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付け焼き刃の覚え書き

 開設してからちょうど20年。はてなにお引っ越しです。https://postalmanase.hateblo.jp/

「冬嵐記」 槐

2024-02-22 | 戦国転生・歴史改変
「人は誰もがいずれ死ぬ。わしもそなたも。だが、その死に様を選ぶことはできる」
 納得して死ねるように生きろと上総介は勝千代に語る。

 現代日本で教師だった記憶はある。交差点で事故に遭ったことも覚えている。だが、気がつけば今にも死にそうな幼子の身体になっていた。
 おそらくは戦国時代。どうやら今川の一族にあたる城主の嫡男らしいのだが、城主が戦場からなかなか戻って来られないのを良いことに、この勝千代という少年は父の側室や異母兄たちから虐待され続け、今にも死にそうなありさまだったのだ……。

 今、ウェブ連載でいちばん続きが楽しみなのが「福島勝千代一代記」。その第一部『冬嵐記』が書籍化しました。
 戦国転生ものですが、そもそもがチートなスキルもない虚弱な幼少の身。ちょっと見聞きしただけでここがいつの何処とか、あれは後にこんな活躍をする何某だと分かるような歴史知識もなく、火薬の製造法だとか未来の知識もありません。身近には主人公を信じて支援してくれるような人間どころか、あわよくば死んでしまえと虐待してくる親族や家人ばかりのヘルモード。
 そんな手探り状態から、知恵を巡らせ頭を使い、1つずつ手駒を集め、助けを求める策を練り、戦国の世の次期当主を巡る争いを生きのびようとします。この逆境に次ぐ逆境を乗り越えていく様がハラハラドキドキの展開なのです。
 書籍はウェブの第2章、国境地帯の雪山で死にかけるところまで。

【冬嵐記~福島勝千代一代記~】【槐】【上條ロロ】【モーニングスターブックス】【転生×戦国小説】【ヘルモード・サバイバルから始まる戦国成長物語】【小説家になろう
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「ルイ16世に転生してしまった俺はフランス革命を全力で阻止してアントワネットと末永くお幸せに暮らしたい1」 スカーレッドG

2024-02-14 | 戦国転生・歴史改変
 歴史シミュレーションゲームで遊んでいた30代独身男が、酒を飲みながらゲームで遊んで寝落ちしてしまう。その夢うつつの間に聞いた気がするのは、「フランス王国を救ってはくれないだろうか?」の声。
 そして、目が覚めると豪華絢爛なヴェルサイユ宮殿だった。彼はルイ・オーギュスト王太子と呼ばれるのだが、つまり後のルイ16世。このままだと20年弱で革命が起きて断頭台の露と消えることになるのだ。転生に混乱したものの、嫁いできたマリー・アントワネットややがて生まれる子供たちのためにも革命ルートは回避しないといけない。まだ、ぎりぎり間に合うかもしれないと、あの手この手でフランスを偉大な国家にするために立ち上がるのだが……。

 本人は決して無能じゃなかったのに、祖父の代からの財政赤字と対立貴族の妨害で何もなせなかったルイ16世に憑依してしまう歴史改変もの。ルイ16世の行動が北米大陸や極東にまでバタフライ効果を及ぼす歴史改変系として面白いし、話が進むにつれて文明が史実ルートとズレはじめ、スチームパンク・テイストが出てくるあたりも面白いし、アントワネットちゃんや子供たちも頑張るので、今のところ書籍もコミックも1巻止まりだけどちゃんと続刊が出て欲しいなあ。

【ルイ16世に転生してしまった俺はフランス革命を全力で阻止してアントワネットと末永くお幸せに暮らしたい1】【スカーレッドG】【いの】【サーガフォレスト】【小説家になろう】【トイレ】【入浴】【蒸気機関】【パウンドケーキ】【新聞記事】【ヨーゼフ・ハウザー】【ブルボンの改革】
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「北政所様の御化粧係《三》」 笹倉のり

