猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

6カ国協議共同文書採択も、早速先行き不透明

2007-02-15 01:49:39 | 朝鮮半島
 中国の北京で開かれていた、北朝鮮の核開発問題をめぐる6カ国協議は、13日午後、北朝鮮が核放棄に向けた初期段階の措置を実施することと引き換えに他国が見返りの重油供与を行なうことなどを盛り込んだ共同文書を採択し、閉幕した。北朝鮮が60日以内に寧辺の核施設を「停止・封印」すれば、他の参加国は60日以内に重油5万トン相当のエネルギー支援を行なう。すべての核施設を「無力化」すれば、さらに重油95万トン相当の追加エネルギー支援を実施する。このような内容である。「北朝鮮のゴネ得を許した」と批判の声もあり、それもあながち間違った指摘とも決め付けられないのだが、現段階で合意文書を作るとしたら今回の合意内容が落としどころとなる以外にあまり想定できない。6カ国のうちのどの国も大きな不利益を被っているわけではないのだから、参加各国の利害をうまく反映したものだと一定の評価は与えられよう。
 米国は、ブッシュ大統領が「北朝鮮に提供する経済・人道・エネルギー支援は、北朝鮮が核施設の無能力化を実行した場合に限る」ということを明言したり、スノー大統領報道官が「昨年10月の核実験後に国連安保理が採択した制裁決議は依然として有効であって、北朝鮮に違反行為があれば新たな制裁が科される可能性もある」と表明するなど、巷間言われているほどの弱腰でもない。きちんと原則は守っている。多くの論者が指摘している通り、イラクのテロ掃討作戦への増派やイラン情勢の不安定化などがあるので、北朝鮮に関わっている余裕はあまりない。6カ国共同文書でもまとめて時間稼ぎをしようと考えたとしても無理からぬことである。
 しかし、北朝鮮が早速「核施設を臨時に停止しただけで100万トン供与の合意を取り付けた」と主張しはじめており、共同文書の空文化は間違いない情勢である。ただ、北朝鮮がそういう主張をすることは織り込み済みであろう。このまましばらくずるずる事態が進展も悪化もしないのが参加各国にとって一番都合がよいともいえる。したがって、こう着状態は続き当面は劇的な展開はないと思われる。
 我が国は「間接支援」に限定すると表明したが、拉致問題を抱えている以上当然である。拉致問題の解決なくして経済支援に踏み切れば安倍内閣はたちどころに倒れるであろう。まずありえない話である。「今回の合意で日本が拉致問題を理由に足並みを乱すことは出来ないから二段階目の経済支援は不可避なのではないか」「日本は孤立するのではないか、合意は困ったことだ」などといった論評もあるが、そんなことはないと思う。各国の事情に応じて対応に濃淡があるのは当然であり、ロシアなどは「重油5万トンの支援には加わらない」と早速明言している。あまりに日本の国益を損ねるようであれば、最終的に6カ国協議を離脱してしまってもかまわないが、今はそこまでの状況にない。我が国の資金が手に入らなくなって困るのは他の5国なのだから、この辺りをカードに日本はもっとタフな外交が出来てよいはずである。うまく「お付き合い」するのがよいのだろう。



(参考記事1)
[北朝鮮支援、米大統領"核施設無能力化の場合に限る"]
(2月14日12時7分配信 読売新聞)
 【ワシントン=貞広貴志】ブッシュ米大統領は13日、北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議の共同文書採択を受けて声明を出し、「北朝鮮の核問題に対処する上で、一連の協議は外交上の最高の機会であることを示した」と述べ、6か国協議の意義を高く評価した。
 大統領は、北朝鮮に提供する経済・人道・エネルギー支援については、「北朝鮮が核施設の無能力化を実行した場合」に限ることを強調した。1994年の米朝枠組み合意が、北朝鮮に核開発継続を許す結果に終わった反省に立ち、今回はあくまで北朝鮮に対し合意の完全履行を迫る姿勢を鮮明にしたものだ。
 一方、ライス国務長官は13日の記者会見で、今回の合意を「朝鮮半島の非核化と、北東アジアの安定化・安全保障という目標に向けた重要な最初の一歩」と歓迎。その上で、最終目標として、「完全、検証可能、不可逆的な非核化」を挙げた。

(参考記事2)
[違反なら追加制裁も=北朝鮮に期限内履行求める-米大統領報道官]
(2月14日2時0分配信 時事通信)
 【ワシントン13日時事】スノー米大統領報道官は13日、記者団に対し、北京で閉幕した北朝鮮核問題に関する6カ国協議の合意について、「北朝鮮は期限内に履行しなければならない」と強調した。さらに、昨年10月の核実験後に国連安保理が採択した制裁決議は「依然として有効だ」と指摘、北朝鮮に違反行為があれば新たな制裁が科される可能性もあるとの認識を示した。 

(参考記事3)
["核臨時停止で重油100万t"北朝鮮が勝手な解釈]
(2月14日21時55分配信 読売新聞)
 【ソウル=平野真一】北京で開かれていた6か国協議で13日に採択された共同文書について、北朝鮮が同日、自らに都合のいい一方的な解釈を打ち出し、早くも履行に暗雲が差している。
 共同文書は、北朝鮮が核放棄に向けた措置を取らない限り、大量なエネルギー支援を得られない仕組みになっているが、北朝鮮は核施設を「臨時」に停止しただけで100万トン供与の合意を取り付けたと主張しているためだ。北朝鮮が支援規模に文句をつけ、合意を履行しないための布石でないかとの見方が出ている。
 共同文書は、北朝鮮が核放棄に向けて取るべき措置を2段階にわけ、〈1〉60日以内に核施設の活動停止・封印と、国際原子力機関(IAEA)による監視・検証を受け入れれば、他の国は重油5万トンを支援〈2〉さらに核計画を完全に申告し全施設を使用不能にすれば、最大95万トンを支援する――としている。

(参考記事4)
[北朝鮮への重油5万トン支援、露は加わらず]
(2月14日20時38分配信 読売新聞)
 【中国総局】ロシアのアレクサンドル・ロシュコフ外務次官は13日夜、北京で記者団に対し、同日採択された6か国協議の共同文書に盛り込まれた「重油5万トンの支援」に「ロシアは加わらない」と語った。
 同次官は、「旧ソ連時代に北朝鮮国内に建設した発電所の更新など、いくつか案がある」とし、別の形でエネルギー支援を行う用意があると表明。また、共同文書について、「朝鮮半島非核化の第一歩となる」としつつも、「完全解決までの道のりは長い」との見通しを明らかにした。
 同次官はまた、「北朝鮮が国際原子力機関(IAEA)の査察要員復帰を認めるなら、原子力を平和利用する権利がある」と」述べた。

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