ただの偶然なのですか

私のお気に入りと日々の感想  

映画「DOGVILLE(ドッグヴィル)」の感想 (DVD)

2008年06月28日 | 映画
ある山あいの、7,8軒の小さな村。
その村は街から遠く離れ、住民達は閉鎖的な小集団の中で生活しています。
ある日その村に、美しい女性がギャングから逃れてやってきます。
村人達はその女性をかくまうことを決め、女性は村人達のために労働することになりました。

これは、映画というよりも演劇に近い感じの作品です。
それぞれの家には壁が無く、床に描かれた白線によって仕切られているだけの空間で、人々の行動は常に丸見えの状態です。
しかし演劇と違う点は、人々の心の内がこと細かにナレーターによって語られ、心の壁までもがないことです。
神様はすべてお見通しだよ、って感じです。
時代も場所も定かではなく、この村はまるで世界の縮図のように、登場人物達の性格や行動パターンや境遇が類型的に示されています。
背景や音楽もなく、感情さえもなくしたような抑えた演技で、抽象的に人の心の動きだけを表していきます。

そこに描かれているのは、恐ろしいほどの人間の欲望と高慢さ。
村人達の欲望は女性の美しさによって増幅されてしまったものなのか、それとも人間の本質は醜くて汚いものなのか…。
人間は弱い立場の相手には、あそこまで高慢になれる生き物なのか…。
女性の寛容さが村人達を付け上がらせてしまったのか…。
権力を持つと人間は誰もが高慢になってしまうものなのか…。
いろんなことを考えさせられる作品ですが、人間の心の醜い面と3時間も向き合うのはキツイです。

そして、あのラスト・・・。
もっとも衝撃だったのは、自分があのラストに爽快感を感じたことです。
「そうだ、やっちまえ~」って、スッキリしました。
そんな自分の偽善者ぶりと高慢さをも暴かれて、吐き気を感じるほどの快感です。
ほんとうに恐い作品です。

監督は『ダンサー・イン・ザ・ダーク』と同じラース・フォン・トリアー監督。
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』は、私の中では「感動したけど後味の悪い映画」ベスト3に入る作品です。
この『DOGVILLE』も、人間の醜さと汚さの表現においては、救われない映画だと思います。
抽象的で客観的な表現方法の中には、監督の意図やメッセージがあるのでしょうが、それを読み取るのは私には難しいです。
受け取り方によっては危険な解釈もできそうで、その点でも恐い作品だと思いました。

それにしても、あの首輪と鎖は、悪趣味すぎてドン引きしました…。
もちろん、あれも何かを象徴しているのでしょうけれど…。

と、さんざんなことを書いてしまいましたが、こういう重い作品、私は好きですよ。私も、根が暗くて悲観主義なので。観てよかったと思いました。

この作品の感想文はスルーするつもりだったのですが、レポートのリクエストがあったので書いてみました。
でも、こんな映画の感想文を書かせるなんて、先生、キツイです(笑)・・・。