中国語学習者のブログ

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雲郷の食べ物話《雲郷話食》を読む:【対訳】 火鍋

2011年01月15日 | 中国グルメ(美食)
 沈宏非の火鍋を以前紹介しましたが、どちらかと言うと、広東人から見た火鍋でした。もう一人、雲郷の描く火鍋を読んでみたいと思います。これは、本家北京の、それも古い時代の火鍋の話で、鍋料理だけでなく、鍋そのもののことも論じています。昔の北京を舞台にした映画の情景が思い浮かぶようです。

■ 到了冬天,過去在北京很喜歓吃火鍋子。火鍋子,江南人叫暖鍋,実際不如北京的叫法確当,因為它不単純是“暖”,而的確是生了火的。銅制的火鍋,中間是膛tang2火口,四周是容納菜肴的鍋槽,上面是圓洞的鍋蓋,正好套在“火口”上蓋住鍋子。鍋子中装好菜肴,把木炭放在炉子上点燃,従火口放進去,扇子扇旺炭火,木炭“劈劈啪啪pi1pi1pa1pa1”地,火苗従火口竄cuan4出来,鍋子中的菜肴便“呲呲zi1zi1”作響。焼開了,端上桌子,一掀鍋蓋……正像《老残游記》中写“一品鍋”一様,這是“怒髪衝冠的海参”,那是“酒色財気的鴨子”,大家便可狼吞虎咽地吃起来了。

・確当 que4dang4 適切である・膛 tang2 器などの中空になっているところ。胴。
・扇 shan1 [動詞](うちわで)あおぐ / 扇 shan4 [名詞]うちわ
・劈劈啪啪 pi1pi1pa1pa1 [擬声語](薪が燃える時の音)ぱちぱち
・火苗 huo3miao2 炎
・竄 cuan4 逃げる。走り回る。
・呲呲 zi1zi1 [擬声語](鍋の中の食べ物が勢いよく煮える音)じゅうじゅう
・開 kai1 沸騰する
・掀xian1 (蓋、覆いを上へ持ち上げるように)開ける
・怒髪衝冠 nu4fa4chong1guan1 [成語]怒髪冠を衝く。髪の毛が逆立つほどに激しく怒るさま。
・酒色財気 jiu3se4cai2qi4 昔はこれを人生の四戒とした。酒・女に溺れること、不正な金を得ること、ヒステリーと、良くない性格や癖のこと。但し、ここでは酒気を帯びたように赤みを帯びた家鴨の肉。
・狼吞虎咽 lang2tun1hu3yan4 [成語]食事を大急ぎでかきこむさま。

 冬になると、嘗ての北京では火鍋(北京の言い方では“火鍋子”)を食べることがたいへん好まれた。火鍋子、江南の人は“暖鍋”と呼んだが、実際は北京の呼び方ほど適切ではない。なぜなら単に「暖かい」のではなく、確かに火を点けるからである。銅でできた鍋は、中間が中空になった火口であり、その周りが具材を入れる槽になっていて、上には丸い穴の開いた鍋蓋であり、ちょうど“火口”を覆って鍋に蓋をしている。鍋の中に具材を入れ、木炭をコンロで火を付け、火口から中に入れ、扇子であおげば、木炭がぱちぱちといって炎が火口から上り、鍋の中の具材はじゅうじゅうと音をたてる。煮えたら、鍋を両手で奉げ持ってテーブルに出し、鍋の蓋を開ければ……。《老残游記》に書かれた“一品鍋”と同様、これは「怒髪冠を衝くかのように角を立てたナマコ」、あれは「酒気を帯びたように赤みを帯びた家鴨の肉」と、皆が争ってがつがつ食べ始めたことだろう。

■ 火鍋是一種非常方便而実用的炊具,我不知道早発明者是誰?徐凌霄《旧都百話》記道:

 火鍋はたいへん便利で実用的な炊事器具である。嘗てこれを発明したのは誰なのか、私は知らない。徐凌霄《旧都百話》に次のような記載がある。

■ 鍋子之類甚多,有菊花鍋子,為肉類与菜蔬及花瓣之大雑烩hui4,整桌酒席,在秋冬間視為要素。及羊肉鍋子,為歳寒時最普通之美味,須于羊肉館食之。此等吃法,乃北方游牧遺風,加以研究進化,而成為特別風味也。