2024-01-25 | 戦国転生・歴史改変
 徳川へと嫁いだ秀吉の妹、駿河御前こと旭姫が心を病んで帰洛した。ただでさえ秀吉の命で仲睦まじかった元の夫と別れさせられた上で家康の正室へと嫁がされ、なんとかその生活に慣れてきた頃に元夫の死を知らされたのだ。
 可能な限り万全な受け入れ体制を整えた与祢だったが、他の家族と違って農家の娘ままの地味な庶民気質が抜けなかった旭には、しっかり化粧して最先端のファッションに身を包んだ与祢に馴染むことができなかったのだ。そんな2人を大政所が取り結ぶ。天下人の母ながらどこにでも畑を開いて野良仕事を始める女傑ならではだ。
 そんな慌ただしい中に、さらに大型イベントが舞い込んでくる。帝の聚楽第への行幸がきまったのだが、帝を迎えるにあたって最先端の流行を揃えて豊臣の威光を参列者全員に見せつけようという秀吉の意向だ。当然、与祢が城の女性陣の御化粧全てを担当することになるのだが……。

 山内家の9歳の娘にすぎない与祢が、粧内侍こと豊臣豊子になるまで。もしくは旭の覚醒まで。与祢が大イベントのメイク総責任者として、新作コスメの開発から予算獲得、当日のスケジュール管理と山積みの難問を、前世の経験を活かして乗りきっていきます。

「美しさは女の剣であり、装いは女の鎧。それを研ぎ澄まし、磨き抜くために私は一切の妥協をいたしません」
 予算を使いすぎだという石田治部に対して、此度の行幸は戦なのだと一歩も引かない与祢。

 バトルものでどういう職のものがどんなスキルでどのように戦うか克明に描かれるように、シェーディングもハイライトもファウンデーションもコンシーラーもどのような素材のものを使い、相手の肌具合や衣装や赴く場所まで配慮して、どのように化粧が施されていくかが詳細に語られていきます。
 まさに彼女らの戦場なのです。

【北政所様の御化粧係《三》~戦国の世だって美容オタクは趣味に生きたいのです~】【笹倉のり】【Izumi】【TOブックス】【美容大好き能天気姫の本格歴史ファンタジー】【小説家になろう】【行幸メイク】【里帰り】【ゲイシャ・フェイシャル】【眼彩】【ウルトラマリン・バイオレット】
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「淡海乃海 水面が揺れる時 十五」 イスラーフィール

2023-12-30 | 戦国転生・歴史改変
「人を気遣うとは人に関心を持つ事なのだ。人に関心を持つ者だけが人を纏める力を持つ。そして人を纏められる者だけが大きくなれるのだ」
 児玉元良は相国が周囲の者に気遣えることは重要なことなのだと、今ひとつ理解していなかった息子・小次郎を叱責する。

 ついに朽木基綱は九州平定に動き出した。動かす兵は15万。龍造寺でさえ、その1/3も動員できないだろう。基綱はこれを最期に龍造寺も大友も潰す覚悟だ。
 彼は既にその目を日本統一の先に向けている。重税が続いて経済が崩壊しつつあり、国が倒れようとしている明が、交易でその銀を吸い上げている日本に矛先を向ける可能性。あるいは明が亡びるのに乗じて極東進出を画策する南蛮勢力が、その足がかりとして日本に攻め寄せる可能性。いずれも十分にあり得る話であった……。

 物語の中心は、九州平定で主に龍造寺との最終決戦と、それに加わった毛利家中の思惑から戦後始末まで。それから徳川のその後とか、初陣したい子供たちの話とか、あちこちで検討される婚姻外交のあれこれ等々。表紙の基綱像がまさに魔王みたいです。

【淡海乃海 水面が揺れる時 十五~三英傑に嫌われた不運な男、朽木基綱の逆襲】【幸せ】【イスラーフィール】【碧風羽】【TOブックス】【本格大河ドラマ】【戦国サバイバル小説】【小説家になろう】【日本水軍】
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「羽林、乱世を翔る4」 イスラーフィール

