今週は、久々に中国・蘇州に出張に来ている。今日は元宵節、旧暦の正月十五日であり、家族で元宵という米の粉で作った団子を食べ、また様々な飾り提灯を眺めに外に繰り出す日である。提灯とともに、燈謎というなぞなぞが掲げられ、それを当てると、いろいろ景品がもらえる、子供たちのお楽しみがついている。
さて、今年は虎年ということで、中国でも景気の一層の飛躍が期待されている。人民日報に、中国の虎文化という題の小文が載っていた。中国人と虎にまつわる雑学として、おもしろい内容なので、紹介したいと思う。
人民日報海外版:中国虎文化
2010年02月19日 来源:人民網-《人民日報海外版》
■ 中華虎文化源遠流長。自古以来,人們就習慣用“生龍活虎”、“龍騰虎躍”、“虎背熊腰”、“藏龍卧虎”、“如虎添翼”、“虎頭虎脳”、“将門虎子”、“虎老雄心在”、“虎虎有生气”等詞語,賛揚生活中的人物和事物,表達中華民族的精神面貌、民族性格和民族自我意識,逐漸形成了独特的虎文化。
中華の虎文化の起源は、はるか昔まで遡る。太古より、人々は“生龍活虎”、“龍騰虎躍”、“虎背熊腰”、“藏龍卧虎”、“如虎添翼”、“虎頭虎脳”、“将門虎子”、“虎老雄心在”、“虎虎有生气”等のことばを習慣的に用い、生活の中の人物や事物を賞賛し、中華民族の精神、民族性、民族としての自我の意識を表現し、次第に独特な虎文化を形成した。
・源遠流長 yuan2yuan3liu2chang2 [成語]源が遠ければ流れも長くなる。歴史や伝統が長いたとえ。
ここで、“虎”を使った成語、慣用句がたくさん出てきたので、それぞれの意味を下記にまとめておく。
・生龍活虎 sheng1long2huo2hu3 [成語]生気に満ち活気にあふれているさま
・龍騰虎躍 long2teng2hu3yue4 [成語]龍が飛び立ち虎が躍り上がる。沸き返るような活気に満ちていることの形容
・虎背熊腰 hu3bei4xiong2yao1 [成語]虎の背に熊の腰。体格の逞しいことの形容。
・藏龍卧虎 cang2long2wo4hu3 [成語]隠れた龍に伏せた虎。まだ世に見出されていない有能な人物、或いはその居場所を形容する。
・如虎添翼 ru2hu3tian1yi4 [成語]虎に翼を添えたようだ。強いものが一層強くなるたとえ。鬼に金棒。
・虎頭虎脳 hu3tou2hu3nao3 [成語]丈夫で元気なことのたとえ。(男の子について言うことが多い)
・将門虎子 jiang1men2hu3zi3 ①“将門”は代々将軍を出す、武勇の誉れ高い家柄の意味。“将門虎子”で親や祖先が才能があると、子や子孫も技量が非凡であることを言う。或いは、子や子孫が家柄を汚さないこと。②家庭環境は子供の成長に影響を与えるので、特にスポーツ選手で親子二代ですばらしい成績を残すことを喩えて“将門虎子”という。“将門出虎子”ともいう。
・虎老雄心在 hu3lao3xiong2xin1zai4“虎痩雄心在”とも言う。肉体が老い衰えても、立ち向かいチャレンジする気持ちを持ち続けていること。
・虎虎有生气 hu3hu3you3sheng1qi4 勇ましくて元気いっぱいである。/虎虎:威勢のあるさま。
■ 虎,很早就成为中国的図騰之一。1987年河南省濮陽西水坡一帯発掘出土了一対蚌塑龍虎,距今大约6000年,它伴于一位祖先遺骨的東西両側,依照方位,恰与后世盛行的“東青龍、西白虎、南朱雀、北玄武”相吻合,被誉為“中華第一虎”。著名的司母戊大鼎鼎耳外廓飾着一対虎紋,虎口相向,口中含着人頭。《周易•乾卦文》也説:“雲従龍,風従虎。”因為龍飛于天,虎行于地,所以龍虎相合成為雄偉強盛的象征。漢朝時,人們就開始在除夕之夜在門上画虎以駆鬼魅,以后最正宗的門神画上,都絵有老虎。
