
思ったより映像はクリア。でも、今見ると、艦隊戦とかの演出はショボイよね。良いデザイン、良いシーンはあるけれど、客観的に作品として面白いかと訊ねられれば「?」と答えるしかない。ヘボ将棋の譜面みたいなもので、敵味方交互に相手のコマを取っていくだけ。面白くしようは幾らでもあるだろうし、「戦闘における駆け引き」とことならアニメンタリー『決断』の方が燃える余地があるかもしれない。
そういう演出の古さも辛いけど、なにより1作目『宇宙戦艦ヤマト』の根幹にあった、「明日のために今日の屈辱に耐えるんだ」という何が何でも生き残るんだ、生き残ってこそナンボだという思想部分がすっぽり抜け落ち、「男だったら、戦って戦って戦い抜いて、一つでも多くの敵をやっつけて、死ぬべきじゃないんですか!」という特攻ばんざーい!に変調しているように見えるのが辛い。
リアルタイムで観た世代には愛憎相半ばする作品なのだけれど、これは「大事な青春の思い出の作品として金庫に詰めて二重三重に鉄鎖で縛りコンクリで固めてしまっておきたい」という感覚。ロボットや怪獣の出てくるアニメはあっても、少しでもまともに「戦争」とか「兵器」とか「SF」を扱った作品が無かった時代に(いや、個別にみればそれなりにあるんだけど)やっと出会った作品。その前年に公開されている『スターウォーズ』が多少とも日本の映像の影響を受けており、その影響をさらに受けて『さらば宇宙戦艦ヤマト』が制作され、その影響がさらに……という連鎖の大きな基点。そういう流れの上での評価なり感慨があるわけで、いちばん若いU君には理解できないのも当然。(2007/09/20)
始発電車で劇場(シネラマ名古屋)のある名古屋まで出かけても、ローカル線だからどうしても到着が7時過ぎになり、そのときには劇場前には長蛇の列。それでも座席指定もなければ定員もあってなきが如くで、通路に座ったりしながら観たもんです。
劇場で前売り券を買うときにもらったリーフレットが出てきたのでペッタン。(2017/03/28)
沖田艦長が悪魔のささやきを始めたのともう1つ、この作品には大きな歴史の書き換えがあります。「デスラー戦法」です。
総統デスラーが瞬間物質移送機による短距離ワープ攻撃を仕掛けてきたのを見たヤマトクルーは「デスラー戦法だ!」とか叫びますが、これを前回やったのはドメル将軍なんですね。それはみんな知ってるはずなので、本当なら「ドメル戦法だ」もしくは「ガミラス戦法」になるはずですが、なぜか「デスラー戦法」と呼ばれ、それによってそれまでドメル将軍が持っていた宇宙の狼、武士(もののふ)という評価がそのままデスラーに付与されて、狂気の独裁者という評価が、敵ながらあっぱれな人物に上書きされてしまい、それが以降の評価となってしまいます。
だから2199のときにあった「デスラーがおかしい」という感想は、「さらば宇宙戦艦ヤマト」で上書きされたイメージと違うという意味で、2202で再び上書きされていくのでした。せっかく2199でアップデートされた物語が、ことごとく2202で台無しにされていくのは辛いですね……。(2019/02/18)
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