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情報公開審査会の答申などを集めて載せています。

東京都情報公開審査会 答申第414号 17病サ患第○○号 訴訟資料の照会について(回答)

2008年06月13日 | 訴訟記録
諮問第488号
答申


1 審査会の結論
 「17病サ患第○○号 訴訟資料の照会について(回答)」の一部開示決定において非開示とした部分のうち、別表に掲げる部分については開示すべきであるが、その他の部分については非開示が妥当である。

2 異議申立ての内容
(略)


3 異議申立てに対する実施機関の説明要旨
(略)


4 審査会の判断
(1) 審議の経過
(略)


(2) 審査会の判断
 審査会は、異議申立ての対象となった公文書並びに実施機関及び異議申立人の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。

ア 本件対象公文書について
 本件異議申立てに係る対象公文書は、「17病サ患第○○号 訴訟資料の照会について(回答)」(以下「本件対象公文書」という。)である。
 本件対象公文書は、本件損害賠償請求事件(以下「本件訴訟」という。)が提起された際に、本件訴訟内容の事業を所管する病院経営本部のサービス推進部の部長(以下「病院経営本部」という。)が、東京都の訴訟事務を所管する総務局法務部の部長(当時。以下「法務部」という。)からの訴訟対応に関する調査照会に対し、回答を行うために内部の意思決定を行った決裁文書である。
 本件対象公文書は、東京都文書管理規則(平成11年東京都規則第237号)20条に定められた様式第5号甲及び乙からなる意思決定を行うための起案文(以下「起案文」という。)、病院経営本部から法務部あて調査照会に対する回答案文(以下「回答案文」という。)、回答案文に添付された病院における特定の患者の診療経過や担当医師の所見等が記載された文書(以下「診療経過等記載文書」という。)、本件訴訟の原告の主張に対する認否を記載した文書(以下「訴訟認否文書」という。)、口頭弁論期日呼出及び答弁書催告状(以下「催告状」という。)、訴状の写し(以下「訴状」という。)及び法務部から病院経営本部への訴訟資料の調査についての照会文(平成18年2月23日付17総法訟訟第425号の2。以下「照会文」という。)から構成されている。
 実施機関は、本件対象公文書のうち起案文、回答案文、催告状及び照会文に記載された原告の氏名、催告状及び照会文に記載された受訴裁判所の事件番号(照会文においては受訴裁判所名を含む。)、診療経過等記載文書全体及び訴訟認否文書全体を個人に関する情報で特定の個人を識別することができるため、条例7条2号本文に該当するとして非開示とした。また、起案文の中の訴訟対応についての記載、「4 応訴について」及び「5 今後の訴訟の取り組みについて」の記載、回答案文の中の「3 本件請求に応じられない事情」及び「4 本件訴訟を遂行するについての当本部の希望」の記載は、争訟に係る情報で公にすることにより当事者としての地位を不当に害し、当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため、条例7条6号に該当するとして非開示とした。さらに、起案文の中の「1 請求の趣旨」の記載、「2 診療経過」及び回答案文中の「1 本件訴訟が提起されるに至った経過の詳細、特に原告と病院との現在までの交渉のてん末」に記載された診療経過等記載文書の表題のうち、日付及び原告の採った措置に関する部分並びに訴状は、条例7条2号及び6号のいずれにも該当するとして非開示とした。

イ 条例7条2号及び6号該当性について
 条例7条2号本文は、「個人に関する情報で特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」を非開示情報として規定しており、同号ただし書において、「イ 法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」、「ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」、「ハ 当該個人が公務員等…である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」のいずれかに該当する情報については、同号本文に該当するものであっても開示しなければならない旨規定している。
 また、同条6号は、「都の機関又は国、独立行政法人等、他の地方公共団体若しくは地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、…当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」を非開示情報として規定している。

