とすべきとしている部分は,別紙に掲げる情報以外の情報については,同条1号,2号イ及び4号ハに該当すると認められるので,同条2号ロ及び3号について判断するまでもなく,不開示とすることは妥当であるが,別紙に掲げる)採択されたメーカーの名称に係る部分及び)採択されたメーカーが使用する記憶媒体の名称のうち,採択されたメーカーの名称に係る部分が特定できるため,なお不開示が妥当としている部分は,同条4号ハ,ニ及びトのいずれにも該当せず,開示すべきであると判断した。
(第5部会)
委員 上村直子,委員 稲葉 馨,委員 新美育文
別 紙