2023-09-26 | 戦国転生・歴史改変
 長尾弾正が関東攻めに10万の大軍を動員しようとしていた頃、帝の側近、頭中将となった飛鳥井基綱は叔父である長門守に織田の娘を娶らせようと動いていた。そして、織田信長はこの申し入れに即座に対応し、実妹の美乃を送り出すことを決めた。朽木と織田では家格が釣り合わぬと見るむきもあるが、すべて先々の動きを見据えた一手だ。京のすぐ隣に位置する朽木との関係を強化する意味が分からぬ信長ではない。
 一方、その頃、三好家では岸和田城の十河讃岐守が毒殺されるという事件が起きていた。これからの三好を支えることが期待されていた重臣である……。

 足利義輝の屈折具合が良い塩梅の4巻。表紙イラストの義輝は気の毒に、すっかり末期の悪人顔です。自らの弱さを知りつつ、認められない男の足掻きは破滅に向かって突き進みます。まあ、原因の大半は幕臣の無能ゆえなんでしょうが。三好と幕府、そして六角や畠山との対立が激化し、朝廷と京の安寧に基綱が奔走します。
 織田家との婚礼を経て、大戦の予兆まで。夫が仕事に忙しく、家庭を顧みる暇がないのに不満を抱いた妻の暴走とか、スゴく怖いですよね。なんとか踏みとどまれ! 軍略では無双と謳われ怖れられる基綱も家庭内をまとめるのに四苦八苦。

【異伝 淡海乃海~羽林、乱世を翔る~《四》】【選択】【織田と朽木】【イスラーフィール】【碧風羽】【TOブックス】【本格大河ドラマ】【戦国サバイバル小説】
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「RE:異世界から帰ったら江戸なのである3」 左高例

2023-09-17 | 戦国転生・歴史改変
「えー、宴もたけなわになりましたが、皆に発表があります。
 今からこの宿に押し込み強盗が30人ぐらいやってくるから、各々そやつらを捕まえるように」


 助屋に新たな店員が増えた。九子が女友達の鳥山石燕と共に熱海へ湯治向かうことにしたので、穴埋めを甚八丸の嫁の晴海と娘の小唄に頼んだのである。
 普通の旅なら熱海まで東海道で3日4日はかかるし、もともと病弱だった石燕を連れてとなるともっと日数はかかるはずなのだが、そこは異世界帰り。九子が石燕を背負って姿を消し、そのまま空を飛んでいけばアッという間だ。
 そんな九子たちは湯治場近くの神社で、覆面姿の侍集団に襲われている子供連れを助けることとなったのだが……。

 だいたい享保年間あたりの徳川吉宗の治世を舞台にした、今回のB級歴史オルタナティブ時代コメディは温泉旅行回。いろいろ歴史が変わりつつありますが、なんかしらみんな風呂に入りっぱなしなので入浴シーンの挿絵がやたらに多いのは必然です。
 阿部将翁とか玉菊太夫、子興あたりのオリジナルのレギュラーキャラがついに参戦。金さえ払えば何でも調達する某爺さんまで加わって温泉街が誕生します。そして徳さん大暴れ。吉原改革から海沿いの村のいあいあ言葉から河童の腕まで、なぜ湯治話がここまで暴走するかというドタバタは健在。外伝(現代編)ではフレデリカ王女まで参戦してます。
 ウェブ版を増補改訂した書籍版からさらに主人公をTSさせ、ヒモからヒモ落ちさせる方へのクラスチェンジして全面リブートしてのオンデマンド版ですが、厚さがほぼ四季報並です。

【RE:異世界から帰ったら江戸なのである~女天狗昔物語3~】【左高例】【ユウナラ】【カレヤマ文庫】【異世界ファンタジー×江戸時代×現代知識×女体化×エトセトラ】【B級歴史オルタナティブ】【江戸で現代知識と異世界魔法のスローライフ小説】【異世界転性】【ゾンビ】【サメ】【吉原】【天丼】【河童伝説】【炒り豆腐】【猪鍋】【梅酒】【金目鯛】【成敗!】【エリア88】