(ア) 訴状について
 訴状は、原告が東京都を被告として、都立病院の医療過誤を原因とする損害賠償請求の訴えを提起したものであり、原告、被告及び本件訴訟関係者に関する情報、東京地方裁判所に係属した本件訴訟とは別訴訟の事件番号、請求の趣旨、事件の経緯となる原告の身体の状況、原告の手術担当医師(以下「担当医師」という。)による具体的な診療内容、損害賠償請求額の算定根拠等から構成される請求の原因が記載されている。実施機関は、訴状全体について、条例7条2号及び6号に該当するとして非開示とした。

a 条例7条2号本文該当性について
 訴状記載のうち原告の住所、氏名、生年月日、被告代表者の氏名及び担当医師の氏名は、特定個人に関する情報で特定の個人を識別できる情報であるため、条例7条2号本文に該当すると認められる。
 次に、原告の年齢、性別、病名、該当する身体の部位及び担当医師による診療日は、氏名部分を非開示としても、都立病院名がすでに開示されていることから、病院に関係するその他の文書など他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができる情報であるため、同号本文に該当すると認められる。
 また、請求の原因に記載のある別訴訟の事件番号は、受訴裁判所において訴訟事件ごとに付される識別番号であり、事件番号自体から直ちに個人が識別されることはないが、開示することとなれば、受訴裁判所にある訴訟記録と照合することにより、特定の個人を識別することができる情報であるため、同号本文に該当すると認められる。
 さらに、訴訟物価額及び貼用印紙額、請求の趣旨のうち損害賠償請求額及び請求の原因のうち損害賠償請求額の算定根拠は、本件訴訟が医療過誤訴訟事件であることを勘案すると、開示することとなれば、原告の症状や後遺障害の程度等が推測される可能性があるが、症状や後遺障害の程度は、通常、他人に知られたくないものであるとともに、他の情報と照合することにより、特定の個人が識別される可能性が高いものである。
 したがって、これらの情報は、特定の個人を識別することができるとまではいえないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であるため、同号本文に該当すると認められる。
 なお、訴状記載のうち上記の情報を除く部分については、当該部分が公にされたとしても、特定の個人を識別することはできず、また、原告の権利利益を害するおそれがある情報とは認められないことから、条例7条2号本文に該当しない。

b 条例7条2号ただし書該当性について
 異議申立人は、訴状等の訴訟記録は、訴訟に至った場合には公開の法廷に持ち込まれるものであるから、情報公開請求で第三者に開示することを否定することは無意味である旨主張する。
 確かに、憲法82条には裁判の公開が定められ、民事訴訟法(平成8年法律第109号)91条1項には訴訟記録の閲覧が定められている。
 しかしながら、裁判所での訴訟記録の閲覧については、閲覧を希望する事件の事件番号や当事者名が特定されなければ、閲覧は事実上困難であることから、何人にも無条件で閲覧が認められているとはいえない。また、審査会が見分したところ、本件訴訟は裁判所のホームページや刊行物等において公開されていない訴訟事件であることから、法令等の規定により又は慣行として公にされている情報とは認められず、条例7条2号ただし書イに該当しないと解される。さらに、その内容及び性質から同号ただし書ロ及びハにも該当しない。
 ただし、被告代表者の氏名及び当時、都立病院の職員であった担当医師の氏名は、いずれも職員名簿等において一般に公表されている情報であることから、同号ただし書イに該当すると認められる。

c 条例7条6号該当性について
 実施機関は、原告は訴状の記載内容を開示されない利益を有するものであって、これを一方の訴訟当事者である東京都が第三者に開示することは信義則に反するものであるとともに、訴訟当事者としての原告の地位を不当に害するおそれがあると主張し、さらに、訴状は争訟に関する文書そのものであり、その性質上部分的な開示に適さないと主張する。
 しかしながら、上記aで判断したとおり、個人を識別できる、あるいは個人の権利利益を害するおそれのある情報は区分することが可能であり、それらを除いてその余を条例に基づき開示することは、裁判の公開及び民事訴訟法の趣旨にかなうものであり、また、原告との信義則に反するものとは認められず、訴訟当事者としての原告の地位を不当に害し、争訟の適正な遂行に著しく支障を及ぼすおそれがある情報とは認められないことから、条例7条6号には該当しない。

