グレートノーザン鉄道

アメリカのグレートノーザン鉄道の実物(歴史、資料等)と鉄道模型(HO:レイアウト、車両)に関するプログです。

「Wood's Book」翻訳:第7章 ディーゼル (その9)

2005年10月20日 | Wood's Book翻訳
 少し時間を戻して、1950年代中盤に、ディーゼルが電気機関車を一掃したことも驚くには当たらない。美しいYクラス、ずんぐりしたZクラス、巨大なWクラスは、この鉄道の新しい全体運用コンセプトによって、単純にステップを降りていった。これらの電気機関車を運用し続けていた唯一の理由は、8マイルの長さのカスケードトンネルであった。そこでは、ディーゼルは、自身の排気を絞らないと、前方の機関車からの積み重なった熱い排気に後ろに続く機関車が包まれてしまうため、このトンネルで重量列車を牽いて登ることはできなかった。たとえ機関車がこの状況に耐えられたとしても、乗員は有害な油煙に耐えることはできなかった。
 この問題の解決策は、GNの技術電気部門で策定された。もし何千立方フィートのフレッシュな空気が巨大なファンにより東側から強制的に送り込まれてトンネルを下り、西側のポータルから排出されれば、ディーゼルもトンネルを通過できることが確認され、決定された。冷却空気が非常に熱せられた排気をトンネルの天井から吹き飛ばし、後続の車両がオーバーヒートしたり、自動的に停止したりしないようにした。フレッシュな空気はまた、機関車が時速17マイルで安定的に上り坂を登っているときでも、先頭の機関車の運転室にいる乗務員が煙にまかれてしまうことを完全に防ぐことができた。試験運転時にも、その後の実際の運用でも、このベンチレーションシステムは良く働いた。ただし、1マイルくらい後方にいる後補機の乗務員は彼らに降り注ぐ排気煙の量にうんざりさせられていたが。カスケードトンネルの空気は30分できれいにできた。モンタナ州の新しい全長7マイルのフラットヘッドトンネルでは、カスケードトンネルの800馬力のファン2機の2倍の能力のファン2機がトンネルの入り口に設置され、18分程度でトンネル内の空気をきれいにすることができた。
 トンネルベンチレーションの出現によって、電気機関車は一晩で消えていった。それでも機関士たちは電気機関車を、特に、牽引することのできる重量の1.5倍の重量を引き止めることができる電気機関車の強力な回生ブレーキを懐かしがった。電気機関車が運用されていた日々には、回生ブレーキにより何千トンもの重量を2.2%下り勾配でも完全に制御可能だったので、機械ブレーキをずっと使うような機会はほとんど無かった。これと比較して、ディーゼルのダイナミックブレーキは、機関車が牽引可能な重量の半分しか引き止めることができなかった。これが、スティーヴンズ峠の下り勾配で補機が使用された理由のひとつであった。