猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

防衛予算、今年度当初比0・9%減―財務当局は過剰介入を戒めよ

2005-12-23 02:32:26 | 安全保障・自衛隊
 総額80兆円未満国債発行額30兆円未満という比較的緊縮財政である2006年度予算の財務省原案において、防衛予算も今年度当初予算とくらべて0.9%ではあるが減額された。
 防衛予算に関する議論としては、何といっても昨年の新防衛大綱策定をにらんだ、陸自編制定数(要するに陸自の兵員数)に関する財務省と防衛庁の綱引きが想起される。これは、冷戦期のような大規模な本土侵攻の可能性が低下したのだから陸自の編制定数を16.2万から12万に減らして財政再建に寄与させよと主張する財務省に対して、防衛庁側は「それでは少なすぎて任務に支障を来たす」として激しく反発したものである。この問題に関しては、内容を吟味する以前に財務省の姿勢が誤りであった。確かに財務省は予算を減額する権限は当然に持っているが、陸自の編制定数のような防衛の根幹に関わることにくちばしを入れるのは越権行為である。内容的にも、12万にまで減らすと任務に支障を来たすという防衛庁の主張の方が理にかなっていた。冷戦型の本土侵攻のおそれがなくなりテロやゲリラなどの危険性が高まったといっても、それは陸自の兵員数を減らしてよいということにはならない。なぜならば、テロやゲリラは少数で攻めてくるといっても、それに対応するための正規軍は桁違いに大人数でなければならないからである。例を挙げると、以前に韓国に26人のゲリラが上陸したのに対して6万の兵力を50日間貼り付ける必要があったことがある。また、イラク戦争後の対テロ作戦のために16万もの米軍が駐留してなお成功を収めたとは言いがたい。結果的には、新防衛大綱に盛り込まれた陸自編制定数は、防衛庁側の主張に限りなく近い15.7万に落ち着いて、12万という非常識な結果にはならずに済んだ。
 防衛予算も削減の対象となるとなれば、まず減らされるのは武器弾薬、それから訓練整備費である。訓練整備費を減らして稼働率を落とすと、自衛隊の錬度を落とすことになる。そういうわけで、聖域扱いするわけではないが、防衛予算というものは軽々に削るのは危険なことである。
 以上のような経緯を踏まえて、本年度の防衛予算について見てみると、編制定数に関する議論も決着して新防衛大綱も定まったので、穏当なところに落ち着いたと言えるだろう。中でも、ミサイル防衛システムの整備費用が過去最高の約1400億円計上されたことは評価されてよい。ミサイル防衛システムの効果については疑問の声もないではないが、これほど「専守防衛」の趣旨にかなったシステムはないし、これの共同開発を通じて日米同盟の強化に資することや日本の技術力を高める結果にも繋がる。主要装備品の抑制などで248億円(2・6%)削減したのは削減しすぎのとような気もしないでもないが、やむを得ないところであろう。また、在日米軍駐留経費負担に関しては171億円(7・4%)の減額だった。これに関連しては、米軍再編問題をめぐり基地機能移転に日本が相応の負担をする約束をしているので、基地機能移転が現実化していくとそういう負担は増加していくことになろう。そのために、防衛予算の他の要素を減額するということになってはならない。理由は前述の通りである。
 こと国防に関しては、財政再建の観点だけから考えるべきではない。陸自編制定数問題のようなことが二度と繰り返されてはならない。あれこそ、言ってみれば「統帥権干犯問題」である。


(参考記事)
[防衛予算、今年度当初比0・9%減…4年連続マイナス]
 2006年度予算の財務省原案で示された防衛予算は4兆8137億円で、今年度当初予算と比べて427億円(0・9%)の減額だった。
 防衛予算の前年度比マイナスは4年連続。ミサイル防衛(MD)システム関連では、過去最高の1399億円を計上した。
 MD整備費は、前年度比約201億円(16・8%)増。イージス艦や地対空誘導弾パトリオットの能力向上、パトリオット・ミサイル3「PAC3」の購入、将来警戒管制レーダー(FPS―XX)の整備などに加え、次世代型迎撃ミサイルの日米共同技術研究を共同開発へ移行することに伴う30億円を含んでいる。
 また、在日米軍駐留経費負担は2151億円で、171億円(7・4%)の減額。特に、米軍の家族住宅建設などの提供施設整備費は170億円(26・8%)減の463億円で、削減率は過去最大だった。
 自衛隊のイラク派遣関連費用は、前年並みの146億円としている。
 一般物件費は、冷戦型の着上陸侵攻に対応した戦車や戦闘機などの主要装備品の抑制などで248億円(2・6%)削減した。人件費も225億円(1・0%)絞り込んだ。
(読売新聞) - 12月20日20時43分更新


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