付け焼き刃の覚え書き

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らのべヒロイン列伝「宝田舞(異世界修学旅行)」

2018-04-01 | 雑談・覚え書き
○宝田舞 「異世界修学旅行」岡本タクヤ(ガガガ文庫)

 修学旅行中の緑ヶ丘高校の列に落雷が直撃。気がつけば、2年1組の教師生徒は異世界に吹き飛ばされていた。
 異世界の迷い子となった修学旅行生を保護したのは王女プリシラ。彼女によれば、こういう事故で異世界に飛ばされるというようなことは100年に1回くらいはあり、「異世界からあらわれし者が世界を救う伝説」も伝わっているらしい。しかし、彼らにチートな能力が与えられたということもなく、この世界の魔王も先週「押し込み強盗に金品を奪われた上に殺害された」ということで世界の危機もない。ただ、来てしまった以上、衣食住の面倒は国が見てくれるというので、沢木浩介たちは修学旅行の続きをやろうと、ちりぢりばらばらになったクラスメイトを集めながら物見遊山に旅立つのだった……。

 超能力や魔法ではないけれど、部活や趣味で培った特技が異能レベルに達している生徒たちの学園ものということで、蓬莱学園とかコータローとか好きな人にはお勧めな、岡本タクヤの異世界漫遊記です。
 クラス丸ごとということでヒロイン候補は多く、現代日本文化に詳しすぎる「趣味は課税」な王女プリシラとか、サイコパスからクリームパンまですべてを完璧に演じきる天才演劇少女「千の背後霊を持つ少女」川中島真弓とか、キャラ作りが迷走している剣客少女・和泉刀香とかいろいろおりますが、ここで1人挙げるというなら文芸部の宝田舞でしょう。人付き合いの悪い文学少女で、それまでクラスでも目立たない少女でしたが、異世界に来ると周囲に喧嘩を売りまくって悪目立ちし始めます。

「あっ、あっ、そこのテーブルの形状が19世紀フランスっ! 壁の鏡の装飾が16世紀イタリアっ! ぐあっ、インチキっ、考証不足っ! 偽ファンタジー! くされライトファンタジーっ!」

 彼女は文学少女。古今東西のファンタジー文学などを読みあさってきた彼女には、この人名がイギリス読みとかドイツ語読みとかてんでばらばらだし、家具や建物の様式が年代ごちゃごちゃだし、なんとなく設定が緩く見える“中世ファンタジー異世界”のリアリティのなさが我慢ならなかったのです。
 かくしてクラスメイトと袂を分かって単独行動で消え去る厄介さんですが、結局彼女がいちばんこの世界に馴染んでしまい、白馬を駆りながら修学旅行生一行とは別の場所で波乱に富んだ冒険を繰り広げているらしいという話が伝わってくるようになります。
 人呼んで「ハイファンタジー宝田」

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