鍛冶俊樹の軍事ジャーナル
(2022年11月25日号)
*岸田政権の敗北主義
3日前、政府の有識者会議が岸田総理に報告書を提出した。「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」は9月30日から4回にわたり佐々江賢一郎元外務次官を座長として会合を開き、このたび総理にその成果文書を手渡したのである。
安全保障環境の悪化により日本は防衛費を急増させなければならないが、7月に殉難で急死した安倍元総理はその財源を国債で賄うべきと主張していた。一方財務省は増税で賄うべきと主張しており、この有識者会議はその線に沿った議論を進めてきた。
もとより増税は国民の歓迎する所ではない。従って増税幅はなるべく低く抑えなければならないから、結果として防衛費の増額幅も低く抑えることになる。巨大な脅威が眼前に迫っているときに財務省は日本を守る経費を出し惜しんでいるのだ。
報告書には、防衛費の増額について「国債発行が前提となることがあってはならない」と故・安倍元総理の主張をあからさまに否定している。安倍元総理が生きていれば、絶対に書けなかった記述に、安倍殉難に欣喜雀躍している人たちの姿が透けて見える。
だが驚くべきは、それに続けて「戦前、多額の国債が発行され、終戦直後にインフレが生じ、その過程で国債を保有していた国民の資産が犠牲になったという重い事実があった。」と言う記述である。
戦前、多額の国債を発行して軍事費の増額を賄ったのは日中戦争においてである。だが終戦直後にインフレが生じたのは、米国との戦争に敗れたからであって、国債発行が直ちにインフレを生み出したわけではない。
「終戦直後」とは正確には「敗戦直後」だが、日本は中国に敗れたのではなく、米国に敗れたのであり、米国に占領されたのである。ところがこの記述では中国との戦争がインフレを生み出したことになる。
日本に米軍が駐留している現在、日本と米国が戦争になることはありえない。この状況で国債発行が将来インフレを生じ国民の資産が犠牲になるとすれば、それは日本が中国などの周辺国に占領されたときしかない。
つまりこの報告書は日本の敗戦を前提として書かれている。岸田政権は完全な敗北主義に陥っているのである
明日21時から約1時間、伽藍みーTUBEで軍事トークライヴをやります。本日のテーマや昨今の内外の情勢について、気楽に質問に応じます。下記をクリック!
https://www.youtube.com/@tube487/streams
(2022年11月25日号)
*岸田政権の敗北主義
3日前、政府の有識者会議が岸田総理に報告書を提出した。「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」は9月30日から4回にわたり佐々江賢一郎元外務次官を座長として会合を開き、このたび総理にその成果文書を手渡したのである。
安全保障環境の悪化により日本は防衛費を急増させなければならないが、7月に殉難で急死した安倍元総理はその財源を国債で賄うべきと主張していた。一方財務省は増税で賄うべきと主張しており、この有識者会議はその線に沿った議論を進めてきた。
もとより増税は国民の歓迎する所ではない。従って増税幅はなるべく低く抑えなければならないから、結果として防衛費の増額幅も低く抑えることになる。巨大な脅威が眼前に迫っているときに財務省は日本を守る経費を出し惜しんでいるのだ。
報告書には、防衛費の増額について「国債発行が前提となることがあってはならない」と故・安倍元総理の主張をあからさまに否定している。安倍元総理が生きていれば、絶対に書けなかった記述に、安倍殉難に欣喜雀躍している人たちの姿が透けて見える。
だが驚くべきは、それに続けて「戦前、多額の国債が発行され、終戦直後にインフレが生じ、その過程で国債を保有していた国民の資産が犠牲になったという重い事実があった。」と言う記述である。
戦前、多額の国債を発行して軍事費の増額を賄ったのは日中戦争においてである。だが終戦直後にインフレが生じたのは、米国との戦争に敗れたからであって、国債発行が直ちにインフレを生み出したわけではない。
「終戦直後」とは正確には「敗戦直後」だが、日本は中国に敗れたのではなく、米国に敗れたのであり、米国に占領されたのである。ところがこの記述では中国との戦争がインフレを生み出したことになる。
日本に米軍が駐留している現在、日本と米国が戦争になることはありえない。この状況で国債発行が将来インフレを生じ国民の資産が犠牲になるとすれば、それは日本が中国などの周辺国に占領されたときしかない。
つまりこの報告書は日本の敗戦を前提として書かれている。岸田政権は完全な敗北主義に陥っているのである
明日21時から約1時間、伽藍みーTUBEで軍事トークライヴをやります。本日のテーマや昨今の内外の情勢について、気楽に質問に応じます。下記をクリック!
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