
べーは冒険者ギルドのマスターをいなす。
神様の手違いで死んでしまい、異世界に転生したヴィベルファクフィニーこと“べー”。
彼は前世の知識もあるし、神様からもらった力もあるけれど、やりたいことはスローライフ。世界を救うとか支配するとか、そんなことには興味はない。
田舎暮らしを満喫し、家族や友人らとそこそこ快適で平和な生活をおくることができれば十分というのだが、彼と出会った人々は誰しもこの15歳の少年のささやかな暮らしが、王侯貴族の贅沢に勝るとも劣らないことに愕然とするのだ……。
自分のスローライフを守るため、のんびり暮らすためにはやらなきゃいけないことはさっさと済ませようというチートな主人公の波瀾万丈な田舎生活。
確かに山で薪を作って税として納め、薬師として村の人々の役に立ち、互いに助け合いながらも自分たちの食べるものくらいは畑や狩りで手に入れる……というのは確かにスローライフな田舎暮らしかもしれないけれど、住まい屋が水洗トイレと浴場完備で、遙か遠方の帝国の王子と文通していて……と、ちょっとどこかおかしい。で、どこかおかしいくらいに思っていると、そこは叙述トリック的な部分もあって、あれやこれや主人公があたりまえとスルーしている異常な箇所が話が進展していくうちに周囲の人々のツッコミによって少しずつ明るみに出てきて、だんだん主人公の位置づけがおかしくなってくる話です。
そして神様によってチートな転生をした主人公はともかく、そんな事情はないはずの妹弟が彼以上にチートな才能を発揮し続けているあたりが恐怖なのです。
さて、書籍化にあたって、編集者の提案で主人公の年齢を10歳から15歳に引き上げたとのこと。確かに主人公が10歳ではおかしな箇所もあるので仕方が無いなあと思っていましたが、実際に読んでみると直しきれていなくて違和感が。
同じ「子供」でも、10歳と15歳では違います。
第2次性徴を経て性的関心を持ち始め、体力的にも大人並みになる15歳といえば、古代・中世に限らず、現代だって大人扱いです。世界的にも15歳から18歳が選挙権年齢の主流なんですね。
だから、少なくとも(冗談交じりとはいえ)女性冒険者が一緒にお風呂に誘うとか、「結構、男前よね……」「そうね。15歳なのが惜しいわ」などというやりとりとか、主人公が「オレは正真正銘、ガキだよ」と大人をいなすとか、女性の入浴にまったく興味がないとか、そういうくだりは直しておいた方が良かった。もしくは1巻が終わる時点までは10歳にしておくべきだった。
15歳、十分に大人だよね?
画竜点睛を欠く変更指示が残念でした。
【村人転生】【最強のスローライフ】【タカハシあん】【のちた紳】【Mノベルス】【異世界スローライフ・ファンタジー】【露天風呂】【蒸留酒】【バーベキュー】【水洗トイレ】