あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
本年第一号は、明け烏さんの力作で幕開けといたします。ここに記述されている事柄は、私も大いに首肯するところですので、私のコメントは差し挟まずそのまま掲載いたします。
週刊ポスト年末号の「異形の大国・中国と自由主義陣営の闘い」櫻井よしこ氏は次のように書く。
「そんななか、内部告発サイト・ウィキリークスが米国の公電を暴露し、各メディアは『中国指導部内で韓国主導の朝鮮統一がなされるべきとの考えが浮上』『中国の北朝鮮への影響力はずっと弱い』といった中国政府高官の声を紹介しました。しかし、こうした言葉を鵜呑みにするのは危険です。むしろ本音はその逆だと見るべきでしょう。」
どうしてこれを鵜呑みにするのが危険で逆に見るべきなのかは全く論拠が薄弱である。何故そう見なければいけないかとして挙げられている論拠は韓国哨戒艇「天安」の撃沈事件を中国が国連安保理での議題にすることを妨害したからだという。
しかしあの事件は、北朝鮮単独ではなくおそらく中国のみならず、いくつかの大国の絡んだ極めて政治的な事件であったと思う。その目的も巷間喧伝されているものからは相当、隔たった疑惑に満ちたものであった。軍事行動という政治の究極の形には窺い知れない何らかの目的があるのは政治学のイロハであろう。
北朝鮮が勝手に暴発して、それを宗主国である中国が庇ったという単純な図式で割り切れるものではない。櫻井氏ほどの情報通が何故こういう荒っぽい筋立てを作るのか極めて疑問である。
また北朝鮮の核開発疑惑についても、これを推進する側に回ったのは、おそらく主流は米国筋であって、中国は明らかに傍流であったと言い得ると思う。
次に櫻井氏はこう続ける。「私たちが決して忘れてはならないことは北朝鮮問題はすなわち中国問題であるということです。」
私が早くから北朝鮮は米国と裏で繋がっているということを高橋博彦先生のブログに投稿させていただいたことは、いかりや師匠も覚えていらっしゃるもしれない。
その後、「日々是勉強」氏のブログで中国から見た地形見取り図が掲載されており、
中国の太平洋進出を阻止するためには米国が北朝鮮と沖縄をどうしても押さえておくべしと企図していることが、一目瞭然であったため私は自分の考えに自信を持った。米国は北朝鮮を幾つかの目的で管掌下に収めておきたいのである。こうなると北朝鮮問題とはどちらかと言えば米国問題だといえるのではないだろうか。
さすれば、前記の『中国指導部内で韓国主導の朝鮮統一がなされるべきとの考えが浮上』『中国の北朝鮮への影響力はずっと弱い』との見解は案外、中国首脳部の本音に近いものであって、これを反対に解釈するべきとの櫻井氏の記述は暴論またはデマゴーグに該当すると判断せざるを得ない。
大体、複雑極まりない国際政治の動きを悪玉・中国とその子分北朝鮮の一方的な所業と書くことに無理があるのである。
櫻井氏は最終段落の冒頭に言う。「韓国の自由・民主主義体制を守り、それを北朝鮮にも広げていくことは、日本の国益にもつながります。」
米国の保護領たる韓国に「自由」があるかどうかが極めて疑わしいのは、同じ立場にある本邦に「言論の自由」さえないところから容易に察せられる。そして「民主主義」を「富の再分配」と定義するのであれば、愚息からの現地報告を信じると、韓国に民主主義は存在しない。韓国の非正規就業者が50数パーセントに及ぶことは数字上では知っていたが、それが齎した現況はほぼ次のようなものであるという。
「もう韓国は崩壊しかかっている、または国家としての体をなしていない。大学を出ても就職口がどこにもないんだ。ソウルには失業者や乞食が溢れている。若い人間は仕方なく仕事を求めて海外に出て行くしかないんだ。こっちに来て友達になった四人は全員、香港やカナダ、日本に行ってしまった」
どうやら非正規就業者数が50%を超えると若い世代の国外流出が始まり、国家のメルトダウンが開始されるようである。日本もよくよく気をつけねばなるまい。そしてこの働き口を求めての流民の発生はメキシコをはじめとした中南米諸国を彷彿とさせる。
従って息子の関係する○○大学映画科とやらを卒業しても実際に職に就けるのは10人に一人もいないという有様らしい。「韓流ドラマ」の流行などと言っても一皮むけば零下20度の極寒の世界なのだ。それだけではない。彼は続けた。
「ソウルでは日本円で10万出しても借りられる部屋がないんだ。高額の保証金を払えなければ、地下室くらいしか住むことが出来ない。これがホームレスの増加に拍車をかける。順番待ちのアルバイトの時給が300円に行かないところでだよ」
おそらく、いつぞやのIMF騒ぎのときに外国資本と一部富裕層に不動産が株式もろとも完全に独占されてしまったのだろう。また韓国には社会保障制度がほぼ皆無であるから少しでも病気になったら、それは即、乞食または死を意味する。
かような社会を櫻井氏は「民主主義体制」と呼ぶのか?そしてこれを守ることが「日本の国益につながる」というのか? ― 通常こういう妄言のことを20年前の日本であれば「痴人の夢」と呼んだものである。
文章の結びとして櫻井氏はこう断言する。「もうひとつ、日本がすぐになさなければならないのは、『集団的自衛権』を認めること、さらに自衛のための『先制攻撃』『敵基地攻撃』は憲法上も可能だと名言しておくこと」でありこれが「北朝鮮の暴発を抑止するのみならず、中国に対しても有効な抑止力になるのです。」
相変わらず勇ましい論調だが、これはほんの80年ほど前に呼号された「満州は日本の生命線」というスローガンにやけに似ている。ともに幻想を守ろうとしているからであろう。
ここで再度、ポンツク息子の言葉を引く。「国が崩壊するってのは怖いもので、こないだの北朝鮮砲撃事件のときに韓国軍が反撃したんだけど一発も当たらないんだ。軍の士気が衰えちゃって、みんな逃げ腰になっているからだと、こっちでは言われている」
無論、馬鹿の馬鹿息子の言であるからどこまで当たっているかは疑問とするところ大であるが、多少は正鵠を射ているのかもしれぬ。放蕩親父はこう返した。
「なるほど。お互いにフラフラになった者同士が、へっぴり腰で殴り合いをしているというわけだな」
もし櫻井氏の真意を勝手に敷衍するのであれば、こういう弱りきった韓国軍と自衛隊が協力して(米国の手先となり)中国への牽制力として働けということなのであろう。
氏の文章の怖いところは「アメリカ」の「ア」の字も出さずに米国の意図を代弁していることなのだ。挙句、あれだけ声高に叫んできた竹島問題については「日韓連携と竹島問題は別」とのたまうのには呆れるや感心するやら、人間、多少は長生きしてみるものである。こういうのを売国的ご都合主義という。
読まずにとっておいた櫻井よしこ氏のエッセイを暇に任せて読んで昨日の夕方に書いてみる気になったが、櫻井氏の、お仲間である前原外相が「日韓安保同盟を希望」というニュースが今朝タイミングよく出てきたことに呆然としている。