・花瓣 hua1ban4 花弁。花びら
・雑烩 za2hui4 いろいろな材料をいっしょに煮たもの。寄せ鍋。
・整桌酒席 “桌”は酒席や酒席のテーブル数を数える量詞。ここでは酒席の料理全体。
・視為要素 “要素”の前に“第一”、“関鍵”が省略されており、“視為関鍵要素”ということではないかと思います。

 鍋料理の種類はたいへん多い。“菊花鍋子”というのがあり、これは肉類と野菜、菊の花びらの寄せ鍋だが、宴会のコース料理の中でも、秋から冬にかけてはメイン料理と見做される。羊の鍋は、寒い季節に美味しくなり、これは羊肉館で食べるものである。こうした食べ方は、北方遊牧民の遺風であり、それが研究され進化し、特別な風味となったのである。

■ 徐氏的話似乎有些道理,総之是在北方寒冷的地方創造出来的東西。南方有暖鍋歴史并不長,光緒時厳緇在 《憶京都詞》注中説到“火鍋”時,還説“南中無此風味也”。可見那時還只是北京,或者説北方時興吃火鍋。

 徐氏の話は道理があるようで、要は北方の寒冷な地方で生まれたものである。南方の“暖鍋”の歴史はそれほど長くなく、清の光緒帝の時代、厳緇が《憶京都詞》の注で“火鍋”に言及した際、「南方にはこの風味は無い」と言っている。そこから、当時はまだ北京、或いは北方でのみ火鍋が盛んに食べられていたことが分かる。

■ 在北京制造火鍋的銅舗,過去集中在打磨廠一帯,另外還有山西大同的紫銅鍋,都是有名的。紫銅火鍋是用紫銅制成坯子打造,鍋内再挂一層錫。外面是紫銅色,里面是銀色。鍋子大小不一様,分成几等。生木炭火的膛也不一様。一般火鍋,炉膛較小,鍋槽較大,可以多放菜,火不須太旺。専作涮shuan4鍋用的鍋子,則炉膛特大,可以焼旺火,湯不停地翻滚gun3,能保証生肉一燙即熟。但鍋槽較小,因為只放湯,不放菜,也不需要大鍋槽。

・打磨廠 北京市内の通りの名前。前門外正陽橋の南方の東側、東西1.5Kmの通りで、明朝初期、北京の西方の房山で産出する石材をここで研磨する職人が集まったことからこの名がある。
・紫銅 zi3tong2 純度の高い銅。電線銅。“紅銅”ともいい、赤みがかった色の銅。
・坯子 pi1zi 白地。まだ焼いていないれんが。半製品

 北京で火鍋用の鍋を作る銅製品の店は、嘗ては打磨廠一帯に集中していた。その他、山西省大同の紫銅鍋も有名である。紫銅火鍋は銅製の板から作られ、鍋の内側には錫が塗られている。外側は赤銅色で、内側は銀色である。鍋の大きさは様々で、いくつかの等級に分かれる。木炭の火を起こす胴も同じではない。一般の火鍋は、炉の胴が小さく、鍋の槽が大きいので、たくさん具材を入れることができ、火力はあまり強くする必要はない。しゃぶしゃぶ専用の鍋は、炉の胴が特大で、火力を強くし、スープを絶えず煮えたぎらせておけるので、生の肉を加熱するとたちまち火が通る。しかし鍋の槽は小さい。というのも、中に具材を入れないので、大きな鍋は必要ないからである。

■ 《老残游記》中所説的“一品鍋”,那又是另一種東西。那是一個像小面盤大小的帯蓋子的平底銅鍋,下面有一鏤空花圓圈,架住這個鍋,圈中放一敞口大杯,内放高粱酒,点燃焼這個鍋,像酒精灯一様,用以保温。這是清代接官筵宴上必要的。“一品”,取其口彩,所謂“官高一品”,另外取其方便。当時的官,不管多大,也無汽車、飛机可坐,長途旅行,一天也只能走百八十里路,途中要吃飯,在荒村野店,地方官迎接,准備供応,預先焼好,臨時防止菜冷,所以用酒灯保温。一品鍋照例有全鴨、蛋、海参、肚子等,実際等于大鍋葷什錦耳。