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「夢のまた夢」 森岡浩之

2023-06-18 | 戦国転生・歴史改変
 豊臣秀頼の奥小姓の1人である神照庚丸は、戦乱で親を失ったらしく出自不明。それゆえに町人風情と周囲から侮られることも多いが、本人はさして気にした風もない。養い親の僧侶・浄林の縁で大坂城に上がり、ただ秀頼に仕えるのみだ。しかし、時代は動き、徳川家は豊臣家失墜を図ってさまざまな圧力をかけてくる。
 そして、ついに豊臣に叛意ありと軍を動かす徳川家康に対し、庚丸ら豊臣勢は関ヶ原の戦いを生き延びた島左近を軍師に迎え、戦場へ向かうことになる……。

 豊臣秀吉の辞世の句の一節として知られる「夢のまた夢」という言葉をタイトルに、津本陽など何人もの作家がこのタイトルで歴史小説を書いているけど、これは「星界の紋章」の森岡浩之によるもの。ここ最近、徳間文庫では電脳空間を舞台にしたハードボイルドが続いていた森岡浩之ですが、今回は秀吉が今際の際に五大老の前で秀頼に遺言を遺したところから始まる歴史エンタテイメントです。
 イラストは、『サラマンダー殲滅』など梶尾真治の作品とか時代小説からSFアクションまで幅広く担当されてる方。アニメ・コミックを当たり前に受け入れて育った大人向けのエンタテイメント小説というなら、こういう絵で良いんですよ。こんな絵がいい。カッコいい。ピンポイントで脳裏に作品イメージをたたき込んでくれます。

【夢のまた夢~若武者の誕生~】【森岡浩之】【小林系】【徳間文庫】【SF界の鬼才が描く歴史時代エンタテインメント】【大坂の陣】【豊国祭礼】【君臣豊楽】
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「淡海乃海 水面が揺れる時 十四」 イスラーフィール

2023-06-17 | 戦国転生・歴史改変
「人それぞれに幸せの掴み方は違うのだ。周りが如何思うかなど……」
 織田信広は姪の藤姫に、お市のしたことは許せるものではないが、彼女は確かに幸せだったのだと語った。

 朝堂院の再建が始まった1585年。
 朽木による日本統一は目前で、空前の好景気に沸いていた。朽木基綱は関東平定を当主となった堅綱に任せつつ、通貨作りや産業育成を手配しながら明や琉球を経てスペインやポルトガルの動向にまで目を配っている。
 明は深刻な不景気のさなかにあって、民衆の不満は今にも爆発寸前なのだが、その原因は朽木による交易の拡大らしい。しかし、明と日本が争うことになれば、スペインなど西洋諸国からの介入は避けられない……。

 苦戦しがちな戦国改変ものの中でも順調に巻を重ねている『淡海乃海』は14巻。
 九州討伐前夜ということで朽木から龍造寺まで各陣営の動きを中心に語っています。あと明とか琉球の動きもちらほら。佐渡もきな臭くなってますね。大地震に菅公の祟りだと吹聴して朽木を貶めようとする天満宮に、にこにこ笑いながら「祟りと認めてやる」と根切りを突きつける主人公の黒さ。熟成もここに極まれり。
 今回も表紙はおっさんばかりですが、良い味が出てます。良いぞ!

【淡海乃海 水面が揺れる時 十四~三英傑に嫌われた不運な男、朽木基綱の逆襲】【幸せ】【イスラーフィール】【碧風羽】【TOブックス】【本格大河ドラマ】【戦国サバイバル小説】【小説家になろう】【カステラ】【造幣】【朝堂院再建】【天正大地震】
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「北政所様の御化粧係《二》」 笹倉のり

2023-04-06 | 戦国転生・歴史改変
「諦めたらそこで終わりなのですよ」
 寧々と島津との間に挟まって苦労が絶えない石田三成を、与祢は口先だけで応援してみた。

 与祢姫が世に送り出したおしろいの評判は太閤秀吉の耳にまで届いた。
 まだ八歳の女童と聞いてもなお関心を寄せる秀吉に、寧々は危機感を覚え、さらに警戒して予防線を張る必要を痛感するのだが、大奥のスキンケアとメイク担当として与祢が登城することは避けられなかった……。

