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付け焼き刃の覚え書き

 開設してからちょうど20年。はてなにお引っ越しです。https://postalmanase.hateblo.jp/

「戦う司書と恋する爆弾」 山形石雄

2007-10-30 | 本屋・図書館・愛書家
「あの人は、戦い、立ち向かうわたしに恋をした。あの人が戦ったように、わたしも戦わなくてはあの人はきっとわたしのことなんて愛さない」
 常笑いの魔女、シロン=ブーユコーニッシュの言葉。『滅びのマヤウェル』と同時に大賞を取ってデビューというので様子見で購入。

 人は死んで本になり、その生前を物語るという世界。書物はすべて図書館の管理となり、司書は神の代理人として絶大な権力と大きな戦闘力を兼ね備えている。
 その武装司書に対抗するかのように、本を採掘する街トアットに何人もの人間爆弾が送り込まれるのだが……。


 ちょっとバランスが悪いかな。司書と爆弾と世界のすべてを語ろうとして語り尽くせない感じ。もう少しテーマを絞った方が面白くなったかも。ランクとしてAに化ける可能性のあるBだけれど、まだB+の評価も出せないあたり。
 そういうわけで自分としては以後手を出していないけれど、世間的な評判は上々で続刊も続々。自分の周囲では中学生が喜んで読んでますね。

【戦う司書と恋する爆弾】【山形石雄】【武装司書】【人間爆弾】【秘密結社】
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「天のさだめを誰が知る」 D・R・ベンセン

2007-10-30 | 時間SF・次元・平行宇宙
「どこで見出そうとパターンはパターンだ。どんなに小さなものも無視するのはほめたことじゃない」
 統合員ヴァルミスの言葉。地図上に配置された軍隊も、血液中のタンパク質の配列も、どちらもパターンとして認識できるのだ。そこに乱れがあり、それを認識できるなら、適切に配置し直すこともできるはずだ。

 D.R.ベンスンの『天のさだめを誰が知る』はファーストコンタクトものであり、文明批評であり、歴史改変もの。

 4人の異星人の乗った宇宙船が事故で地球に漂着した。
 時は1908年。地球の科学は未成熟であり、宇宙船を修理するための技術水準にはとうてい達していなかった。
 彼らが故郷へ帰るには地球の科学技術を底上げするしかなく、科学技術の発達を促すためには戦争をおこさせるのが最短距離だと、傍迷惑にも宇宙人一行はイギリス国王エドワードやドイツ皇帝ウィルヘルムらのもとを訪問しては戦争を起こす必要性について説いて回るのだが……。


 宇宙人たちの旅に同行したH.G.ウェルズは、もし南北戦争で南軍が勝利していれば中西部の植民地化も大陸横断鉄道もなく、アメリカはせいぜいカナダやメキシコに告ぐ中小国になっていただろうと語りますが、ちょっとした小石1つを動かすことで歴史はどう変わっていくのだろうかという、歴史改変SFの王道テーマを、ときにはコミカルに、ときにはシニカルに描いた1冊。

【天のさだめを誰が知る】【D・R・ベンセン】【歴史改変】【戦争】【タイタニック】【エジソン】【「ただのランチなんてものはない」】
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「キッチン・コンフィデンシャル」 アンソニー・ボーデイン

2007-10-30 | 食・料理
 NYの有名シェフが自身の幼少時の話から料理人となった経緯、さらにはかけだし時代に点々とした店の話など、遠慮会釈なしに書き飛ばした料理界の楽屋裏。
 料理が美味いからといって調理している人間が素晴らしいわけではないとか、魚料理を頼んでいけない曜日のことやランチメニューの選択の仕方とか裏話の数々は、こんなことまで書いてしまったらよほど自信がなければこの先この業界ではやっていけないだろうと思わせるもの。テンポよく一気に読ませます。

 これを読むと、シェフやコックなんか人間のクズに違いないと思いこんでしまうし、もうレストランのランチとか食いたくなくなるという本。最終章でちょっと救われて、日本での1週間で「食いまくってるなあ」と笑うのだけれど。罵詈雑言、スラングを拾うにはちょうど良いかも。

【キッチン・コンフィデンシャル】【アンソニー・ボーデイン】【料理人の遍歴】【麻薬】【横流し】
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「サインをつかめ!」 長谷川昌史

2007-10-30 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「そこはいっちゃえよ」

 チェーンメールで届く[サイン]の指示に従うと願いがかなうという。それもメールはピンチのときに届くらしい。
 朝のテレビの占いと謎のチェーンメールを軸に展開する4人の男女高校生の1日。ミステリーっぽくしたメルヘン。

 一応、青春ミステリーっぽいけれど、ミステリーというにはツッコミどころが多いなあ。一見、緻密な計算と人間観察に裏付けられているように見えながら、ちょっと考えれば「そりゃあ、あまりに幸運な偶然に支えられていませんか。何か1つ狂ったら全部パアじゃん」ということばかり。まるでぴたごらすいっち。そもそも最後のアレはあんな風にはならんでしょ。
 ファンタジーにして、実は世界の動きすべてを計算できますとか未来日記を持ってますというなら納得するけど。(2023/11/15改稿)

【サインをつかめ!】【長谷川昌史】【桜井熾竜】【電撃文庫】【恋と謎とピンチが交差する青春ストーリー】【先読み】【予言】【イジメ】
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「チャーリーとチョコレート工場」 監督:ティム・バートン

2007-10-30 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 レイト・ショーでティム・バートン監督の『チャーリーとチョコレート工場』を見に行って、あまりに気に入ったのでDVDを買って、ついでにサントラもアマゾンで輸入盤を購入。

 スパイにレシピを盗まれたことから人間不信に陥り、チョコレート工場に閉じこもってしまった天才的チョコレート職人ウォンカ。しかし誰も働いていないはずなのに、彼の工場は日々チョコレートを出荷し、それは世界中で大ヒットしているのだ。彼はどうやってチョコレートを作っているのだろう?
 長年の沈黙を破り、ある日ウォンカは世界中に発表した。今、世界中で発売されている板チョコの中に5枚のゴールデン・チケットが封入されている。それを手に入れた子供と保護者を5組、工場へ招待すると!


 原作は児童文学のロングセラー。プロットはほとんどそのままに、ただ原作で言及されていない部分については監督らしさを十二分に発揮した解釈で映像化した作品。でも悪趣味で残酷で笑える上にパロディ満載なので、絶対に児童向けじゃないですね。
 サイケな画面で繰り広げられるウンパ・ルンパ族の踊りは、『水着の女王』のような黄金期ハリウッドのミュージカル映画やザ・フーやクイーンといった60~70年代のロックバンドのパロディと化しているし、他にも『2001年宇宙の旅』みたいに「なんかの映画でこんなシーンを見たことあるなあ」という箇所があちこちに。サントラが欲しくなるけど、これを聞いていると映像も欲しくなるんだろうなあ……。
 基本的に「家族がいちばん」という心温ま……るかなあ……でも映画として面白かったし、登場する老人たちが皆いい味を出しているので(クリストファー・リーよ、あんたはどこで営業してるんだ?)、損はなかったですよ。

「チャーリーとチョコレート工場」★★★★★

【貧乏】【残酷】【悪趣味】【ガキ】
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