沖縄・台湾友の会

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日本再建 見えぬ大戦略     櫻井よし子

2023-08-12 09:07:25 | 日記
わたなべ りやうじらう のメイル・マガジン
                 頂門の一針 6591号 

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 日本再建 見えぬ大戦略
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        櫻井よし子 

 岸田官邸には不安を覚える。聞く力、有事に対応する政策断行内閣と言いながら、聞いているのか、断行しているのか。安倍晋三元首相の日本国立て直し路線を引き継ぐとしながら、中心軸を外しているのではないか。

 一例が安全保障だ。国家安全保障戦略など安保3文書は昨年12月、立派な形に整えられ、あとは実行あるのみだ。「最大の戦略的な挑戦」である中国に、わが国は総合的国力と同盟国、元同志国等との連携を以て対処する。そのために令和9年度までに防衛関連経費を国内総生産(GDP)比2%に引き上げる。

 7月末に公表された防衛白書は右の予算には他省の防衛関連予算も含まれるとした。9年度の防衛費は計約11兆円、約9兆円が純粋な防衛費、約2兆円は他省庁にまたがる分だ。

 3文書の具体化を政治の意思として示す防衛白書から国際情勢の速い動きに追い上げられる日本の姿が透視される。欧米を見ればGDP比2%も十分でない。軍事力の整備は至上命題だが経済の武器化が常態化し、経済安全保障の重要性が高まった。早急に第二の手を打つ必要がある。

 安全保障に関するわが国の絶対的遅れは法律を見れば明らかだ。行政法体系の基盤を成すのが事業法だ。元国家安瀬保障局長の北村滋氏は、政府が保安、育成等の観点から民間事業を規制するこの一連の法律群には安全保障的観点はほとんど存在しないと指摘する。電力、鉄道、水道などの重要インフラ施設の構築などの全て各事業法に基づいてなされるが、そこには他国では当然の安全保障の要素を加味する発想がない。

 昨年成立した経済安全保障推進法は基幹インフラの安全確保を含む4つの制度を創設した。これで安全保障の観点を欠く事業法の欠陥は一応補われるが、ここにも大きな穴がある。

 たとえば、事業法に定められていない重要な分野としてデータセンターである。いまやデータこそ有機体としての国家の基盤を成す。データセンターを破壊されれば、わが国は機能停止に陥るが現行の経済安保推進法では対処できないため、改正が必要であろう。

 米欧はいま対中投資の規制に乗り出そうとしている。投資ファンドの資金が中国に流入し、中国経済を支えることは日本の国益にもかなわない。この点からも経済安保推進法のさらなる強化を急ぐべきだ。

 対中戦略の枠組みをより強固にすべく指示を出し、大戦略を提示するのが首相の役割だが、首相にはそれができていない。まさか中国への遠慮ではあるまい。

 岸田文雄首相が重要閣僚として支えた安倍政権は国の守りを高める取り組みをひとつひとつ進めた。

 まず情報管理が可能な国にするために平成25年特定秘密保護法を成立させた。次に防衛力の運用幅を安全保障関連法で広げ、集団的自衛権の行使を可能にした。加えて全てが軍事につながる時代にあって、経済安全保障を進めるために国家安全保障局に経済班を作った。新しい制度を打ち立てる度に安倍政権は支持率を下げた。幾度かの死に物狂いの戦いを経て、いまわが国は少し普通の国に近づいている。

 だが、わが国の戦いは終わらないどころか、厳しさを増すばかりだ。地球上で最も高い密度でミサイルと核が集中する戦域にわが国は心細い形で存在する。必死の軍事力強化を続けてもここ数年は考えるだに厳しい脆弱(ゼイジャク)性の中にある。

 だからこそ、あらゆる面でわが国の強さを発揮できる国民、社会、国にしなければならない。北村滋氏は安倍氏がインテリジェンスブリーフに多くの時間を割き、各種政策の前提となる情勢認識の検討に充てたと述懐している。深い情勢分析は力の源泉である。

 中国の習近平体制は現在、混乱の極みにある。中国の発するメッセージの裏を読むことだ。彼らの強さも弱さもよく見て、常に対等に付き合うことだ。間違っても懇願してはならない。

 岸田首相にわが国の国柄を守る気があるのかについても疑問が拭いきれない。LGBT問題である。

 岸田首相は先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)に合わせてLGBTなど性的少数者への理解増進法案の国会提出を指示したが、法制化には進まないという考え方だった。