 なお、実施機関は、原告訴訟代理人弁護士(以下「原告代理人」という。)の氏名について、条例7条2号及び6号に該当するとして非開示としているが、当審査会では、訴状における原告代理人の氏名は、事業を営む個人の当該事業に関する情報であると認められることから、条例7条3号及び6号の該当性について判断する。条例7条3号本文は、「法人その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該事業を営む個人の競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれると認められるもの」を非開示情報として規定している。
 原告代理人の氏名は、開示されたとしても、訴訟代理人としての弁護士の社会的立場や役割からすると競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれるとは認められないことから条例7条3号には該当せず、また、上記で判断したとおり、原告の地位を不当に害し、争訟の適正な遂行に著しく支障を及ぼすおそれがある情報とは認められないことから、条例7条6号にも該当しない。よって、開示が妥当である。
 また、実施機関は、原告代理人の印影についても、条例7条2号及び6号に該当するとして非開示としているが、当審査会では、印影は原告代理人の氏名と同様に、事業を営む個人の当該事業に関する情報であると認められることから、条例7条4号の該当性について判断する。条例7条4号は、「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」を非開示情報として規定している。
 原告代理人の印影は、開示されることとなれば、印影を偽造されることにより、犯罪の予防に支障を及ぼすおそれがある情報であるため、条例7条4号に該当すると認められる。

 以上により、原告の住所、氏名、生年月日、年齢、性別、原告代理人の印影、訴訟物価額、貼用印紙額、請求の趣旨のうち損害賠償請求額並びに請求の原因のうち、別訴訟の事件番号、原告の病名、該当する身体の部位、担当医師による診療日及び損害賠償請求額の算定根拠となる部分は非開示とすべきであるが、その他の部分は開示すべきである。

(イ) 起案文について
a 条例7条2号該当性について
 起案文には、内部の意思決定に必要な事項が記載されている。
 実施機関は、起案文記載のうち、件名欄の原告の氏名、「1 請求の趣旨」の記載、「2 診療経過」に記載された診療経過等記載文書の表題のうち日付及び原告の採った措置に関する部分を条例7条2号に該当するとして非開示とした。
 起案文記載のうち、原告の氏名は、上記(ア)で述べたとおり、条例7条2号本文に該当すると認められる。また、その内容及び性質からみて同号ただし書のいずれにも該当しない。
 「2 診療経過」に記載された診療経過等記載文書の表題のうち日付に関する部分は、都立病院名がすでに開示されていることから、病院に関係するその他の文書など他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができる情報であるため、条例7条2号本文に該当すると認められる。また、その内容及び性質からみて同号ただし書のいずれにも該当しない。
 しかしながら、同表題のうち原告の採った措置に関する部分は、日付が特定されない限り、特定の個人を識別できる情報であるとは認められないことから、同号本文に該当しない。また、「1 請求の趣旨」の記載は、訴状記載の「請求の趣旨」をそのまま引用していることから、上記(ア)の判断のとおり、損害賠償請求額を除いた部分は条例7条2号本文に該当しない。したがって、これらの部分は開示すべきである。

b 条例7条6号該当性について
 実施機関は、起案文記載のうち、第5号様式甲にある訴訟の対応についての記載、「1 請求の趣旨」、「4 応訴について」、「5 今後の訴訟の取り組みについて」の記載及び「2 診療経過」に記載された診療経過等記載文書の表題のうち日付及び原告の採った措置に関する部分を条例7条6号に該当するとして非開示とした。
 審査会が見分したところ、本件訴訟はすでに終結していることが認められる。したがって、これらの情報は、訴訟当事者としての地位を不当に害し、訴訟の適正な遂行に著しく支障を及ぼすおそれがあるとは認められないため、条例7条6号に該当しない。

 以上により、訴訟の対応についての記載、「1 請求の趣旨」の記載のうち損害賠償請求額を除いた部分、「2 診療経過」に記載された診療経過等記載文書の表題のうち日付を除いた部分、「4 応訴について」及び「5 今後の訴訟の取り組みについて」の記載部分は開示すべきである。

