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政治主導 国防費純増を
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【櫻井よし子 美しき勁き国へ】
フランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏は国家基本問題研究所創設15周年の記念講演で助言した。
「戦争が進行中の欧州から来た人間として、おこがましいかもしれませんが言わせてほしい。ウクライナ戦争で明らかになったことの一つは核兵器が安全を保障する武器だったということです。日本は強い軍を持つべきですが、人口的に、(十分な)若者を軍に投入することは難しい。ならば核武装すべきです。核武装こそ平和維持に必要だとの確信を私は深めています」
「敵基地攻撃」という表現さえ忌避するわが国への助言としては大胆だ。だが、ソ連崩壊をその15年前に予言したトッド氏の炯眼(けいがん)を 無視するのは歴史の展開に目をつぶるに等しい。
北朝鮮は11月第1週に大陸間弾道ミサイルを含めミサイルを30発以上撃った。ロシアはウクライナが放射性物質をまき散らす「汚い爆弾」を準備中だと非難するが、その裏でロシア自身が戦術核を使用する危険が見てとれる。中国の習近平国家主席は中国共産党大会で歴史に逆行する姿勢を打ち出した。常務委員会(国会)を側近で固め、中央軍事委員会ではあからさまな台湾侵攻人事を断行した。
「台湾侵攻は予想よりずっと早く武力によって行われる」とのブリンケン米国務長官の警告が現実味を帯びる。
いま、米国やアジアが日本に求めているのが、異次元の国防力強化策だ。日本だけでなく台湾を含むアジア諸国を中露北朝鮮の脅威からいかに守るか、明確な指針を示すのが政治の役割だ。強い国防力は強い経済なしには維持できない。日本経済の格段の成長が必要なゆえんだが、政府内で奇妙なことが起きている。
10月26日午後、自民党の萩生田光一政調会長に岸田文雄首相から電話があった。鈴木俊一財務相以下茶谷栄治財務次官らが官邸に来て、「総合経済対策は約25兆円になる。同件は政調会長にも逐一報告済みだ」と説明を受けたが、それは事実かという直々の問い合わせだった。その時間帯、萩生田氏はまさに総合経済対策を議論する党の政調全体会議を開き、必要な予算を議論していた最中で、25兆円の枠組みなど決まっていなかった。財務省が政治家の裏をかいて、まず首相に25兆円枠をのませ、自民党を押さえこもうとしたのであろう。
、萩生田氏は「政策の責任を取るのは官僚ではなく、選挙で選ばれたわれわれ政治家だ」と語る。官僚の優れた能力は政治家の示す方向に沿って政策実現のために生かすのが筋だ。政治家をだまして政策決定に走ることではないだろう。結局、同夜までに政治主導で4兆円積み上げ一般会計総額は29兆1000億円となった。財務省の独断専行は日本の命運を分ける国防政策においても際立っている。
国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を重視する財務省の政策でわが国経済は徐々に力を弱め、国際社会の劣位へと後退中だ、わが国はすでに、購買力平価の1人当たりGDP(国内総生産)で韓国に抜かれ、国防費でも同様に抜かれている。
いま、中国の脅威の前で経済力、軍事力を強化して国民と国を守り通さなければならないが、防衛力強化の財源をどこに求めるのか。それを論ずる財務省主導の有識者会議に欠けているのが切迫した事態への認識ではないか。結果として、国防力の真の強化につながる防衛費の純増よりも、防衛予算の水増し策が採用されようとしている。典型例が海上保安庁予算の防衛省予算への編入だ。
海保、すなわちコーストガードの予算は軍事費に組み込むのが北大西洋条約機構(NATO)基準だというが、欧米のコーストガードは有事に軍の指揮下で行動をともにする。海保には海上保安庁法25条があり、「海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むこと」を禁じられている。
