付け焼き刃の覚え書き

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「“文学少女”と飢え渇く幽霊」 野村美月

2009-04-26 | 本屋・図書館・愛書家
「オレは、精神的マゾなんです。女に愛憎の混じった目で見つめられて罵られると、ぞくぞくする。だって、人間の感情で一番強いのは憎しみじゃないですか?」
 憎んでいる方が愛も続くと語る櫻井流人の言葉。結局、愛に飢えているのです。

 文芸部の相談ポストに投げ込まれた謎の紙片。おっかなびっくり調査に乗り出す天野遠子だったが、遠子と心葉の前に現れた少女は「わたし、もう死んでいるの」と笑った……。

 名作文学をモチーフに物語が繰り広げられる文学少女シリーズも第2弾。ビターテイストのラブコメとかミステリとかキャッチコピーがつけられてますが、つまりは仮面をかぶった登場人物らの愛憎劇。妖怪「文学少女」こと遠子先輩の本一途でぽややんな性格と後輩で「おやつ」係の井上心葉のやりとりに誤魔化されていますが、今回も重く救いの見えない話です。クラスメイトでいつも落ち着いている芥川くんやツンツンな琴吹ななせも少しずつ存在感を増しながら伏線をちりばめ始め、理事長の孫娘である姫倉麻貴も単なる傍観者ではなくなっています。

 作品中で言及されていたマクドナルドの『王女とゴブリン』は岩波少年文庫版の『お姫さまとゴブリンの物語』で読みましたが、寓話的に放り投げて終わる結末で、まったく救われないエピローグでした。
 せめて文学少女は「めでたし!」と言い切れる結末で終わると良いなと思いました。

【“文学少女”と飢え渇く幽霊】【野村美月】【嵐が丘】【ハーレクイン】【マクドナルド】

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