(ウ) 回答案文について
a 条例7条2号該当性について
 回答案文には、本件訴訟が提起される原因となった事実関係や訴訟の対応等について、実施機関の意見等が項目ごとに記載されている。
 実施機関は、回答案文記載のうち、「1 本件訴訟が提起されるに至った経過の詳細、特に原告と病院との現在までの交渉のてん末」に記載された診療経過等記載文書の表題のうち日付及び原告の採った措置に関する部分及び「2 訴状に記載してある原因事実の認否」に記載された原告の氏名を条例7条2号に該当するとして非開示とした。
 回答案文記載のうち、原告の氏名は、上記(ア)で述べたとおり、条例7条2号本文に該当すると認められる。また、その内容及び性質からみて同号ただし書のいずれにも該当しない。
 また、審査会が見分したところ「1 本件訴訟が提起されるに至った経過の詳細、特に原告と病院との現在までの交渉のてん末」に記載された診療経過等記載文書の表題のうち日付及び原告の採った措置に関する部分は、上記(イ)で述べた「2 診療経過」の記載内容の非開示部分と同一であると認められる。
 したがって、上記(イ)で述べたとおり、これらの情報のうち、日付に関する部分は条例7条2号本文に該当すると認められ、その内容及び性質からみて同号ただし書のいずれにも該当しないので非開示とすべきである。一方、同表題のうち原告の採った措置に関する部分は、同号本文に該当しないので開示すべきである。

b 条例7条6号該当性について
 回答案文において、条例7条6号に該当するとして非開示とされたのは、「1 本件訴訟が提起されるに至った経過の詳細、特に原告と病院との現在までの交渉のてん末」に記載された診療経過等記載文書の表題のうち日付及び原告の採った措置に関する部分、「3 本件請求に応じられない事情」及び「4 本件訴訟を遂行するについての当本部の希望」の記載部分である。
 これらの情報は、実施機関が争訟上どのように対応するかを示したものであるが、すでに本件訴訟が終結していることを勘案すると、訴訟当事者としての地位を不当に害し、訴訟の適正な遂行に著しく支障を及ぼすおそれがあるとは認められないため、条例7条6号に該当しない。したがって、開示すべきである。

 以上により、「1 本件訴訟が提起されるに至った経過の詳細、特に原告と病院との現在までの交渉のてん末」に記載された診療経過等記載文書の表題のうち日付を除いた部分、「3 本件請求に応じられない事情」及び「4 本件訴訟を遂行するについての当本部の希望」の記載部分は開示すべきである。

(エ) 診療経過等記載文書に記載された情報の条例7条2号該当性について
 診療経過等記載文書には、表題、事案の概要、患者の履歴、関係者の経歴等、外来や入院などの患者診療経過、担当医師の見解などが記載されている。
 実施機関は、診療経過等記載文書全体を非開示としているが、このうち、患者の氏名、生年月日、住所、担当医師の氏名、生年月日は、特定個人に関する情報で特定の個人を識別できる情報であるため、条例7条2号本文に該当すると認められる。
 また、患者の性別、年齢、職業(当時)、主な既往症、入院までの経過、担当医師の年齢、職種、当時の職、経歴は、氏名部分を非開示としたとしても、都立病院名がすでに開示されていることから、病院に関係する文書など他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができる情報であるため、条例7条2号本文に該当すると認められる。
 上記の関係者の経歴等のうち、担当医師の氏名、職種、当時の職、事案との関係、都立病院勤務の経歴は、当時、都立病院の職員としてその職務に携わっていた医師の情報であることから、同号ただし書イに該当すると認められる。その余の部分は、その内容及び性質からみて同号ただし書のいずれにも該当しない。
 次に、事案概要、外来や入院などの診療経過、担当医師の見解などは、患者のこれまでの症状や通院等の診療経過、実際のやり取りや担当医師の見解などが時系列的に克明かつ詳述に記載されており、これらは、本件が医療過誤訴訟事件であることを勘案すると、患者にかかわる機微な情報で、通常、他人に知られたくないものであるとともに、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であるため同号本文に該当すると認められる。また、その内容及び性質からみて同号ただし書のいずれにも該当しない。
 しかしながら、当該文書の表題は、上記(イ)で述べたとおり、日付に関する部分は同号本文に該当すると認められ、また、その内容及び性質からみて同号ただし書のいずれにも該当しないが、同表題のうちそれを除いた部分は、同号本文に該当しない。
 また、各段の表題のうち、患者の氏名、病名及び該当する身体の部位は、上記(ア)で述べたとおり、同号本文に該当すると認められ、また、その内容及び性質からみて同号ただし書のいずれにも該当しないが、同表題のうちそれを除いた部分は、個人を識別することができる情報とまではいえず、また、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であるとは認められないので、同号本文に該当しない。