自民党の小野寺五典安全保障調査会長が語る。
「昨年の春くらいまでの1年間、25条改正を目指して議論しました。しまし、公明党、自民党の国土交通関係議員、海保が一丸となって反対し、潰れました。いまは、25条改正にこだわって一歩も進まないより、海自と海保の連携を少しでも前に進めようとしています」
その一例が、中国のミサイル動向などを探る無人機の操作を海保の任務とし、情報を海自と共有する案だ。海自、さらに米軍との情報共有が実現する保証はまだないのだが、希望的憶測に基づいて海保予算2600億円余を防衛省予算に組み込む流れが、財務省主導でできつつある。
こんなことを見逃してよいはずはない。25条改正を葬った昨春と比べて、国際情勢は驚天動地の変化が生まれた。そのことを認識s、25条改正に再挑戦するのが本来の政治の役割だ。
「自衛隊には継戦能力がない」と安倍晋三元首相も岸田文雄首相も認めるのが日本だ。では、いかにしてわが国を守るのか。それを考える一つの材料がある。
米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が台湾をめぐって米中戦争が2026年に勃発するとの前提で、24通りの模擬戦争をした。このうち21例が完了し、今年12月に最終結果が発表される。重要な点は、ほとんどの戦いで米台側が勝利し、中国の台湾占領を防いだ。
しかし、米台の損耗は激しく、米国の国際社会における地位は長きにわたって損なわれるという結果もでた。当然、日本も同様の状況に陥るだろう。
教訓はどれほどの予算をつぎ込むとしても、その方が大戦争を戦うよりは、安全で安くつくということだ。戦争抑止のために強い軍事力を持つのだ。そのためにできることは全てするという文脈で、トッド氏が提唱する日本核保有の可能性についても論ずるべきだ。
財務省のプライマリーバランス重視は歴史の局面がどんでん返しになったいま、修正すべきだろう。どれほど赤字国債を積み上げようと、私たちは強い軍事力を持ち、地球規模の勢力争いを生きのびなければならない。岸田首相の双肩に日本の命運がかかっている。戦後秩序のkン菅氏を変えるために発奮してほしい。
政治主導 国防費純増を
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【櫻井よし子 美しき勁き国へ】
フランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏は国家基本問題研究所創設15周年の記念講演で助言した。
「戦争が進行中の欧州から来た人間として、おこがましいかもしれませんが言わせてほしい。ウクライナ戦争で明らかになったことの一つは核兵器が安全を保障する武器だったということです。日本は強い軍を持つべきですが、人口的に、(十分な)若者を軍に投入することは難しい。ならば核武装すべきです。核武装こそ平和維持に必要だとの確信を私は深めています」
「敵基地攻撃」という表現さえ忌避するわが国への助言としては大胆だ。だが、ソ連崩壊をその15年前に予言したトッド氏の炯眼(けいがん)を 無視するのは歴史の展開に目をつぶるに等しい。
北朝鮮は11月第1週に大陸間弾道ミサイルを含めミサイルを30発以上撃った。ロシアはウクライナが放射性物質をまき散らす「汚い爆弾」を準備中だと非難するが、その裏でロシア自身が戦術核を使用する危険が見てとれる。中国の習近平国家主席は中国共産党大会で歴史に逆行する姿勢を打ち出した。常務委員会(国会)を側近で固め、中央軍事委員会ではあからさまな台湾侵攻人事を断行した。
「台湾侵攻は予想よりずっと早く武力によって行われる」とのブリンケン米国務長官の警告が現実味を帯びる。
いま、米国やアジアが日本に求めているのが、異次元の国防力強化策だ。日本だけでなく台湾を含むアジア諸国を中露北朝鮮の脅威からいかに守るか、明確な指針を示すのが政治の役割だ。強い国防力は強い経済なしには維持できない。日本経済の格段の成長が必要なゆえんだが、政府内で奇妙なことが起きている。