虎は、早くから中国のトーテムのひとつであった。1987年河南省陽西水坡一帯で一対の貝殻で描かれた龍虎像が出土したが、今から6000年前のもので、ひとりの祖先の遺骨の東西両側に置かれ、方位を見ると、ちょうど後世に盛んになった“東青龍、西白虎、南朱雀、北玄武”と符合しており、“中華第一虎”と呼ばれている。有名な司母戊大鼎の鼎耳の外郭に一対の虎紋の飾りがあり、虎の口は向かい合っており、口の中に人の頭をくわえている。《周易•乾卦文》でも、「雲は龍に従い、風は虎に従う」と言う。なぜなら龍は天を飛び、虎は地上を駆けるので、龍虎相見えて雄壮で盛んなことの象徴となったのである。漢代になると、人々は大晦日の夜に家の門に虎の絵を描き、妖怪変化を追い払うようになり、その後、最も正統な家の門の守り神の絵には、虎が描かれるようになった。
・図騰 tu2teng2 トーテム
・蚌塑龍虎 bang4su4long2hu3 貝殻で墓室の地面に描かれた龍と虎の図案。
・司母戊大鼎 si1mu3wu4da4ding3“司母戊大方鼎”、“司母戊鼎”とも言われる。商代(日本では“殷”代と呼ぶ)後期(B.C.16世紀~B.C.11世紀)の王室の祭祀用の青銅器の方形の鼎(かなえ)で、1939年河南省安陽市の農地から出土した。鼎の内部に“司母戊”という文字が鋳込まれていることから、こう名づけられた。高さ133cm、長さ110cm、幅78cmで、現在まで発見されている中で、世界最大の青銅器である。
・鬼魅 gui3mei4 化け物。妖怪変化。
■ 我国虎文化内容非常豊富,虎的形象無所不在,深入人心。在上古的甲骨文中,“虎”字就是一只造型優美可愛的象形虎。従殷商、西周、春秋、戦国,到秦朝、漢朝的石雕、石刻和画像石,以及青銅器、鉄器、金銀器、玉器、瓷器中,以虎為原型的芸術品的紋飾、造型更加豊富。在青銅器中,商代的龍虎尊的主題紋是“虎口銜人”;婦好墓出土的銅鉞上也有“虎釘銜人”紋;特別是一件名叫“虎食人卣”的商代作品,卣的三个支点是虎的両条后腿和尾巴,虎的前爪抱持一人,張口欲啖人首,形象生動,撼人心魄,反映了古代人対虎的崇拜。
我が国の虎文化の内容はたいへん豊かで、虎の姿かたちはどこにでもあり、深く人々の心に入り込んでいる。古代の甲骨文字で、“虎”は造型が優美で可愛い象形の虎である。殷商(都を殷に移してからの商)、西周(都が長安にあった時代の周。次の春秋時代は都を洛陽に移し、東周と呼ばれる)、春秋、戦国から、秦朝、漢朝に至るまでの石雕、石刻、画像石、及び青銅器、鉄器、金銀器、玉器、陶磁器の中で、虎を原型とする芸術品の紋様、造型は更に豊富である。青銅器の中で、商代の龍虎樽の主要な紋様は「虎が人を口にくわえる」で、婦好墓出土の銅のまさかりにも「虎の釘が人をくわえる」紋様がある。特に「虎が人を食べる図柄の酒器」と呼ばれる商代の作品は、酒器の三本の脚は虎の二本の後ろ足と尻尾であり、虎の前足の爪は一人の人間を抱え持ち、口を開いて人の首を食おうとしており、姿かたちが生き生きとしていて、人を感動させ、古代の人の虎への崇拝を反映している。
・無所不在 wu2suo3bu4zai4 [成語]ないところはない。どこにでもある
・銜 xian2 口にくわえる
・婦好墓 河南省安陽の殷墟で1976年に発掘された、商の王室関係者の唯一完全な墓。
・鉞 yue4 古代の武器。まさかり
・卣 you3 酒を入れる器で、口が小さく、腹が大きい。
・啖 dan4 食らう
・撼 han4 揺り動かす。揺さぶる
・魄 po4 人の肉体に宿る霊魂。魂
