猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

自民党、北朝鮮人権法案骨子決定―やはり経済制裁は有効だ

2006-02-17 22:39:34 | 朝鮮半島
 安倍官房長官の真似をして、一日遅れだがまずは一言。ハッピーバースデー、ミスター・キム・ジョンイル。彼の誕生日祝いには、経済制裁を贈って差し上げるのがふさわしいであろう。
 自由民主党の「北朝鮮による拉致問題対策本部」は、「北朝鮮人権法案」(仮称)の骨子を了承し、今国会での成立を目指して法案づくりを進める方針である。この法案の目的は、まず何よりも拉致事件などの北朝鮮による人権侵害の実態解明を進めることである。そのために、政府が拉致事件の実態解明に向けて国際機関や国内外の民間団体と情報交換を行うなどの連携を図るよう規定し、こうした取り組みを毎年国会に報告することを義務付けている。さらに、北朝鮮による人権侵害が改善されない場合、政府が特定船舶入港禁止法などに基づく制裁措置をとるように規定している。遅きに失したとはいえ当然の施策である。今後の議論の中で、骨抜きにされないよう強く希望したい。
 さて、北朝鮮に対する経済制裁をめぐっては「効果がない」であるとか、逆に「北朝鮮を刺激して暴発させかねない」といった批判が常にくすぶっている。私は北朝鮮ウォッチャーでも何でもないので、北朝鮮に関する細かい情報など知るべくもないが、理論的に考えて経済制裁は有効であるとの立場をとり続けてきたし、今はますます強くそのように認識している。
 米国は、北朝鮮が大量破壊兵器拡散に関与していたとして、北朝鮮やイラン、シリアの企業に金融制裁を科したと発表している。また、北朝鮮による偽米ドル紙幣を取り締まるべく、財務省テロ・金融情報室が取り組みを続けてきた結果「北朝鮮の不法金融ネットワークに大きな打撃を与えた」と2007年度予算教書にも明記されている。一連の金融制裁に対して、当の北朝鮮の金正日が「われわれの政府は崩壊する」と、中国の胡錦濤国家主席に向かって泣き言を述べたと伝えられている。6カ国協議復帰の条件と金融制裁の件を切り離して6カ国協議に早期復帰するよう促した中国に対して、そのように述べて拒否したのだそうだ。とりもなおさず、経済制裁の有効性を示したことに他ならない。しかも日米が足並みをそろえてということになれば、言わずもがなである。特定船舶入港禁止法だけでなく、あらゆる方法で北朝鮮向けの送金を停止させ、マネーロンダリングにも目を光らせるべきである。「暴発説」のほうは、日本が米国と違って強大な軍事力を背景としていないので、根拠が全くないとまではいえないが、それは日米同盟を活用すればよいだけの話である。我が国が経済制裁をする理由の一つに偽ドル取締りを加えてもよいと思う。米ドルは基軸通貨であるから、偽ドル紙幣を取り締まることは国際通貨システムの防衛につながることであり、米国だけでなく国際社会への貢献にもなるというものである。そのかわり、米国には日本防衛の意思を折に触れて明確に表示してもらう。
 安倍晋三氏が官房長官に就任して、「安倍カラーを薄められる事がなければよいが」と危惧していたが、どうもそういうことはなさそうに見える。そういうわけで、今のところ安心である。政府としても自民党の議論を踏まえて適切な判断を下してくれるものと思う。


(参考記事1)
[北朝鮮人権法案 自民が骨子了承 拉致問題対策本部]
 自民党の「北朝鮮による拉致問題対策本部」(本部長・逢沢一郎幹事長代理)は十六日午前の会合で、「対北朝鮮経済制裁シミュレーション・チーム」(座長・山本一太参院議員)がまとめた「北朝鮮人権法案」(仮称)の骨子を了承し、今国会での成立を目指して法案づくりを進めることを確認した。
 北朝鮮人権法案は拉致事件などの北朝鮮による人権侵害の実態解明を進めることが狙い。骨子では、政府が拉致事件の実態解明に向けて国際機関や国内外の民間団体と情報交換を行うなどの連携を図るよう規定し、こうした取り組みを国会に毎年、報告することを義務付けている。
 また、北朝鮮による人権侵害が改善されない場合、政府が特定船舶入港禁止法などに基づく制裁措置をとるように規定。拉致事件を風化させないため「北朝鮮の人権侵害について考える日」を定めることも盛り込む。
 逢沢本部長は会合後、先の日朝並行協議で拉致事件の前進がなかったことを受け、「政府が引き続き北朝鮮側との協議を進める中、圧力をかけることができるよう政府にカードを与えたい」と述べた。
(産経新聞) - 2月16日16時24分更新

