最初の1と2を読みました。
ノルウェイの森を読んだのが25年程前、それからも時々出す本をだいたい読んでますが、変わらず村上春樹ならではの雰囲気で、今回も私としては十分面白い内容です。
最近では電車の中以外で本を読むことはなかったのに、帰ってからも続きを読んだくらいですから、やはりストーリーへの引き込みは上手いですし、このあと連続で文庫化されるので次が出たらすぐに購入して読むつもりです。
もちろん村上春樹の小説が嫌いだったり、興味がない人なら、これもぜんぜんダメなのでしょうけど、実はさきほどこのレビューを書く前に、すでに刊行されている単行本のレビューが書かれているのをまとめて読んでみました。
その中にノルウェイの森など、これまでの村上春樹の小説は好きでも、この本は内容が酷い! なんて書かれているものが結構あって驚きました。
良いも悪いも村上ワールドは特に変わってないように思えるんですけどね。
オウム真理教をモデルにしたカルト教団の問題の扱いは、ベールに被われているものに潜入するような、ある意味、やじうまワイドショー的な部分を上手く突いているし、主人公の男女、天吾と青豆のちょっと貧しい暗い過去は、読んでて「砂の器」を思い起こさせてくれます。
また危なっかしい美少女「ふかえり」の無防備な天吾に対する接し方は、おたく少年マンガのお決まり人気パターン、さらに女性の方の青豆については、そこそこ美人でマーシャルアーツのインストラクターっていう、これまたかゆいところに手が届くような設定ですからベストセラー要素がちゃんと盛り込まれています。
そこに例の村上ワールド特有の羊男ならぬ異星人のようなリトルピープルや二つの月が浮かんでるところなどの存在が上手く全体をおとぎ話と言うか、ちょっと現実離れしたような不思議空間を生んで、進行しているストーリーをただ単にリアルに読ませない配慮がなされています。
主人公の女性、青豆をただ単に「殺し屋」とだけ認識させないのも、そんないろんな部分で包み込んでいるからでしょう。
毎度毎度の性描写も含め、本来はオタッキーでややマニアックな村上春樹の小説が、なぜかベストセラーになるのは、そんな要素の盛り込みと巧みに潜在意識に訴えている点じゃないかと思います。
でもそれらの要素を考えてみても男性受けはしてもあまり女性受けはしないような気はします。