原発と核武装論（続き）：核抑止力論はほんもの？まがい物？どっちなんだ！

　5/17の日記：「原発と核武装論」の最後で、西部 邁氏ゼミナール「戦後タブーを蹴っ飛ばせ」の「日本核武装論」を紹介しました。読者の皆さんは「日本核武装論」をどのように考え、受けとめたのでしょうか。内容（主に西部氏と伊藤貫氏の対談）を要約すれば次の通り、

西部：

アーミテージ（ブッシュ政権時の、国務副長官、知日派として知られている）がなかなかいいことを言っている。

彼は、現代世界において、””日本とアメリカが対等な同盟関係であるわけがないだろう。日本は核を持ってないだろう？現代世界において、核を持っている国と持っていない国が対等であるわけがないだろう。お前たちは核を持っていないのだから、自主防衛できるわけがないだろう。自主防衛するなら核をもたなければならないが、お前たちは持つ気はないのだろう。””　そのことに、日本人は答えられない。日本人はアメリカの属国に甘んじていたらどうなの？ってことですね。

伊藤（国際政治・米国金融アナリスト、２６年間米在住）：
アメリカは、１９４７年～８９年までは、所謂冷戦構造、ソ連封じ込めの時代、８９年にベルリンの壁が崩壊、９１年にソ連帝国が崩壊して、それからはユニ・ポラヘゲモニー（一極覇権主義）時代、要するに世界が一極化してアメリカ支配の時代になった。

アーミテージとジョセフ・ナイ（アメリカを代表するリベラル派の国際協調派政治学者）は、ユニポラ・ヘゲモニー（一極覇権主義）派のグループに属している。

　しかしユニポーラ（一極覇権主義）に反対している人たちがいる。
ケナン（外交官、政治学者、歴史家）とかハンチントン（『文明の衝突』の著者として有名）とかケネス・ウオルツ（国際政治学者）、ミアシャイマー（米政治学者、シカゴ大教授）などは、「そんなの（一極主義）うまくいきっこない」、「世界がユニポラになるわけないし、アメリカだけがヘゲモニーを握ってやりだしたら、いろんなところで紛争に巻き込まれて、コストはかかるは、コミットメントは広がるし、とんでもない、止めといたほうがいい」と言っていた。

　勝ったのはユニポラ・ヘゲモニー派なんですよ、ケナンやハンチントンやウオルツらは負けたのだが、２０年経ってみると、どちらが正しかったかというと、ユニポラ・ヘゲモニーに反対した人たちが正しかった。

　アーミテージとジョセフナイらは、２０年前から間違った方向、国家戦略をとっていた。　彼らは元々インテレクチャル・クレディビリティ（知的信頼性）がないんですよ。ニッポンはアメリカにくっついていりゃいいんだというですね、あのアーミテージとナイの本は。
　日本民族は依存心の凄く強い民族、「アーミテージとナイさんはいいことを言ってくれている」　だけど、彼らは腹の中では、日本人をバカにしているんですよ。

　逆にバカにしてないのが、ウオルツとかミアシャイマーとかであって、彼らは世界の多極化は不可避である、核兵器にしても分散する。だからニッポンは核をもって自主防衛にもって行かざるを得ない状況に追いつめられていく。マルタイポラ（多極化）するのだから、「ニッポンが核をもって自主防衛するのは当たり前のことだ」と言っている。僕は１９年まえから、マルタイポラのほうが正しいと、ずーっと言い続けてきた。
　マルタイポラのほうが現実的である、アーミテージとナイの文芸春秋の本は売れているらしいけれど。彼らは２０年前から間違っていたことを言ってきた人たちですから、クレディビリティ（信頼性）がない。

今後２０年間、東アジアの状勢は大転換する。

伊藤：
ひとつは、中国の公表の軍事費は、９００億ドルですが、ＣＩＡやアメリカの国防大学に言わせると、実際には２２００億ドル。アメリカの軍事費は５５００億ドル+１５００億ドルで、５５００億ドルは基礎的な軍事費で、1500はイラクとアフガニスタン用で全部で７０００億ドルです。日本の親米保守の人たちは７０００億ドルだからアメリカは大丈夫と言うんですけれど、来年からアメリカはイラクとアフガニスタンから出て行きますから、５５００億ドルに戻る。それからは、アメリカは今後１０年間は軍事費は増やさない、これはアメリカの予算局も明言している。

　一方、中国は過去２２年間で軍事費は２３倍になっている。例えば５年毎に２倍になるとすれば、今後１０年間で８８００億ドルになる。アメリカは世界帝国ですから、５５００億ドルで世界支配に使用する。中国は８８００億ドルで東アジアだけを支配したいと言っている、中東とかアフリカやヨーロッパを支配したいと言ってないわけですから、そうすると東アジアにおけるバランスオブパワーは、今から１０年後の２０２０年代になると、圧倒的に中国に有利になります。皆さん、それでいいんですか、そうじゃないでしょう？

