ただの偶然なのですか

私のお気に入りと日々の感想  

小説「賢者はベンチで思索する」近藤史恵著の感想

2009年07月26日 | 読書
どうして、いつも物事を悪い方にばかり考えてしまうんだろう…。実際には何も起こっていないのに、悪いことばかり想像して、不安になってイライラして、こんな自分に疲れます…。

 
この小説はミステリーですが、ミステリー小説にありがちな殺人事件は起こりません。だからといって、ミステリーとして物足りないかといえば、その逆です。
主人公は専門学校を卒業して二年目のフリーターの女の子です。
主人公が抱えている将来への不安や家族との葛藤などは、たぶん誰もが感じている不安で、主人公の揺れ動く気持ちにとても共感できました。
起こる事件も身近にありそうなことで、犯罪とまではいえないかもしれないことや、犯罪なのに犯罪とは思いたくないことなどで、物事は見方によって事実が変わり、それを事件とするのは人の心なのかもしれないと思いました。

そして、主人公はある老人と出会い、その老人が事件を解決していきます。
その老人は正体が不明で、会う場所や見る人によって別人のように印象が変わる人物です。
しかし、その老人はいつも主人公に賢明な助言を与え、主人公はそんな老人の様子にとまどいながらも、心の底では信頼関係を築いていくのです。
相手がどんな人物なのか、それを決めるのも自分の心で、物事も人物も、そして不安も、すべての存在は心の中にあるのでしょうか。

たとえどんなに不安で心細くても、「だいじょうぶだよ」って、おじいさんに優しく頭を撫でられているような気持ちになる小説です。

ドラマ「任侠ヘルパー」(第1話、2話)の感想

2009年07月19日 | ドラマ
極道が老人介護施設でヘルパーをするという奇抜な設定に、コメディかしら?と思って見たら、意外とビターな内容でした。
まあ考えてみれば、扱っているのが老人介護という重いテーマなので、コミカルなテンションよりも、これくらいシビアなほうが、問題点を正面から提示しようという真面目さが感じられて好感がもてます。

草くんが主演なので、極道といえども多少は「いいひと」な雰囲気が垣間見えるのかなと思っていましたが、こちらも意外なほどにビターな演技で、笑顔を封印したかのような鋭い眼光の中に草くんの別の一面を見ることができてシビレました。

第1話では池内淳子さん、第2話では津川雅彦さんがゲスト出演なさっていましたが、お二人が演じる老人の姿がとても真に迫っていて、「老い」ということについてつくづく考えさせられました。
「老い」と「介護」という切実なテーマは、たとえドラマといえども問題がスッキリ解決するわけではありません。
でも、きれいごとでは済まされない介護現場の現実や親子間の問題に、草くん演じる極道が辛口の口調で本音を代弁してくれるので、いろいろ抱えている自分としてはスカッとする部分もありました。

他の出演者の方たちも魅力的で、特に子役の加藤清史郎くんがかわいいです。草くんにホッペをぐにゅってされるところとか、涙をぽろぽろ流すところとか、笑顔や話し方がかわいくてたまりません。
『ウルトラマンメビウス』のミライくんこと五十嵐隼士くんも出演していて、草くんとミライくんが共演する日が来るなんて、五十嵐くんの成長した姿が見られて私は母親気分で嬉しいです。

そして何よりも嬉しいのは、こうして頑張っている草くんの姿が見られることです。以前は、草くんの姿はいつでも見られると思って安心していたんです。でも、まさか草くんの姿を見られない日が来るなんて…。あたりまえのことですが、私と草くんの関係は一方的なものであることを思い知らされて愕然としました。草くんに会えなかったあの1ヶ月間は辛かったです。だから、これからは草くんが出ている番組は見逃したくないと思います。草くんの姿を見て声を聞いているだけで安心できるんです。

映画「エヴァンゲリヲン新劇場版:破」の感想

2009年07月01日 | 映画
も~!!!どんだけ待たせるのよ~!前作の公開から2年近く経ってるし~!大体、なんで今さら「エヴァンゲリオン」なのよ~!これって大人の都合なんじゃないの~?いろいろたくさん利権ありそうだし…
とか言いながら、公開3日目に観に行く私って…

やっぱり大画面で観るとエヴァの世界にどっぷり浸れていいです~。でも、戦闘シーンが多すぎて、迫力はありましたが、ちょっと詰め込み過ぎな感じがしました。私的には、もっと細かい心理描写とか内面の葛藤を見たかったです。

「エヴァンゲリオン」のテーマのひとつに、息子と父親の確執が描かれていますが、ここのところが女性である私には、いまひとつ理解できないところです。母親と娘との関係なら同性であるがゆえに同化してしまうことによる息苦しさとか葛藤が何となくわかるんですけど、父親と息子の関係ってこんなに隔たりがあって会話とか少ないものなんですか?父親は息子にとって超えなければいけない壁みたいなものであり、母親を巡ってはライバルなのかしら?

今回から登場した新キャラのメガネ娘ですが、わりと沈着冷静でさばさばした感じで、戦うときに言う独り言が他人事みたいな言い方なのに自らを鼓舞しているようで、かっこよくて萌えました。

エヴァンゲリオンってロボットと違って、生き物としての生々しさがあって、戦うときに流される血に痛みが感じられます。その痛みが搭乗者にもシンクロしていて、精神的にも侵食されていく感じが、自分の内面と向き合わされているようで重くて深いです。

ストーリーは相変わらず難しくて、「エヴァンゲリオン」を初めて観る人にはもっと説明が必要なんじゃないかなと思いますが、初めて観る人なんていないのかしら…。ストーリーに整合性を求めるよりも、「気分」を味わう作品のような気がします。でも今回、ずっと不思議に思っていた「何で、この時代にカセットテープを聞いてるの?」っていう疑問に対して説明があったのでよかったです。そしたら今度は、あのカセットテープに入っている曲は何なのかしら?ということが気になってきましたが…。

音楽といえば、「えっ、何でここでこの曲が流れるの?」っていう所が2ヶ所あるのですが、それが誰もが子どものころに歌ったことがあるというか、卒業式とか合唱コンクールで大人に「歌わされていた」曲なんです。それらの曲のキレイ過ぎる世界観が痛烈な皮肉に聞こえて、こんな嘘っぱちなキレイごとを子どもに押し付けるなんて、実は大人の世界は汚いくせに!って、責められているような気分になったんですけど、あの曲たちが使われている意味をどう解釈しましたか?

「エヴァンゲリオン」を観ると、大人であるはずの自分の内面が実は子どもであることを思い知らされます。私も誰かに手をつないでほしいのかなって…。
でも内面は子どもでも、私は今は育てる側にいるわけで、自分は大人だという自覚をもって子どもと向き合っていかなければと思いました。