■ 我国歴史上,以虎為題的工筆画、写意画等不勝枚挙。在年画、泥塑、皮影、剪紙、布玩具等民間美術作品中,虎的形象有很多不再是凶猛的野獣或者権威的象征,而是一種可親可愛的動物,其中不乏堪称世界経典的作品。《山海経》中説道:在滄海之中有一座大山,名叫“度朔”。山上有一株魁偉的桃樹,枝叶盤曲舒張,覆蓋三千余里。在山的東北面有一処間隙,是供衆鬼出入的“鬼門”。山上住着両位神仙,一个名叫神荼,一个名叫郁塁,専門負責監管衆鬼。凡是遇到為非作歹的悪鬼,二神就用縄子把它梱上,投給老虎吃掉。
我が国の歴史上、虎をテーマにした工筆画、写意画は数え切れないほど多い。年画、泥人形、影絵、切り紙、布製の人形等の民間の美術作品で、虎の形象にはもはや凶暴な野獣や権威の象徴ではなく、一種の親しみやすく可愛い動物であり、その中には世界の代表作と呼べるような作品もたくさんある。《山海経》の中に次のような話がある。大海原の中に大きな山があり、名を“度朔”という。山には一本の大きな桃の木があり、その枝や葉はくねくねと伸び拡がり、あたり三千余里を覆っている。山の東北に一ヶ所隙間があり、たくさんの鬼が出入りする“鬼門”である。山の上にはふたりの仙人が住んでいて、ひとりは神荼、ひとりは郁塁といい、専ら鬼を管理している。いつも悪事を働く鬼を見つけると、ふたりの仙人は縄で鬼を縛り、虎に投げて食べてしまわせる。
・工筆画 gong1bi3hua4 中国画の画法のひとつで、細密画。
・写意画 xie3yi4hua4 中国画の画法のひとつで、微細な描写をせず、情趣の表現に重きを置く表現方法。
・不勝枚挙 bu4sheng4mei2ju3 [成語]枚挙に暇が無い。いちいち数えきれない
・魁偉 kui2wei3 体格のりっぱなさま
・盤曲 pan2qu3 ぐるぐる曲がりくねる
・舒張 shu1zhang1 心臓や血管の弛緩。拡張
・為非作歹 wei2fei1zuo4dai3 [成語]悪事の限りを働く
■ 我国民間還認為“虎毒不食子”。為了儿童的安全、健康成長,常在小孩的鞋帽上繍上虎頭等装飾,称為虎鞋、虎帽,以討吉利,駆邪避祸。著名現代文学家魯迅先生写過:“無情未必真豪杰,怜子如何不丈夫,知否興風狂嘯者,回眸時看小於菟。”賛美虎的愛子之心,這里的“小於菟”就是虎的幼仔。
我が国の民間ではまた「虎の毒があると子供を食べられない」と言われている。子供の安全、健康な成長のため、よく子供の靴や帽子に虎の頭などの装飾を刺繍し、虎鞋、虎帽と呼び、縁起をかつぎ、邪気を払い禍を避ける。有名な現代文学作家の魯迅はこう書いている。「冷血無情な者が必ずしも豪傑ではないし、子供をいつくしむ者は男らしい男ではないとは言えない。野生の虎は風のひどい時、時々子供の虎の方を気にかけて見ていることを知っているか。」こう、虎の子を愛する心を賛美している。ここでの“小於菟”とは虎の幼子のことである。
・吉利 ji2li4 縁起
・駆邪 qu1xie2 邪気を追い払う。魔よけをする
・於菟 wu1tu2 虎
■ 虎,還是我国民俗中影響広的十二生肖之一。其形象広汎流伝于人們的口語中,在文学、雕塑、絵画、戯曲、民俗,以及更为広汎的民間伝説、神話、故事、儿歌等伝統文化的各個領域,成為中華文明不可或缺的一部分。
虎は、また我が国の民俗風習に広く影響している十二支のひとつである。その姿かたちは人々の口語の中に幅広く流布しており、文学、彫刻や塑像、絵画、戯曲、民俗風習、及びより広汎な民間伝説、神話、物語、わらべ歌等の伝統文化のそれぞれの領域で、中華文明の欠くことのできない一部分となっている。
・十二生肖 shi2er4sheng1xiao1 十二支
中国人と虎の係わりを見てきた。中国は、昨年経済の復興を果たし、今年は上海万博を控え、間違いなく“龍騰虎躍”な一年になる。心配なのは日本経済の状態で、昨年はエコポイントなどのカンフル剤で多少は持ち直したが、息切れしないか気がかりである。是非“生龍活虎”な一年になってほしいものである。