付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

★ファンタジー今昔

2023-12-31 | 雑談・覚え書き
 今でこそ剣と魔法のファンタジーはあたりまえですが、70年代あたりまでは『桃太郎』とか『かぐや姫』みたいなファンタジーとメルヘンとおとぎ話でひとくくりにされていて、それにせいぜいギリシア神話とか児童文学系作品あたりがくっついていた程度でしたが、今ではいつの間にかファンタジーと言えば剣と魔法の冒険と認識されるようになっていたのでした。

太陽の王子・ホルスの大冒険』 東映動画(1968)
 アイヌ伝承をモチーフに、少年ホルスが旅の途中で出会った岩の巨人や村人たちと力を合わせて悪魔グルンワルドと戦う冒険マンガ映画。朝ドラ『なつぞら』のモチーフにもなってます。
 和田慎二がグルンワルドの妹ヒルダの大ファンだというのは有名。美少女キャラの代名詞で、(ファンジンや雑誌の投稿を見る限り)クラリス登場までそのトップ独走状態でした。ヒルダの声を担当したのが市原悦子だけれど、『家政婦は見た!』でしか市原悦子を知らない世代はびっくり。

『王家の紋章』細川智栄子あんど芙〜みん (1976)
 財閥令嬢キャロル・リードは王家の呪いによって太古のエジプトへとタイムスリップしてしまう。その金髪碧眼の美貌から少年王メンフィスに見初められるのだが、彼女の真価は何よりも現代科学と歴史の知識にあった……。
 現代人が過去にタイムスリップして現代知識で成り上がる現在のウェブ系ファンタジーの原典ともいうべき少女マンガ。実は未だ連載中で新刊が出る最長不倒作品。これを読んでいると、水のろ過技術とか鉄剣の製法は義務教育と思い込むようになります。

『ヤーケウッソ物語』 中山星香(1977)
 『指輪物語』に傾倒し、ハイファンタジーを描きたくてたまらないけれど、そんなものは世に受け入れられない時代だったので、スラップスティック・コメディにファンタジー要素をちりばめながらの下準備を続けた作者のデビュー作。その経緯が分かるのは、あれこれ描き続けたロマンチック・コメディのコミックにエッセイマンガの形で「三剣物語という構想がある」などと毎回書き綴っていたから。

『ピグマリオ』 和田慎二(1978)
 妖女メデューサによって母ガラティアを石に変えられてしまっていた東方の小国ルーンの王子クルトは、メデューサを倒して母を救うべく遙か西への旅に出たのだが……。
 少女マンガ誌で始まった少年が主役のファンタジー。まだヒロイックファンタジーというジャンルに馴染みがなく第一部で打ち切られたものの、82年に再開されて長期人気作品に。

『クリスタル★ドラゴン』 あしべゆうほ(1981)
 緑の原の一族の少女・アリアンロッドは皆殺しにされた一族の仇を取るために、族長の娘ヘンルーダとともに旅に出た。やがて、強大な力を得る「竜の杖」を手に入れるが、そのまま水晶竜の夢の中に入り込んでしまう……。
 『悪魔(デイモス)の花嫁』で一世風靡していた作者によるケルト神話系をモチーフに、黒髪の美少女の探索の旅を描く大河ロマン。友人のおだったさんが揃えていて読ませてもらっていました。これも息は長く、最新刊は2020年。

『妖精国の騎士』 中山星香(1986)
 ハイファンタジーが描きたい作者も80年頃からロマンスやロマンチック・コメディの体裁で舞台設定がファンタジー世界の物語を送り出し始め、『エルブラントの青い瞳』や『花冠の竜の国』などを発表。86年にはついに本格的ファンタジー『妖精国の騎士』が始まります。

ロードス島戦記(1986)
 パソコン雑誌でのテーブルトークRPG『Dungeons & Dragons』の誌上リプレイから始まった、呪われた島ロードスを舞台に、田舎の若者パーンがエルフやドワーフなどを仲間にしながら続ける旅で繰り広げられる冒険譚。エルフの耳が細長く、女性は胸が薄いという概念はここで固定されました。
 TRPGから誌上リプレイ、書籍化、パソコンゲーム化、アニメ化と、その展開がそのままファンタジー普及の歴史みたいなものですが、一般にまで広まるには小説『ハリー・ポッター』や映画『ロード・オブ・ザ・リング』の大ヒットを待つしかありません。

ハリー・ポッターと賢者の石(1999)
 現代にも魔法使いは存在していて、一般人の知らないところで勢力を保っているのだという、1990年代のイギリスを舞台にした物語で、海外でのヒット後の99年に日本語版が刊行。魔法使いの少年ハリー・ポッターの学校生活にさまざまな不思議な事件や危険な陰謀が舞い込んでくるが、それはいずれもハリーの両親を殺害した強大な闇の魔法使いヴォルデモート復活のための布石であった……という話。

ロード・オブ・ザ・リング(2001)
 人間、ホビット、エルフ、ドワーフなどが住む中つ国(Middle-earth)を舞台に、世界に混沌をもたらし支配しようとする冥王サウロンを滅ぼすために必要な、全てを統べる「一つの指輪」を破壊するための冒険の物語。もはや現代ファンタジーの原点というべき『指輪物語』をピーター・ジャクソンが映画化したもの。
 この大ヒットで、ファンタジーの基本フォーマットが一般大衆に定着したような気がします。


 このあたりから、ウェブ小説が次第に活発になり、ゲームやコミックから逆流するような感じで転生ものやらダンジョン攻略ものなどが増え始めるのですが……。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「淡海乃海 水面が揺れる時 ... | トップ | 私的年間ベスト2023 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

雑談・覚え書き」カテゴリの最新記事