ただの偶然なのですか

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ぼくは猫じゃない

2009年11月28日 | ぼくは猫じゃない(小説)
ぼくは猫じゃない。名前はある。IQは30だから猫より頭はいいとおもう。
でもママは僕を猫かわいがりするんだ。ぼくの顔がとてもかわいいからだとおもう。突然変異のニュータイプなので日本人離れした顔なんだ。
性格は犬っぽくて人なつこいので、道を歩いているときに知らない人に「こんにちは」って言ってみたりする。すると優しそうなおばさんは「あら~かわいいわね。何年生?」と言ってくれたりするんだ。でも、ぼくはその質問の意味がわからなくて「おっぱい」とか言っちゃうんだ。
いっしょにいるママは困った顔で笑うしかない。だって、たまたま信号待ちで隣になった人から「この子は見た目は小学校低学年なんですけど、ほんとうは中学生なんです」なんて話を聞かされたら、びっくりしちゃうかもしれないから。
でもママは、よその子に話しかけてくれる優しい人たちに心の中ではいつも感謝しているんだ。
ぼくは足し算ができないし文が読めないけど「勉強しなさい」なんて言われたことはないし、学力テストもない。
何になろうかなんて考えたこともないし、悩んだこともない。
猫みたいに、いるだけで周りの人たちが温かくなれたらいいとおもう。
でも、ママはときどきイライラしている。なんでも好きな物を食べられて、どこにでも自分の足で歩いて行けるのに、これ以上なにがほしいんだろう…。