　親米保守の連中は、「アメリカの属国になっていれば安全だから、アメリカに守ってもらう。属国扱いされるは、悔しいけれどそれでもじっと我慢していれば守ってくれるだろう」と思っている。

　しかし、それは２０２０年代になると、それはあり得ない。２０２０年代になると東アジアにおいては中国のほうが、経済的にも軍事的にも圧倒的に有利になる。だから親米保守の考えは間違っている。親中保守は批判する気にもなれない。「朝日とか左翼は勝手にしなさい」、外務省や防衛省は間違っているから、僕はこういう本（「自主防衛を急げ」、日下公人氏との共著）を書いているわけで、左翼の人たちはもう好きなことをいっても、反論する気もないです。

西部：
日本人の冷静な方でも、「西部さんの核武装論はわからんでもないけれど、日本の軍人軍隊、日本人は信じられない」　ありていに言えば日本人に核をもたせると暴走しかねない。それで反撃した積りらしいいけれど、「西部さんは大衆社会論をやりながら、戦後日本人は信じられないと、再三再四おっしゃっているでしょう」。何故貴方は日本人を信じて核武装論を言うんですかという反論するんですね。

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上記が対談の主たる部分です、後半部分は次の機会とします。

筆者も、日本は「使わない核をもつべきである」という基本認識を持っていました。ただし、確固たる信念にもとづくものではなく、漠然たる不安をもちながら・・・。

４年半前（2006.11.11）政治掲示板阿修羅に、”米国が日本の核武装を認めれば、例え米国以外の全ての国が反対したところで日本の核武装は可能だ。”
http://www.asyura2.com/0610/senkyo27/msg/1396.html
投稿者 TORA 日時 2006 年 11 月 11 日

これにたいして、「酔っ払いの核武装論」と題して次のようにからかい半分のコメントをした。

””　とらさん、よほど核武装がお好きなようで！核々しかじかと、論議したい気持ちはわかりますばってん、かく論になるとまだ反対つー立場の人が多かごとありますな。

　昔から、「能ある鷹は爪を隠す」言いますやろ。今はちーっと早すぎるのとちゃいますか。
　ましてや、小泉みたいに憲法違反でもなんでもありの売国政権、それを継承した安倍さんじゃ、何しでかすか酔うわからん（笑）　あほうどり内閣の下では、危ない刃物をもたしたらあきまへんで。　
　
　わては、基本的には核はもたん方がえーと思うがなあ。当分は非核三原則、つまり陰核じゃよ（誤解したらあきまへん、あっちの話とちゃいますで）（笑）
じゃけんども、情勢が変化したら、議論を飛び越えて一挙に「我が国は核保有国になるっ」つーて宣言してみたら、どないでっしゃろか。

　おそらく、中国、韓国らが、びっくらこいてヒステリックに大反対の嵐でっしゃろなあ？
　恐らく、アメリカはんも日本が、「核の復讐かっ？」つーて泡食うかもしれねーぞ！
　世界各国から大反対の嵐が起きたところを見計らって、やおら　「中国はん、アメリカはん、その他核保有国の諸君！まんず、まんずあんた（貴方）らが、保有している核を全部廃棄処分しなはれ！　そうしたら、日本は核保有やめたるで！」と声を大にして世界に向かって叫ぶ！
　そーなったら、えーと思うがなあ。
　夢の夢かも知れんが一度くらい、日本の存在感、みせてみたいのー！””

　前回（5/17)、書いたように、日本各地にこんなにたくさんの危険な原発基地を抱えたことで、日本の安全保障を非常に脆弱なものにしている。従って、西部氏や伊藤氏らが主張するところの「使わざる核兵器」の「抑止効果論」が果たして有効なのかどうか心配せざるを得ない。相手国は、例え核を使用しなくても（核を持たなくても）、日本の原発を攻撃（破壊）すれば日本を壊滅できる。

　核武装論は、一部の人、一部の国だけでない。早い話が北朝鮮は、早くから「自主防衛は核武装から」と言う信念（認識）の下に行動していた。他国（米国）を騙し続けて援助を受けて、その援助で核開発をした。今は核弾頭用ミサイル開発に懸命のようだ。北朝鮮が原発に積極的でないのは、アメリカのスリーマイル島の原発事故を、また旧ソ連のチェルノブイル原発事故をつぶさに観察していたのかもしれない。

　北朝鮮は、原発の問題点を充分に認識した上での行動なのではなかろうか。
　北朝鮮は今回の大震災発生翌日の１２日午後９時に初報道して以来、ラジオ、テレビ、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」、ウェブサイトなどほぼすべてのメディアを動員して報道を続けている。・・・福島原発事故を連日詳報する北朝鮮の異常な関心・・・産経ニュース（2011.4.3） 。

参考：
伊藤貫「米国は中国人朝鮮人が核をもっても日本人だけは絶対ダメ」
http://www.youtube.com/watch?v=2JV_UPDjW0U

核兵器廃絶に向かう米国の本音は（2009-10-30）
http://blog.goo.ne.jp/ikariyax/d/20091030