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映画「レスラー」の感想

2009年06月16日 | 映画
正直に言うと、プロレスを見るのは好きではありません。
過激なパフォーマンス、それを見て興奮する観客、そして流血…。
でもリングの上で流される血よりも、痛いのは現実の世界で心から流れ出る血。
この映画を見るとプロレスには筋書きが打ち合わせされている部分もあるようですが、現実はプロレスよりも痛い。
特にプロレスラーにとって老いによる肉体の衰えは「引退」という過酷な現実を突きつけてきます。
そんなに頑張らなくてもいいのに…もっと肉体的に楽な仕事をして無茶はやめなよ…と思ってしまいますが、レスラーとしてしか生きられない主人公。
なんでそんなに不器用にしか生きられないんだと思いながらも、この映画の主人公の姿が、自分自身の老いや葛藤と重なって胸が苦しくなりました。
ストーリー自体は多分あなたが予想しているとおりで、誰にとっても過酷な「人生」が描かれていますが、とにかく身につまされるリアリティがあります。
主演のミッキー・ロークの演技が素晴らしく、演技というよりは完全に主人公と同化しています。
音楽も素晴らしくて、特にエンディングの歌がすべてを物語っていて涙があふれました。無理に盛り上げようとするようなBGMが無いのもよかったです。
強烈な生きざまが描かれているのに、静かで穏やかな感じがして、包み込むような優しい視点を感じました。
ひとりのレスラーのリアルな生きざまと、その崇高さに魂が揺さぶられました。