 大阪城の奥勤めとなった与祢は、果たして生き延びることができるか?
 とりあえず、いちばんエラい人をなんとかしないとなんともならない大阪城の奥の話。そんなところにもちゃんと社交界と呼べるものはあり、日本各地から呼び集められた姫や女房たちが贅を競っているのでした。

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「淡海乃海 水面が揺れる時 十三」 イスラーフィール

2023-03-04 | 戦国転生・歴史改変
 基綱の九州平定は完了した。朝廷は基綱を征夷大将軍にと求めていたが、もう幕府は必要ない。彼はあえて息子・堅綱を征夷大将軍に就任させることで、その権威を否定して見せた。それは単なる役職のひとつにすぎないのだ。
 1584年、基綱は太政大臣に就任し、政の府として相国府を開いた。それが幕府と何が違うかというと、あくまで朝廷の一部門であるというところに意味がある。そして、彼は大帝国・明を想定した国家の舵取りを進め、対馬、琉球、朝鮮へと手を打っていくが……。

 基綱が独自路線に足を踏み入れていく13巻。
 まだ全国統一ならずという段階から外を見据えて布石を打っていく基綱と、彼の後を継ぐため奮闘する堅綱の物語。
 基綱が天下の頭領を継ぐならこれくらいはこなせと厳しい条件を堅綱に突きつけているように見えながら、実際は過保護なくらい十分な兵力と実力のある武将をつけているので、つまりは堅綱自身が自分のすべきことは単なる槍働きではなく人を使うこと、どっしり構えて采配を振るうことだけだと自覚しなくちゃいけないだけなのだ。
 そこがほぼ裸一貫から天下取りに挑んだ男と、その地盤を受け継いだ男と、求められる資質の差というやつなのですが、このあたり史実の徳川三代に通じるものがありますね。

【淡海乃海 水面が揺れる時 十三~三英傑に嫌われた不運な男、朽木基綱の逆襲】【イスラーフィール】【碧風羽】【TOブックス】【本格大河ドラマ】【戦国サバイバル小説】【小説家になろう】
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「RE:異世界から帰ったら江戸なのである2」 左高例

2023-02-08 | 戦国転生・歴史改変
「ではこうしよう。一両を受け取るか、己れの胸を揉むかの二択だ」
 だんだん男を惑わす悪女と化していく巨乳ロリ爺。

 蕎麦屋の用心棒として住み着いた九子だったが、彼女の呪符のおかげで光熱費も削減、未来知識の料理で商売も繁盛と順調だ。江戸の治安が悪いのか、押し込み強盗やら放火の被害に遭いそうにもなるけれど、そこは異世界帰りの元傭兵なのでちょちょいのちょいだ。
 そんなある日、九子は名刀を狙ったと思しき辻斬りの話を〈切り裂き〉同心こと中山影兵衛から聞かされ、たまには手伝ってもいいんだぞと黒い十手を手渡される……。

 今回もやけに風呂のシーンがイラスト付きで多い気がするRe:の2巻です。なんというか、「このシーンをイラストで見たい!」と思う箇所にはちゃんとイラストが入っている、かゆいところに手が届く編集です。
 難点は分厚いということ。せめてこの2/3くらいの厚さになると読むとき楽なんだけど、この厚さだと整体の予約をする必要がありそうです(重い本やファイルでよく手を壊すのよ)。

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「戦国自衛隊」 半村良

2023-02-04 | 戦国転生・歴史改変
「もし我々をここへ運んだ時間変異が、自然界の復元力で我々を帰還させるとしたら、それは非常に短い時間に起こされる筈だからだ」
 地震の余震のように揺り戻しがあるならとっくに起こっているはずだと考える伊庭義明は、もとの時代に戻れるか望み薄だと思っている。
 もっともまだ復元力が発動されるほど歴史への干渉が足りていないだけという意見もあるのだ。