・鏤 lou4 彫刻する
・圓圈 yuan2quan1 丸。輪
・敞 chang3 広げる。開ける
・口彩 kou3cai3 縁起の良いことば

 《老残游記》の中で言う“一品鍋”も、また別のものである。それは洗面器くらいの大きさの蓋付きの平底の銅鍋で、下の方は輪の模様がくり抜かれていて、この鍋を台に固定すると、輪の中に口の開いたコップを入れ、その中には高粱酒を入れ、火を点けてこの鍋を温めると、アルコールランプのように、保温することができるのである。これは清代に役人を接待する宴会では必需品であった。“一品”は語呂合わせでは「官位が“一品”高い」という意味だが、もう一つ大事なのは便利だということである。当時の役人は、どんなに位が上でも、自動車や飛行機に乗ることはできなかったので、遠方に行く時は、一日に4、50キロしか進めず、途中で食事をしようとすると、人里離れた村の粗末な宿屋で、地方官が出迎え、食事を準備するのだが、事前に煮たきを済ませ、いつでも料理が冷めないように、アルコールランプで保温しておくのである。一品鍋の中身は通常、アヒル、たまご、なまこ、豚の胃袋などで、実のところは生臭入りの寄せ鍋に過ぎない。

■ 几十年前,北京有一種舗子,叫做“盒子舗”,実際就相当于江南的鹵味店、広州的焼臘店。這是売醤肉、清醤肉、小肚、白肚、鶏、肉丸子等熟肉的熟肉舗。因為把這些切好装在一些花格食盒里,像“什錦拼盤”様売給人家,所以叫“盒子舗”。這些熟食統名之曰“盒子菜”。這種舗子,秋冬之際,便準備很多只銅火鍋,一一装好,可以根据需要,一只、両只,甚至更多,送到顧客中。送時還帯好“白湯”極為方便。家中偶然来個客人,你去買了,小伙子給你送来,点燃木炭,把火煽旺。鍋子開了,端到桌上,説声“回見”走了,明天再来收家伙,你好意思不給両個賞銭嗎?

・盒子 he2zi “盒子”は本来は小型の蓋付きの箱のことだが、ここでは“盒子菜”のこと。“盒子菜”とは、酒のさかななどにするいろいろな種類のおかずの折詰で、木製の丸い箱に詰め合わせて売ったことからこの名がある。
・鹵味 lu3wei4 醤油で煮しめた料理・焼臘 shao1la4 ローストした肉と燻製の肉
・醤肉 “醤牛肉”のことか。牛肉の醤油煮で、薄切りにして前菜にする。
・清醤肉 以下の段落で“也叫"炉肉"”と書いてあるので、“炉肉”lu2rou4のことであることが分かる。大きなオーブンに吊るしてローストにした焼き豚である。
・小肚儿 xiao3du3r ブタ肉の腸詰。薄く切って前菜にする。
・白肚 bai2du3 ブタの胃袋を下処理して醤油や香菜と煮込んだ浙江料理。/“肚”は胃袋の場合発音がdu3と3声になるので注意。
・熟肉 shu2rou4 調理したり高温処理した肉の加工品
・白湯 bai2tang1 ブタ肉を水炊きして“白肉”を作る時の煮出し汁を“白湯”という。

 数十年前、北京に“盒子舗”と呼ばれる仕出し屋があったが、これは江南の“鹵味店”、広州の“焼臘店”に相当する。ここで売ったのは牛肉の醤油煮、焼き豚、腸詰、豚の胃袋、鶏の燻製、肉団子といった肉の加工食品である。これらをきれいに切って格子模様の柄の蓋付きの箱に詰め、「前菜の盛り合わせ」のようにして売ったので、“盒子舗”と言うのである。これらの肉の加工品を総称して“盒子菜”と言う。これらの店では、秋から冬にかけ、たくさんの銅製の火鍋を用意し、一つ一つ、中に具材を入れ、注文があると、一個、二個、時にはもっとたくさんの数の鍋を、客の家に配達するのである。配達の時、同時に豚の煮出し汁のスープも付けて届けたので、たいへん便利であった。家で急な客があると、注文すれば、店の小僧が鍋を届けに来て、木炭に火を着け、火が燃えたち、鍋が煮えると、両手で抱えてテーブルまで運び、「毎度あり!」と言って帰って行く。翌日にまたやって来て鍋を引き取って行く。これなら気持ちよく、小僧に銅銭二枚もチップをやろうという気になろうというものだ。

