
自分が過去に戻っていることを受け入れた、士官候補生ダーヴィド・エルンネスト。
理想の国は悪夢の世界となった。
ヒルトリア社会主義連邦共和国を解体し、民族自決の名のもとに独立したクナーアン共和国であったが、20年経った今日では物価は高騰し、市民の生活は連邦時代より貧しく、国内での対立は激化。国家の破綻は誰の目にも明白であった。
万策尽き、己の命を絶ったはずのダーヴィド大統領は、気がつけば自分の周囲に若かりし頃の仲間がいることに気がついた。彼はまだヒルトリアが健在だった時代、士官学校時代だった自分に時を越えて舞い戻っていたのだ。
果たして歴史をやり直すことはできるのか……。
薄氷の上に五民族・五共和国が共存共栄する共産主義国家は護持できるのか? 歴史は変えられるのか変えるべきなのか主人公が迷いつつも、今できる最善のことをしていく姿が描かれます。
“共産主義”か“民族自決”かの間で揺れ動きながら、もう一度、仲間と共にヒルトリア連邦人民軍で栄達を重ねていくダーヴィド・エルンネストの物語。そもそも自分が仲間を失いながら戦い続けてきた20年の結果が、失敗だったと認めるところから始まるので、これがなかなか難しいのです。
関ヶ原の戦いや太平洋戦争で過去に戻ってやり直す話は多いけれど、これは1980年代の東欧をモデルにしたような共産主義の連邦国家を舞台に、崩壊した民族国家の大統領が20年前に戻って士官候補生からやり直すというニッチなテーマ。一種の架空戦記。
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