北緯43度

村上きわみの短歌置き場です

「未来」07月号(2013)

2013-07-30 | 未来

借りてきた声を返しにゆく夜の路上でかみ砕く糖衣錠

靴紐をきつく結んだ 好きでいることを謝りたいひとがいる

ほんとうのことをいくつもとりこぼし鳩よいつまで心苦しい

罅に似た感情をもち、もて余し、葉桜ばかり見上げては褒め

どこかすこし開いたままで挨拶をかわしたあとの杏仁豆腐

iPhoneのMapにピンを落とし込みそうかわたしはここにいるのか

あたらしい傷が加わりうつくしくなったお前を残して帰る

おむすびに傘さしかけて散りますねいけませんねと続くお花見

ひどいよ、とちいさく嘆く声がして夜の電車がひとを吐き出す

濁点がずっとからだにつきまとう春のさなかを飛ぶつばくらめ
 


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