北朝鮮によるミサイル発射実験について(続報)

　昨日の北朝鮮によるミサイル発射実験を受けて、日米を中心に対応が進められている。といっても、目新しいものではない。我が国と米国はは、国連安保理に対して、「安保理として断固かつ明確な意思を示す必要がある」とし、ミサイル発射を非難する安保理決議案を採択すべきことを提示した。さらに、北朝鮮への非難に加え、ミサイル開発に転用される恐れのある資金や技術の提供停止など、一部制裁事項を盛り込むことも検討している。安保理議長国であるフランスも強い調子で北朝鮮を非難している。ＥＵや東南アジア諸国もそうである。北朝鮮の問題で「各国の理解と協調を得て」という日本政府の言い分は、正直言って今までは空虚なものだとして半ば軽蔑していたのだが、こういう事態であれば「国際世論を喚起して」と言っても全くおかしくない。今こそ、外交努力が重要であると敢えて申し上げたい。その意味で、マスコミの扇情的な報道には疑問を呈したい。
　さて、中露両国は予想通り「１９９８年の北朝鮮のミサイル発射の際は、安保理は『プレス声明』を発表している。今回は一段階高い『議長声明』で対応すべきだ」と述べ、決議案に反対する姿勢を明確にしている。北朝鮮への脅威は「総論賛成各論反対」の様相である。中露両国のうち、切り崩しの期待の可能性がまだあるのは、サミット議長国であるロシアであろう。とはいえ、過度の期待は禁物だ。中国に関しては、『北朝鮮によるミサイル発射実験について』でも述べたように、中国が地域の安定と秩序の確保に不熱心であることを国際社会に訴えるよい機会である。
　ところで、米国のスノー大統領報道官によれば、北朝鮮は発射可能ミサイルをさらに2─3発用意しているとのことで、まだまだ注視していく必要がある。あくまで憶測だが、北朝鮮はミサイルの飛距離を抑えるなどして(単に失敗しただけだという説も有力だが…)米国を本気で怒らせる事態は巧妙に避けつつ、第二弾、第三弾の「実験」を折を見て実施する可能性はあると思う。また、今回の事件は「実験」の範疇を超えて実戦演習の色合いが濃いという分析もある。ＴＶなどでは性急な結論やセンセーションが求められるのだろうが、詳細な分析を慌てずに待つべきである。
　どうせいつも結論は同じで恐縮だが、やはり日米同盟のさらなる強化が最善の策である。国民の安全を確保するのに最も責任ある方策は、見通しうる将来にわたって、それ以外に考えられない。一部報道では、日米の情報共有に不手際があったとも伝えられている。こういう点は、事実とすれば改善していく必要がある。また、「のどもと過ぎれば熱さ忘れる」ではなくて、国防に関する意識を持続的に高めなければならない。何も、脅威は北朝鮮だけではないのだ。

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(参考記事１）
[安保理が北ミサイル緊急協議…日本、非難決議案提示へ]
　【ニューヨーク＝白川義和】国連安全保障理事会は５日、北朝鮮のミサイル発射について、緊急の非公式協議を行った。
　協議は非公開で行われたが、安保理筋によると、日本は「安保理として断固かつ明確な意思を示す必要がある」とし、ミサイル発射を非難する安保理決議案を採択すべきだと訴えた。
　日本は同日午後、安保理理事国に対し、制裁も視野に入れた北朝鮮非難決議案の具体的内容を提示する。
　安保理協議で、米国や英国は日本の立場に賛意を示した。しかし、中国とロシアは「１９９８年の北朝鮮のミサイル発射の際は、安保理は『プレス声明』を発表している。今回は一段階高い『議長声明』で対応すべきだ」と述べ、決議案に反対する姿勢を明確にした。
（読売新聞） - 7月6日1時55分更新

(参考記事２)
[北ミサイル発射は「深刻」＝安保理協議で各国一致－日米、対北決議提示へ]
　【ニューヨーク5日時事】国連安保理は5日午前（日本時間同日深夜）、非公開協議を行い、北朝鮮が長距離弾道ミサイル「テポドン2号」などミサイル7発を発射した事態について討議した。各国は事態は「深刻」であり、安保理で迅速な意思表示をする必要があるとの認識で一致した。
　ミサイル発射を「国際社会の平和への脅威」と受け止める日米両国は、対北朝鮮決議案を同日午後（同6日早朝）に行われる専門家会合で非公式に提示する。決議案には、北朝鮮への非難に加え、ミサイル開発に転用される恐れのある資金や技術の提供停止など、一部制裁事項が盛り込まれる可能性がある。　
（時事通信） - 7月6日3時1分更新

(参考記事３)
[フランス、北朝鮮のミサイル発射で国連の強固な対応目指す]
　［国連　５日　ロイター］　フランスは５日、北朝鮮のミサイル発射について、国際社会が「強固な一致団結した対応」を取るために、他の国連安全保障理事国と協議する意向を明らかにした。
　７月の安保理議長国であるフランスは、声明で北朝鮮に１９９９年に合意したミサイル発射モラトリアムを厳密に順守するよう、強い調子で求めた。
　「北朝鮮の姿勢は、北東アジアの安定と安全保障、特に核問題の６カ国協議の取り組みに反するものだ。我々の目的は、依然として、北朝鮮の軍事目的の核開発を完全、不可逆的かつ検証可能な形で廃止すること」と指摘。「北朝鮮に対して国際社会の強固な、一致団結した対応を取れるよう、早急に協議を開始することを決定した」とした。　
（ロイター） - 7月6日7時21分更新

(参考記事４)
[北朝鮮問題で同盟国と協議、発射可能ミサイルあと2─3発も＝米大統領報道官]
　［ワシントン　５日　ロイター］　スノー米大統領報道官は、北朝鮮のミサイル実験問題で、北朝鮮の譲歩につながる外交的方法を見つけ出すため主要同盟国と協議していると述べた。
　同報道官は記者団に対し、北朝鮮があと２─３発の発射可能な短・中距離ミサイルを保有していることがあり得ると指摘。「発射されるかどうかはわからない。実際のところ次に何が起こるか見当がつかない」と話した。
　米政府は長期にわたって、北朝鮮が長距離弾道ミサイル「テポドン２号」の発射実験を行った場合に厳しく対応すると警告してきたが、スノー報道官は現時点では、国連制裁への強い要求を表明するまでには至っていない。
　報道官は「北朝鮮の譲歩と６カ国協議参加に向けて外交的な方法を見つけ出すことが重要」とし、ライス国務長官が同協議参加国の外相に、今後の適切な方策を詰めるよう話したと明らかにした。
　スノー報道官は、米軍が北朝鮮ミサイル実験について、発射が停止されたというよりはむしろ「打ち上げ失敗」であったと「強い確信」をもって結論付けたとも述べた。　
　報道官は、北朝鮮指導者にミサイル発射問題を米朝の二国間問題にはさせないという米政府の方針を表明。「これは米朝間問題ではない。北朝鮮指導者が二国間問題にすり変えることを許さない」と述べた。
（ロイター） - 7月6日7時36分更新

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