猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

海保、竹島周辺で戦後初の測量調査へ―あえて朝鮮日報の記事を読んでみる

2006-04-20 04:23:39 | 朝鮮半島
 14日午後の記者会見で安倍晋三官房長官が、海上保安庁が同日、竹島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)において6月30日までの予定で調査を行う旨、国際水路機関(IHO)に通知したと発表したのは、既にご承知の通りであろう。海上保安庁の調査は海図編集に必要な資料を収集するための測量が目的である。当然、竹島が我が国の領土であることを表明する意図である。19日には海保の測量船「明洋」が境港を出港した。今回の測量のような措置が、我が国固有の領土である竹島の領有権を内外に闡明するものであり、当然のとこである上に遅きに失したことなどは、いちいち指摘するまでもないだろう。
 さて、本件に関して、韓国側は「日本が強行すれば可能なあらゆる手段により阻止する」と厳重に抗議している。こんなことは時事通信が物欲しげに書くまでもなく予想されたことである。それよりも、朝鮮日報の記事に色々な角度からの報道が載っていて面白い。そこで、ここでは、敢えて朝鮮日報の記事をいくつか紹介しておきたいと思う。韓国人の領有権に対する意識に改めて接することで日本人の竹島領有権への意識をしっかりさせる刺激とするという浅薄な理由もないではないが、それだけではなく相手側の様々な論調に触れておくのも有益だと考えるからである。
 「日本の探査船は必ずだ捕し、韓国の法に従って処罰、これに応じない場合は必ず撃沈すべき」という市民団体の強硬な声明は素朴な感情なのだろう。また最後に挙げた社説では「1875年、日本の雲揚号が測量と朝鮮の官吏への面会を口実に、江華島に接近して因縁をつけたのも、それほど昔のことでもない130年前のことだ。」と述べて、領土問題に関する意識の深さが見て取れる。「独島を…国際的な紛争地域として浮き彫りにし、将来的に独島問題を国際司法裁判所に持ち込もうというのが日本のもくろみだ」と述べているくだりは、国際司法裁判所は両当事国の同意がない限り付託されることはないので実のところ単に煽りすぎなのだが、竹島領有への執念はよく伝わってくる。
 一方で、日本がEEZを越え、韓国側が実際に停船、検問、拿捕を行った場合、法的にはどのような問題があるのかを国際法の観点から冷静に論じている記事もある。[海洋調査、国内法では拿捕可能、国際法では不可]を読んでいただければ分かるように、韓国の海洋科学調査法第13条は外国船舶が韓国のEEZで不法操業活動を行う場合にこれを拿捕できると定めているが、国連海洋法など国際条約にはこのような拿捕の規定がなく商業用船舶でない場合は拿捕などを行う根拠がない。その上で当該記事は「拿捕などを行うなら深刻な外交戦に発展する覚悟をしなければならないということだ」と締めくくっているのは、なかなか現実的である。逆に言えば、相手方が国際法上根拠がないことを知りながら「拿捕する」などと言ってきているのは、これまで我が国がいかに「なめられる」に値する対応に終始してきたかの証拠というべきであろう。さらに「韓国がだ捕する場合、国際海洋法裁判所に提訴される可能性があることを忘れてはならない」という専門家の言葉や「韓国が実効的な支配をしている地域に対し、過度に積極的な反応を示す場合、国際社会がこれを『韓国の自信のなさ』と受け取る可能性もある」というソウル大教授の言葉まで紹介されていたりする。韓国政府の対外的な強硬姿勢にもかかわらず、実際のところはポーズの側面が大である。結局のところ、日本側は安心して粛々と進めていけばよいということである。もちろん、決して韓国側の顔色を窺って領土問題に関する態度を決めろなどということではない。



(参考記事1)
[海保、竹島周辺で測量調査=戦後初、韓国は抗議-新たな対立要因に]
 安倍晋三官房長官は14日午後の記者会見で、海上保安庁が同日、竹島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)で調査を行うと国際機関に通知し、韓国政府から抗議と中止要求を受けたことを明らかにした。同長官は「わが国のEEZ内での調査は国際法の観点から何ら問題ない」と指摘したが、調査を実施すれば韓国側のさらなる反発を呼び、日韓関係の新たな対立要因となるのは必至だ。
 海上保安庁の調査は海図編集に必要な資料を収集するための測量が目的で、竹島周辺海域で行うのは戦後初めて。同庁は同日から6月30日まで同海域で調査を実施すると、国際水路機関(IHO)に通知した。
 これに対し、韓国外交通商省の柳明桓第1次官は14日、ソウルで大島正太郎駐韓大使を呼び、「韓国政府の許可なく韓国側のEEZで調査するのは無断進入だ。日本が強行すれば可能なあらゆる手段により阻止する」と厳重に抗議した。 
(時事通信) - 4月14日21時0分更新

(参考記事2)
[測量船1隻が境港を出港 竹島周辺海域の海洋調査]
 日本と韓国の間で領有権をめぐり対立が続いている竹島(韓国名・独島)周辺海域の海洋調査をめぐり19日午後、鳥取県境港市の境港に入港していた海上保安庁の測量船2隻のうち「明洋」(621トン)が出港した。直接、調査海域に向かうかどうかは不明。
 残る測量船「海洋」(605トン)は、乗組員が乗ったまま岸壁に停泊している。
(共同通信) - 4月19日16時22分更新


