いっさいを疎みつづける夕暮れの家長の椀に粥はつがれて
五分粥の白の濁りをのぞきこみどんな時間にいるかあなたは
褶曲の半島なれば肉体のおちこちに咲く思いがけなさ
四歳と八十歳が入れ替わり立ちあらわれて否と言いつぐ
拒まれて近くなりゆく不可思議に脛をさすれば息吐くばかり
立ち上がるためのちからをかき集め一日ごとの長さを進む
情緒から先にくずれてははそはの(かあさん)と呼ぶ声のすはだか
くやしさの底にねむっているひとのやわらかすぎる目鼻を拭う
釣りにゆく約束をして或る午後はこの世の外の海岸にいる
複雑に複雑に死をたぐりよせ生の庭面に立つ霜柱