 大演習のさなか、富山湾沿岸に集結していた自衛隊1個中隊が接岸していた哨戒艇もろともタイムスリップした。
 接触した現地の武将の言葉によれば、今は永禄三年だというが、話を聞くに自分たちの知る歴史と微妙に異なることから、よく似た別の世界線であろうということになった。なにしろ織田家も松平家も存在しないのだ。
 最上位の指揮官となった伊庭三尉は、春日山城の長尾景虎と協力体制を取ることにしたのだが……。

 伝奇SF小説作家の生みの親である半村良が書いた、架空戦記の先駆けともいうべき作品。1971年にSFマガジンに掲載、75年にハヤカワ文庫JAから武部本一郎のイラストで刊行されていますが、これは78年に出た角川文庫版で、さらに79年の映画公開に合わせて表紙にスチール写真が使われた改訂版ですが、中身のイラストは永井豪です。
 テクノロジーレベルが極端に違う勢力同士の戦いはどうなるのかという命題は、ポール・アンダースンの『天翔ける十字軍』 (1966年) でも語られていましたけど、内容紹介でいうところの「現代兵器を駆使する自衛隊が乱世に殴り込みをかける痛快無比な異色SF」って、今では全然「異色」じゃないですよね。異世界転移で現代知識と現代装備で無双してブイブイいわせる話で、イラストは有名マンガ家ですから、これも広義でのライトノベルということになります。
 ただ、今の視点で読むと戦闘描写も簡素で、かなりあっさり風味。オチも70年代仮想戦記SFの定番です。今なら10倍の巻数で語られそうですね。

【戦国自衛隊】【半村良】【永井豪】【角川文庫】【異色SF】【歴史の修復機能】
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「令和の化学者・鷹司耀子の帝都転生」 雨堤俊次

2022-11-24 | 戦国転生・歴史改変
「今この場にいるのは、全員、だれが何と言おうと『良いものは良い』って認められる奴らばかりだ。そいつらが『良い』って言うんだから、それでいいんだよ。だから、もう少し自信を持ってくれ。な? 特別顧問殿」
 まだ5歳にならない幼女だが、気がつけば鷹司耀子は特別顧問の椅子に座らされていた。

 令和の日本で高分子化学者として生きていた男が、気がつけば明治時代に転生していた。
 幸運なことに生まれた家は五摂家の1つである鷹司公爵家で、社会的影響力がかなり大きく、この明治の世に120年以上も未来のプラスチック化学を持ち込むにはこの上ないポジションだった。想定外だったのは、彼が転生したのは公爵令嬢であったことだが、性別の違いなどは高分子屋にとっては些末事である。
 かくして鷹司耀子はわずか4歳にして合成繊維「66ナイロン」の合成に成功。ここから日本の歴史が変わり始め、化学立国をめざして動き始めたのだが……。

 明治に転生した化学者が、まだ世界の何処にもない高分子化合物を生み出していく歴史改変もの。
 ウェブ連載時は「鷹は瑞穂の空を飛ぶ」というタイトルでテーマがわかりにくかったのを、シンプルにそのままのものに改題しました。元のタイトルの方が格調高くて好きだけれど、「空を飛ぶ」とあるので航空機メインの話と誤解されちゃうかな?



【令和の化学者・鷹司耀子の帝都転生~プラスチック素材で日本を救う】【鷹は瑞穂の空を飛ぶ】【雨堤俊次/コモンレール】【野上武志】【宝島社文庫】【ものづくり浪漫譚】【小説家になろう】【TS逆行転生】【脚気】【帝国人造繊維株式会社】【曲射歩兵砲】【ポリアミド系】
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「北政所様の御化粧係」 笹倉のり

2022-11-07 | 戦国転生・歴史改変
「人間な、すこぉし変わっとるくらいがちょうどええよ。その方がおもしろいしな」
 変わり者の山科のノ貫は、同じくらい変わり者の与祢姫に言う。

 大河ドラマなんかを夢うつつに聞いていた化粧品メーカーで開発してたアラサーOLが、目を覚ませば地震で倒壊した建物の下敷きになっていた。
 時は戦国。現代の美容マニアは、天正大地震で全壊した城で死んだはずの与祢姫として転生していたのだ……。