10月26日午後、自民党の萩生田光一政調会長に岸田文雄首相から電話があった。鈴木俊一財務相以下茶谷栄治財務次官らが官邸に来て、「総合経済対策は約25兆円になる。同件は政調会長にも逐一報告済みだ」と説明を受けたが、それは事実かという直々の問い合わせだった。その時間帯、萩生田氏はまさに総合経済対策を議論する党の政調全体会議を開き、必要な予算を議論していた最中で、25兆円の枠組みなど決まっていなかった。財務省が政治家の裏をかいて、まず首相に25兆円枠をのませ、自民党を押さえこもうとしたのであろう。
、萩生田氏は「政策の責任を取るのは官僚ではなく、選挙で選ばれたわれわれ政治家だ」と語る。官僚の優れた能力は政治家の示す方向に沿って政策実現のために生かすのが筋だ。政治家をだまして政策決定に走ることではないだろう。結局、同夜までに政治主導で4兆円積み上げ一般会計総額は29兆1000億円となった。財務省の独断専行は日本の命運を分ける国防政策においても際立っている。
国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を重視する財務省の政策でわが国経済は徐々に力を弱め、国際社会の劣位へと後退中だ、わが国はすでに、購買力平価の1人当たりGDP(国内総生産)で韓国に抜かれ、国防費でも同様に抜かれている。
いま、中国の脅威の前で経済力、軍事力を強化して国民と国を守り通さなければならないが、防衛力強化の財源をどこに求めるのか。それを論ずる財務省主導の有識者会議に欠けているのが切迫した事態への認識ではないか。結果として、国防力の真の強化につながる防衛費の純増よりも、防衛予算の水増し策が採用されようとしている。典型例が海上保安庁予算の防衛省予算への編入だ。
海保、すなわちコーストガードの予算は軍事費に組み込むのが北大西洋条約機構(NATO)基準だというが、欧米のコーストガードは有事に軍の指揮下で行動をともにする。海保には海上保安庁法25条があり、「海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むこと」を禁じられている。
自民党の小野寺五典安全保障調査会長が語る。
「昨年の春くらいまでの1年間、25条改正を目指して議論しました。しまし、公明党、自民党の国土交通関係議員、海保が一丸となって反対し、潰れました。いまは、25条改正にこだわって一歩も進まないより、海自と海保の連携を少しでも前に進めようとしています」
その一例が、中国のミサイル動向などを探る無人機の操作を海保の任務とし、情報を海自と共有する案だ。海自、さらに米軍との情報共有が実現する保証はまだないのだが、希望的憶測に基づいて海保予算2600億円余を防衛省予算に組み込む流れが、財務省主導でできつつある。
こんなことを見逃してよいはずはない。25条改正を葬った昨春と比べて、国際情勢は驚天動地の変化が生まれた。そのことを認識s、25条改正に再挑戦するのが本来の政治の役割だ。
「自衛隊には継戦能力がない」と安倍晋三元首相も岸田文雄首相も認めるのが日本だ。では、いかにしてわが国を守るのか。それを考える一つの材料がある。
米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が台湾をめぐって米中戦争が2026年に勃発するとの前提で、24通りの模擬戦争をした。このうち21例が完了し、今年12月に最終結果が発表される。重要な点は、ほとんどの戦いで米台側が勝利し、中国の台湾占領を防いだ。
しかし、米台の損耗は激しく、米国の国際社会における地位は長きにわたって損なわれるという結果もでた。当然、日本も同様の状況に陥るだろう。
教訓はどれほどの予算をつぎ込むとしても、その方が大戦争を戦うよりは、安全で安くつくということだ。戦争抑止のために強い軍事力を持つのだ。そのためにできることは全てするという文脈で、トッド氏が提唱する日本核保有の可能性についても論ずるべきだ。
財務省のプライマリーバランス重視は歴史の局面がどんでん返しになったいま、修正すべきだろう。どれほど赤字国債を積み上げようと、私たちは強い軍事力を持ち、地球規模の勢力争いを生きのびなければならない。岸田首相の双肩に日本の命運がかかっている。戦後秩序のkン菅氏を変えるために発奮してほしい。