北緯43度

村上きわみの短歌置き場です

「未来」03月号(2012)

2012-04-06 | 未来

星を焚く真冬(どなたのお名前もうっかり口にしませんように)

降りながらすこしくるってゆくでしょう雪の甘さの、埒があかない

あめゆきに舌をさらして記憶からいちばん遠いふゆを歩いた

ただならぬことの次第を告げにゆく痩せた冬田に鳥を招いて

泣き本のような台詞を口にして来世は閂になるつもり

んくんくと水飲むひとの、さかさまの、夢の名残に塩ふりこぼす

泣いていいと言えば泣きだす(それでいい)飛ぶもののおなかはやわらかい

冬の舌が地面を舐めるまひるまにあなたはささやかな火を嘔吐す    ※ルビ「嘔吐」もど

とりの付箋、さかなの付箋、じゅんぐりに剥がして夏の書物を閉じる

いくばくか滴るものを掌にうけて冬ざれの野に淡く礼なす    ※ルビ「礼」いや


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