付け焼き刃の覚え書き

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「万延元年のニンジャ茶漬け」 松宮宏

2023-04-03 | その他フィクション
「文化と文化が出会うときにはまず勘違いが起こります。されどしあわせな勘違いこそ、国や人種を超えた友情につながる」
 村垣淡路守は外交だからこそ、通じきらないから仲良くなれるのだと語った。

 サムエル・スイード・デュランは三大財閥の一角、デュラン家の人間であったが軍人の道を志し、南北戦争では北軍の海軍大佐としてアナポリスへの上陸作戦支援に多大な功績を残した。
 そんな彼が後世には奇行を連発したことで知られるようになったのは1860年、日本から派遣された使節団に歓迎団の一員として接触し、村垣淡路守の言動を目撃したことがきっかけであった。彼こそは幕府の御庭番、ニンジャであるという……。

 なんとなくタイトルに手を引かれて購入。作者の名前に覚えがあるなあと思ったら、『秘剣こいわらい』の人でした。Amazonの作品紹介には「デビュー作の『秘剣こいわらい屋』」とあるけれど、誤植だから! 誰が書いたのよ?『まぼろしのパン屋』につられたか?
 冒頭の海軍少将デュランのエピソードに「戦闘機乗りに檄を飛ばす」とあって、南北戦争から米墨戦争で活躍した1865年没の軍人のどこに戦闘機との接点があったのかと思わず航空機の歴史で1903年のライト筐体の初飛行を確認してしまいます。そもそもデビュー作からホラ話に近い、現代を舞台にした剣豪活劇だったりするんで、気にしちゃいけなかった。
 『太秦の次郎吉』は逮捕された窃盗犯と接見した女性弁護士のエピソードで、つまりは江戸の町で将軍のお縄にかかった物語。
 『鈴蘭台のミモザ館』は、京都に憧れていた埼玉の女性が神戸に赴任することになって住む家を探すのだが……という話で始まるけど、つまりは老女2人の友情なんです。

「人は誰しも完璧な存在じゃない。隙間だらけ。友人って存在だけが隙間を埋めることができるの」
 カリスマ・ファッションデザイナー、白藤多津子の言葉。

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