(参考記事2)
[米、北「不法金融」へ制裁強調 予算教書]
 【ワシントン=有元隆志】ブッシュ米政権は六日、議会に同日提出した二〇〇七会計年度予算教書で、財務省テロ・金融情報室が過去一年間に挙げた「成果」として、「北朝鮮の不法金融ネットワークに大きな打撃を与えた」と強調した。
 予算教書で北朝鮮の不法行為に触れるのは極めて異例。「大きな打撃」についての具体的な言及はなかったが、ブッシュ政権として制裁の成果を強調することで、北朝鮮の偽ドル問題を徹底的に取り締まる姿勢を明確にしたものといえる。
 また、大量破壊兵器拡散に関与していたとして、北朝鮮やイラン、シリアの企業に金融制裁を科したと説明した。
 教書では、こうした企業に対する監視の継続などに新たな予算を振り分けるとしている。
 財務省は昨年九月、北朝鮮がマカオの「バンコ・デルタ・アジア」銀行を使って、マネーロンダリング(資金洗浄)などを行っているとして、同銀行を「マネーロンダリングの主要懸念先」に指定、米金融機関による同行との取引を禁止した。
 北朝鮮は昨年十一月の六カ国協議で、制裁に強く反発した。
(産経新聞) - 2月7日16時4分更新

(参考記事3)
[金融制裁で「政府崩壊」 中国主席に金総書記]
 【ニューヨーク11日共同】中国の胡錦濤国家主席が今年1月、訪中した北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記と会談した際、米国の金融制裁解除を6カ国協議復帰の条件とせず切り離して考えるよう求めたのに対し、金総書記が「そんなことをしたら、われわれの政府は崩壊する」として拒否したことが11日、分かった。複数の外交筋が明らかにした。金融制裁をめぐる中朝首脳の具体的やりとりが明らかになったのは初めて。
 この発言は、北朝鮮がいかに米金融制裁に圧迫を受けているかを示している。米金融制裁が解除されるまで6カ国協議復帰に応じないとしている北朝鮮のトップが、議長国中国のトップの「勧奨」を拒んだことで、2月再開が既に絶望視されている6カ国協議再開の行方はさらに不透明になった。
(共同通信) - 2月11日20時27分更新


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2 コメント

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カダフィ大佐みたいになれんのか? (tsubamerailstar)
2006-02-23 12:22:47
ご指摘の通りインドネシアに泣き入れたり、六カ国協議関連でしょうが、米国と接触する動きを見せているようですね。

昨年来の総連関連や不正輸出に関する摘発の類の国内的な動きもこれに連動しているのでしょうが、<戦後日本の闇>にはもっと大鉈が振るわれてよいかと思います。足利銀行も今や準国有化みたいなもんですしねぇ。

北がかつてのカダフィ大佐みたいに大人しくなってくれたら対中緩衝地帯化することもできますし、反米左旋回の南も連動するでしょうから一気呵成にやりやすくなる気もするのですがねぇ・・・・しかしまぁ、パレスチナ、イラン、台湾海峡に朝鮮半島とホント頭痛の種揃いですが、優先順位的には朝鮮半島と台湾海峡は<現状維持>でビハインドになるという前提で善後策を考えておくべきかという気がいたします。

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tsubamerailstarさまへ (猫研究員。(高峰康修))
2006-02-24 01:17:36
カダフィ大佐は、レーガン大統領時代に米国の空爆で子息を殺された上に近所でサダムが打ち倒されたということで、恐怖が身に染みたんでしょうね。リビアの場合は、英国が積極的に動いてくれたことが大きいと思います。独裁者というものは、とりわけ状況分析を誤りがちですが、カダフィは例外に属する部類だと考えたほうがよさそうです。でも、金正日がそうなったらなったで、米国との間で核開発だけの放棄に合意して、拉致事件は有耶無耶ということにならないようにしなければなりません。そのためにも「拉致問題の解決なくして日本からの援助なし」と声を大にして言い続ける必要があります。これは北朝鮮向けと同時に米国向けにも…。
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