ありていに言えばさびしい森でした風をいくつもいくつも裂いて
数式をほどくゆびさき ゆいいつのvalueしずかに立ち上がらせて
窮屈なところを抜けてきたらしいすこしほつれている秋の袖
薬莢の散らばる庭を思わせる部屋をひとつの王国となし
持ち重りするあかるさをひからせてセーラー服を今朝も着崩す
どれくらい寒いかと問う どれくらい寒いのだろうおまえの底は
水を編みわずかな息をわけあってさかなのように暮らす(ほころぶ)
なつかしくなりたい 朝の薄紙に墨を吸わせては綴じながら
風下に咲く大叔母の簪をかろうじてこの世からながめる
差し入れた指のわずかなたくらみに流れをかえる水であるらし