 以上により、当該文書の表題のうち日付を除いた部分、各段の表題のうち患者の氏名、病名及び該当する身体の部位を除いた部分、関係者の経歴等のうち担当医師の氏名、職種、当時の職、事案との関係、都立病院勤務の経歴の部分は開示すべきである。

(オ) 訴訟認否文書に記載された情報の条例7条2号該当性について
 訴訟認否文書には、当該文書の表題のほか、原告の主張について記載された欄とそれに対する担当医師の見解が記載された欄及びそれぞれの表題で構成されている。
 訴訟認否文書について、実施機関は文書全体を非開示としているが、文書の表題に記載された原告の氏名は、上記(ア)で述べたとおり、条例7条2号本文に該当すると認められる。また、その内容及び性質からみて同号ただし書のいずれにも該当しない。しかし、その余の部分は、特定の個人が識別されるとは認められないため、同号本文に該当しない。
 また、審査会が見分したところ、原告の主張について記載された欄は、訴状の記載内容をそのまま引用したものであるので、上記(ア)で述べたとおり、条例7条2号本文に該当すると認められる。
 さらに、担当医師の見解が記載された欄中の原告の入院等の年月日、病名、病状、具体的な診療内容や担当医師のそれに対する見解についての記載は、本件訴訟における原告の名誉、資質にかかわる機微な情報で、通常、他人に知られたくないものである。これを開示することとなれば、特定の個人を識別することができるとまではいえないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であり、同号本文に該当する。また、これらの情報は、その内容及び性質からみて同号ただし書のいずれにも該当しない。
 しかしながら、同欄中のその余の部分については、当該部分が公にされたとしても、特定の個人を識別することができるとまではいえず、また、このことにより、原告の権利利益を害するおそれがあるとも認められないことから、同号本文に該当しない。
 また、同欄の表題に記載された担当医師の氏名については、上記(ア)で述べたとおり、同号ただし書イに該当する。

 以上により、当該文書の表題のうち原告の氏名を除いた部分、原告の主張について記載された欄のうち上記(ア)において開示すべきとされた部分及び担当医師の見解について記載された欄については、原告の入院等の年月日、病名、病状、具体的な診療内容や担当医師のそれに対する見解を除いた部分を開示すべきである。

(カ) 催告状に記載された情報の条例7条2号該当性について
 催告状には、受訴裁判所が関係者に対して通知すべき、口頭弁論の期日、場所、答弁書の提出期限等が記載されている。
 催告状において、実施機関が非開示としたのは、事件番号及び原告の氏名である。
 これらの情報は、上記(ア)で述べたとおり、条例7条2号本文に該当すると認められ、その内容及び性質から同号ただし書のいずれにも該当しない。

(キ) 照会文に記載された情報の条例7条2号該当性について
 照会文には、法務部が、訴訟についての経過、対応等について、病院経営本部に対して照会した内容が、項目ごとに記載されている。
 実施機関が非開示としたのは、受訴裁判所名、事件番号及び原告の氏名である。
 事件番号及び原告の氏名は、(ア)で述べたとおり、条例7条2号本文に該当すると認められ、その内容及び性質から同号ただし書のいずれにも該当しない。
 しかしながら、受訴裁判所名については、他の本件対象公文書において、すでに開示されており、条例7条2号本文に該当しないと認められるので、開示すべきである。

 以上(ア)から(キ)までにより、別表に掲げる部分を開示すべきである。

 よって、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
 瀬田悌三郎、中村晶子、乳井昌史、山田洋

別表
(略)


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