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映画「僕と妻の1778の物語」の感想

2011年01月20日 | 映画
この映画は、全体を通してファンタジーのような優しいトーンで描かれています。
SF作家の主人公はいつも夢見がちで、そんな主人公を母親のような愛で包んでいる優しい妻。
その妻が癌になってしまい、主人公は妻のために小説を毎日書くことを決意します。
夢見がちな主人公は、いつも別の次元から物事を見ているようなところがあって、現実の世界からちょっと乖離しているような感じがします。
でも、妻が死んでしまうかもしれないという現実と、その妻のために一日も休まずに小説を書き続けるという現実。
最初は少年のように子どもっぽかった主人公が、その二つの現実に向き合っていくうちに、その表情が次第に変化していきます。
その苦しみと切なさの中には愛情が満ち溢れていて、そんな主人公の姿を見ていて魂が震えました。
この映画には「パラレルワールド」という言葉が出てきます。
その言葉の意味については映画の中で主人公が語っていますが、私の中の感覚としては、ひとりひとりの個人の脳内にはそれぞれ別の宇宙があるような感覚です(私の個人的な解釈です)。
そして、この夫婦は小説という世界を共有することによって、心の中の世界を共有しているのだと思います。
「笑うと免疫力が上がる」と信じて、妻のために笑える小説を書くというのもメンタルな世界への働きかけでしょう。
誰かと心の中の世界を共有するのはほとんど不可能なことのように思えますが、二人の精神的な繋がりを見ていると、夫婦としてうらやましく思えました。
そして、この映画の中では青い空がとても印象的に映し出されています。
青い空を見ていると、すべてのパラレルワールドが空で繋がっているような感じがします。
空を見るといつも好きな人のことを想いながら心の中で語りかけている私は、この映画の青い空とファンタジーという物語が持つ力によって、たとえ会うことはできなくても、好きな人といつも繋がっていることを感じることができました。





4 コメント

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こんばんは (るみね)
2011-01-24 19:57:32
燈子さんこんばんは。
この映画の宣伝番組を見るにつけ、ああ、ひょっとして私にとってのドストライクな映画なのかなあと思ってましたが、やっぱりそうなんだなあと、燈子さんの記事を見て思いました。

いつもこっそり拝見しておりますが、今回は特に私の食指が激しく動揺するレビューで、悩みが増えてしまいました。別の宇宙、並行世界であったりと、きっと私も同じような感想を抱くのではないだろうかと漠然と思うのですが、私の語彙ではうまく表現できません。

ああ、すっごい見たい。
ひっそりこっそり一人で静かに見たい。

しかし相棒も見たい!(笑)
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こんばんは! (燈子)
2011-01-25 00:02:42
るみねさん、こんばんは!
久しぶりにコメントをいただけて、とても嬉しいです。
るみねさんのブログも私のお気に入りに登録してあるので、毎日のネットの散歩コースに入っています。
私のブログも月に1、2回しか更新していませんが、それでも読んでくださっているんですね、ありがとうございます。

この作品は、主人公の独特な感性と、そのSF小説の世界が映像になって現れたりするなど、ファンタジーのような不思議で温かい映画だと思います。
「泣ける映画」というのも確かで、私は涙と鼻水を拭くのにティッシュを20枚も使ってしまいましたが、悲しいだけの映画じゃなくて、いろいろな要素が詰まっている映画です。
観る人によっては、もしかしたら感性が合わない方もいるかもしれませんが、私のブログの感覚がわかる方なら、この映画の感覚もわかるような気がします。

でも「相棒」も人気がありますよね。私の周りにも熱心な相棒ファンが数人いますよ。





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結局 (るみね)
2011-02-09 05:31:44
結局、私、映画館で映画を見ないんですよね…。
何だか、申し訳ないような気がしてくるのですがしかし。

(1)面白そうな映画のCMや広告を見る
(2)燈子さんのレビューを読む
(3)見てきたような気分になって何か納得する

これはこれで、映画鑑賞のひとつの手法ではなかろうかと、ちょっと楽しんでいたりします(笑)

最近ではヤマトのレビューは非常に興味深かったです。アニメ世代から見ると、多分、新しい視点なのだろうなあと思いつつも、実は、単に無駄を排除した真実ただ一点のみを突き刺した名文だなあと、人知れず思ったりしてました。

しかし、私はほとんどブログを更新しない上に、たまに書いてもロクな文章を書けないのに、巡回していただいているとは非常に嬉しい限りです。放置しておくとSPAMが溜まってしまうので、コメント欄も消してしまいました。

自分が良い状況だと、自分で思う自分なりの面白い文章を書き出せるのですが、ここ数年は何だかダメな感じです。書くの好きだったハズなんだけどなあ。

生きてりゃこんな時代もあるのかなあと、茫漠と思ってたりします。
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結局・・・ (燈子)
2011-02-09 13:46:47
るみねさん、こんにちは。

映画とか小説とかって、結局は受け手の脳内で完結するものだと思うので、映画を見なくても完結してしまうのなら、それはそれで一つの楽しみ方かもしれませんね。

私は自分が書いた文章を名文だとは思いませんが、無駄を排除しているというのは当たっています。
実を言うと、書いているうちにいつも面倒くさくなってくるんです。
ほんとうは映画のことなんてどうでもよくて、感想という形をかりて自分の主観的な気分だけを書いている不親切なブログだと思います。

るみねさんには「自分で思う自分なりの面白い文章」という目指しているものがあるところが、私がるみねさんを尊敬しているところです。
私なんて、ただ書きたくなったら気分にまかせて書いているだけですから。
でも、考え過ぎないで、書かずにはいられない気持ちを表現した文章のほうが、読んでいて心を打たれることもあります。

生きていれば、いろんなことがありますよね。
いつも私は何でここに存在しているんだろう・・・って思ってしまいます。結局、この物語のシナリオを書いているのは私じゃない…私のせいじゃないよ・・・って、時代のせいとか神様のせいにしています。



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