 それがあっという間に法制化された。G7のどの国にもLGBTに特化した権利保護の法律がない現状で、この問題について他国に比べて伝統的に寛容な日本が、なぜ法律を作らねばならなかったのか。米国も欧州も行くすぎた対策を反省し、後退している。

 日本各界にあからさまな圧力をかけた米国自身、共和党の反対で同種の法律制定は望めないにもかかわらず、エマニュエル駐日大使はなぜ、日本国に強要したのか。岸田首相はなぜ、日本の国柄や伝統を踏まえて説得し、法制化を回避しなかったのか。日本の国柄への理解が希薄であるから、わが国の実情を理解しない米国に反論できなかった、と考えざるを得ない。日本国民として失望の極みである。

 このようなことは国と国の関係としても強い違和感を抱く。圧力を受けて自国の文化や伝統にそぐわない法整備を強いられのは不本意極まる。とりわけ同盟国は運命共同体である。日米両国のために互いに前向きに進んでいける関係でなければならないのに今回の件は強い不安感を残した。岸田外交の汚点である。

 もうひとつの苦言がある。御子息の振る舞いに関するものだ。官邸での親戚の若者たちの数葉の写真は日本を代表すると言ってよい上流知識階級の家族の振る舞いとは思えないものだった。歴代の首相や閣僚を輩出したエリート一族の、これが実態かと、多くの国民を失望させたことに首相は気づいているだろうか。この失望は、岸田首相の大事にしている日本人としての価値観は何なのかという疑問にもつながっていったと、私は思う。


 欧州諸国のエリート層では、すでにトランプ再選は織り込み済み   「アメリカファースト」はナショナリズムとして排斥されてきたが

2023-08-12 09:06:40 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
    令和五年(2023)8月12日(土曜日)弐
        通巻第7859号 
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 欧州諸国のエリート層では、すでにトランプ再選は織り込み済み
  「アメリカファースト」はナショナリズムとして排斥されてきたが
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 EUやNATO加盟欧州諸国のエリート層のあいだでは、すでにトランプ再選は織り込み済みであり、好き嫌いは別として、彼らは早くも2025年1月就任以後、トランプ政権の外交への対応にどうすべきかで頭を悩ましているという。SNSの「ポリティコ」は、そうした分析をしている。

トランプ前大統領が欧州政治家にとって不人気だったのはNATOの軍事分担増大を迫り、ロシアとの対応に刷新を迫る姿勢、また左翼メディアが主力の欧州ではグローバリズムが優先され、トランプのいう「アメリカファースト」はナショナリズムとして排斥されてきたからだ。

トランプは予備選前の段階で早くも「ホワイトハウスを奪回したらウクライナ支援を劇的に削減する」としており、バイデンの周囲を囲んだ「戦争屋」とは異なって、EUとNATO諸国にロシア、ウクライナ停戦協定を主張するだろう。

パリ気候変動協定から離脱するだけでなく、イランを攻撃するイスラエルのシナリオは「狂っているわけではない」と激励するだろう。イラン核合意は再度、振り出しに戻すだろう。この点でも欧州はトランプを忌避したい。なぜならメッテルニヒ以来の欧州政治は「会議は踊る」路線だったのだから。

 トランプは国内のガス、化石燃料開発拡大と投資を増やし、民主党の過激な環境政策の多くを取り消し、リベラルな運動、不法移民を非難し続けるだろう。また中国とEUにさらなる関税を課すだろう。

ウクライナ戦争を通じてNATO参加国には極端な温度差が露呈したが、つぎにEU諸国は中国の「一帯一路」への評価をめぐって対応が割れた。しかし、西欧では例外だったイタリアとて、正式に中国との覚え書きを無効とした。

EUのなかには共通通貨「ユーロ」に加わらない国(チェコ、ハンガリー、ポーランド、北欧)、加わりたいが加盟できない国(トルコ)、もともと加盟しなかった国(英国)、なぜ加盟できたか判らない国(コソボ)など多彩だから、ドル基軸体制の維持を図るトランプは、その亀裂を政治的に利用するだろうし、米欧は通貨戦争でも対立が続くだろう。

こうして欧州はトランプの再登場に冷笑的である。けれども『トランプ劇場 2・0』が避けられないシナリオであるからには事前の準備が必要だと認識している。