 地震で死んでいたはずのOLが、勝ち馬に乗り続けて戦国時代を生き抜いた山内家の姫に転生。前世の知識に親の財布とコネで人生はハイパーイージーモード!……のはずが、趣味に全力投球した結果の化粧品と美容術が受けて注目を浴びすぎ、このままではエロ親父に目を付けられてしまう……ということから、周囲が「主人公に太閤が目をつける前に何とかしろ」と右往左往することとなります。
 環境が良すぎてもダメという逆境からの逆転劇。前世知識も美容とその派生に絞った展開なのも特色。そして舞台は大奥へと移っていくことになります。

【北政所様の御化粧係~戦国の世だって美容オタクは趣味に生きたいのです~】【笹倉のり】【Izumi】【TOブックス】【美容大好きな能天気姫の本格歴史ファンタジー】【小説家になろう】【芳香蒸留水】【口紅】【蒸留酒】
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「信長伝」 佐藤大輔

2022-10-05 | 戦国転生・歴史改変
「この船では、奴等に勝てない」
 挫傷した小型交易船でさえ、九鬼嘉隆率いる鉄甲軍船は苦戦してしまった。自在に動ける南蛮の軍艦相手ではどうなったかと思うと自慢の艦隊も色褪せて見える。

 本能寺の変を生きのびた信長は着々と天下統一を進める。
 それが何を意味するかと言えば、東洋の島国に先進的な指導者に率いられ、世界でも有数の経済力に支えられた世界最強の野戦能力を持つ軍隊が存在していたということだ。後世の歴史家はこの時代、テューダー王朝のイングランドと日本において「中世が終わった」と評し、その後のこの二国による世界の支配を争う様を興味深く追う事になる……。

 佐藤大輔の新刊『信長伝』出ました! 何度も何度も復刊されては途中で終わり、それでも版元を変えてリブートがかかり、また中断の繰り返し。どれだけファンや編集者に愛されていたのか。どうして、これに応えられなかったの?
 最初は1992年の大陸書房の天山ブックス版『逆転・信長軍記』。高荷義之のイラストがカッコ良くて、個人的にはこの作品のベストカバー。信長が生き延びて活躍する話は多いけど、最初の概況で「信長は生き延びて日本を統一すると世界に打って出て、スペインやイギリスと戦い、世界帝国を打ち立てた」とオチまで書いた上で、そこまでの過程を戦訓や後世への影響などを交えて書いた異色作。「歴史シミュレーション・ノベル」としてシミュレーションゲームのリプレイっぽく、ユニット配置や兵力について記述されているのも特色。これは1巻にて大陸沈没。
 1993年にはKKベストセラーズのワニブックスから『覇王信長伝』が刊行。「佐藤大輔がまた信長ものを!」と思ったら、中身は『逆転・信長軍記』と一緒。ただし、こちらは3巻まで続きます。
 その5年後の1998年、今度は『信長征海伝』として中央公論社のCノベルスに登場。ここで巻頭の「概況」が削除され、代わりに長めの「緒言」と「転換点」が挿入され、歴史を未来から再検討するという形式が強化されますが、これは2巻で打ち止め。
 そのまま消えるかと思いきや、2004年に徳間文庫から『信長新記』としてリブート。1巻2巻は『信長征海伝』が底本と記載されていますが、3巻は征海伝は出てないので『覇王信長伝』が底本ということになってます。
 そして2022年。ついに中央公論新社から3冊合本のハードカバーとして刊行。このあたりの変遷は巻末の刊記にて明記されてますが、内容的には誤植を直して「葉桜」を収録した以外の加筆はたった2文字[未完]のみ。

 戦国日本が西欧勢力と戦うところまでいく話は、『本能寺から始める信長との天下統一』とか『銭の力で、戦国の世を駆け抜ける。』などちょこちょこあるのですが、物語としてはほとんど語られていないにも拘わらず、世界の歴史が動くダイナミックな展開ではこれがいちばんだと思ってます。

【信長伝】【佐藤大輔】【中央公論新社】【異貌の歴史長編(未完)】【逆転・信長軍記】【信長征海伝】【覇王信長伝】【信長新記】
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