■ 一般鍋子里装的是肉丸子、龍口細粉、酸白菜墊底;上面鋪白肉,叫“白肉鍋”; 鋪白鶏、白肚片、白肉叫“三白鍋子”;清醤肉(也叫"炉肉")、魚、猪腰花等曰“什錦鍋子”;海参、炉肉、鶏蛋等叫“三鮮鍋子”。郷間或寺廟中,用油豆腐、粉条、蘿卜条装的素鍋子,是最清淡中吃的。至于“菊花鍋子”,便是把白菊花瓣加入到“三鮮鍋子”的湯中。那更是清香絶倫,成為高級的飲食肴饌了。

・白肉 水炊きした豚肉
・腰花 ブタや羊の腎臓(“腰子”という)に細かく隠し包丁を入れたもの。調理して熱を加えると、花が開いたようになることから。
・油豆腐 小口切りした豆腐を油で揚げたもの。厚揚げ。ただし一般に油豆腐にする豆腐は2~3センチ四方に切ったものを使い、厚揚げのように切らずにそのまま使う。
・絶倫 jue2lun2
・肴饌 yao2zhuan4 ごちそう

 一般に鍋の中に入れるのは肉団子、“龍口”ブランドの春雨、白菜の浅漬けを底に敷く。その上に茹でた豚肉を入れたものを、“白肉鍋”と呼ぶ。水炊きした鶏、豚の胃袋、豚肉を入れたものを“三白鍋子”と呼ぶ。焼き豚、魚の燻製、豚の腎臓などが入ったものを“什錦鍋子”と呼ぶ。なまこ、焼き豚、卵などが入ったものを“三鮮鍋子”と呼ぶ。田舎やお寺では、厚揚げ豆腐、春雨、大根の細切りを入れた精進鍋が、最もあっさりとした味で食べられる。“菊花鍋子”は、白菊の花びらを“三鮮鍋子”のスープに入れたものである。そうすることで一層香りがすばらしくなり、高級なごちそうとなる。

■ 清前因居士《日下新謳》有詩云:
  客至干花対半斤,火鍋一品備肥葷,随常款待無多費,恰够gou4京銭三百文。

 清の前因居士は《日下新謳》の中で、次のような詩を詠んだ。

 客が来たので、白酒の辛口と花の香りのする甘口を半斤ずつ、鍋は豚のバラ肉入りを用意した。日常の接待なので出費もたいしたことなく、北京の銭で300文も出せば十分である。

■ 后面注道:沽焼酒,用干、花両対,即醇淡相攙chan1也。火鍋之価不一,倹者二百四十文,是則京銭三百,即敷款客之資矣。這是乾、嘉時的価格。在三十年代中,便宜的鍋子六角、八角,貴的也不過一元多銭,如一元五六角銭,便可叫只三鮮鍋子。和今天比,那真不可同日而語了。

・沽 gu1 買う
・干、花両対 “干”はドライ、つまり辛口。“花”はキンモクセイなどの香りのつけた酒のことではないだろうか。“竹叶青酒”のようなものもあり、氷砂糖で甘口になっていると思う。
・攙chan1 混ぜる
・不可同日而語了 [成語]同日には語れない。比べものにならない

 後に注があり、こう言っている。白酒を買ってきて、辛口のものと花の香りのする甘口を両方飲むと、芳醇さと淡白さが混じり合う。火鍋の価格は様々で、倹約するなら240文、北京の銭で300に相当し、すなわち客をもてなす費用である。これは乾隆、嘉慶時代の価格である。1930年代には、安い鍋は6角、8角で、高いものでも1元あまりであった。1.5~1.6元もするのは、三鮮鍋子であった。今日と比べると、同日に語ることはできない。


【出典】雲郷《雲郷話食》河北教育出版社 2004年11月

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