糸崎公朗ブログ1・路上ネイチャー協会

写真家・糸崎公朗のブログです。『子供の科学』と『デジカメWatch』で連載をしています。

「日本のいきもの図鑑」

2007年06月26日 | 告知
2003年の発刊ですが、もっと早く買えばよかった・・・それだけ良い本で、他のポケット図鑑とは一線を画しています。
本の中で「本書の特徴」としても挙げられてますが、種別の解説が読み物として大変面白く、端から通して全部読みたくなってしまいます。
一般的な知識だけではなく、作者の実体験や主観もバンバン入ってます。
面白く読めるから覚えも早いわけで、これは何かと言うと「博物学」です。
そもそも生き物は面白いから興味が出るわけで、それを面白く紹介するのがいわば博物学です。

それに対し「生物学」は何かと言うと、「そんなふうに面白く説明してたら、物理学から蔑まれてしまう」と言うわけで、生物の特徴を物理学の単位のように項目化し、図鑑の解説ではその項目を淡々と並べるようになったのです。
おかげで生物学は一般には難しくてとっつきにくいものになり、「科学」としての体面を保つことが出来たわけです。
でも、近年はそれに対する批判がいろんなところから出ており、「日本いきもの図鑑」もそのひとつの回答になってるんじゃないかと思います。

著者の前園泰徳さんは若くてビックリですが、虫から鳥や獣、草花菌類まで全てに精通しており、しかも写真の腕も的確です。
こういうふうに、一人で何でもやっちゃうのが博物学の特徴でもあります。
いきものというのは異なる種同士の関係で成り立ってるわけですから、ある程度一人でいろんなものを見ないと分からないし、面白く説明することも出来ません。
それに対し、科学は学問を「科」に分けることから始まる分業制で、だから生物学も各専門分野に細分化され、それが「つまらない」の原因になってます。

博物学と生物学についてはこちらにもちょっと書きました。