(朝鮮日報記事1)
[海洋調査、国内法では拿捕可能、国際法では不可]
 韓国政府は日本の測量船が韓国の排他的経済水域(EEZ)と設定した地域に侵入する場合、停船、検問、拿捕(だほ)まで行うという方針を明らかにしている。潘基文(パン・ギムン)外交部長官はこれと関連して、「国際法と国内法に定められているすべての手段を動員するつもり」と述べた。日本がEEZを越え、韓国側が実際に停船、検問、拿捕を行った場合、法的にはどのような問題があるのか。
 韓国の海洋科学調査法第13条は外国船舶が韓国のEEZで不法操業活動を行う場合、拿捕できると定めている。国内法上は問題がないということだ。
 しかし海洋法の専門家によると、国連海洋法など国際条約にはこのような拿捕の規定がない。商業用船舶でない場合、拿捕などを行う根拠がないということだ。
 日本外務省の谷内正太郎事務次官が17日、「国連海洋法条約上、(拿捕は)認められない」と主張したのもこのためだ。万一、韓国政府が日本と海上で対峙(たいじ)するか日本船舶を拿捕するかした場合、この地域が国際紛争地域化する可能性が高いというのが海洋法専門家の分析だ。
 国際法に沿った方法で韓国ができる最大の行為は海上で日本船舶に対し「退去」の警告をすることだと海洋法の専門家は話す。拿捕などを行うなら深刻な外交戦に発展する覚悟をしなければならないということだ。
(朝鮮日報 2006/04/19 10:41)

(朝鮮日報記事2)
[海洋調査、韓国政府内には慎重論も]
 韓国側の排他的経済水域(EEZ)内で日本が水路測量をしようとしていることについて、韓国政府内では積極的に対応すれば日本の意図にはまる結果を生むという反論の声も強い。政府のある関係者は「日本に対する感情的な対応は日本の術策に乗ることでしかない」とし、「状況を見て柔軟に対応する必要がある」と述べた。
 韓国の専門家の間でも慎重対応の姿勢を変えるときではないという主張が少なくない。キム・チャンギュ慶熙(キョンヒ)大学名誉教授は「日本政府の船舶は海洋法で軍艦と同じ地位を持つ」とし、「韓国がだ捕する場合、国際海洋法裁判所に提訴される可能性があることを忘れてはならない」と話した。
 ソウル大学の朴熙(パク・チョルヒ)教授は「韓国が実効的な支配をしている地域に対し、過度に積極的な反応を示す場合、国際社会がこれを『韓国の自信のなさ』と受け取る可能性もある」と語った。
イ・ハウォン記者
(朝鮮日報 2006/04/18 11:13)

(朝鮮日報記事3)
[海洋調査、市民団体「だ捕・処罰に応じなければ撃沈せよ」]
 韓国側の排他的経済水域(EEZ)内で日本が水路測量をしようとしていることについて、市民団体と学界は17日、積極的な対応を主張した。
 漢陽(ハニャン)大学の慎廈(シン・ヨンハ)教授は「日本の海底探査は独島領有権主張を既成事実化しようとするのが1次的な目的で、韓日中間水域の海底資源探査は2次的な目的」とし、「政府は鬱陵島ではなく、独島を拠点にしたEEZ境界線で日本船舶を阻止すべき」と主張した。
 外国語大学の李長熙(イ・ジャンヒ)教授はメディアとのインタビューで「独島を紛争水域化するとしても、韓国がこれに同意しなければ国際司法裁判所(ICJ)が独島領有権問題について管轄権を行使することはできない」とし、積極的な対応を呼びかけた。独島の歴史を探す運動本部もこの日「日本の探査船は必ずだ捕し、韓国の法に従って処罰、これに応じない場合は必ず撃沈すべき」という声明を発表した。
イ・ハウォン記者
(朝鮮日報 2006/04/18 11:11)

(朝鮮日報記事4)
[朝鮮日報社説:独島に向かってまた一歩近づいた日本]
 日本の海上保安庁所属の海洋測量船が、「4月14日から6月30日まで、適当な時点に」独島(トクト)近海の韓国側の排他的経済水域(EEZ)に含まれた地点に対する海洋測量を行うという計画を、韓国政府には知らせず、国際水路機構(IHO)にだけ通報した。政府は14日、非常対策会議を開き、日本の測量船が韓国のEEZを侵犯する場合、法に則って停船、検索、拿捕などの必要な措置を取ることにした。
 日本は韓国の排他的経済水域を認めることができないとし、その地域に測量船を送り込み、韓国側のEEZを無力化し、その水域内の独島に対する韓国の領有権を損なおうという思惑を持っている。独島をそうした手法で国際的な紛争地域として浮き彫りにし、将来的に独島問題を国際司法裁判所に持ち込もうというのが日本のもくろみだ。
 昨年、日本の島根県が「竹島(独島の日本語表記)の日」を制定した上、先日は日本の文部科学省が、来年から現場で使われる高校教科書の検定過程に「日本の固有領土の竹島」という表現を明記することを指示した。日本がいよいよ中央政府レベルで、公然と独島に対する国家的策略を前面に掲げたのだ。
 1875年、日本の雲揚号が測量と朝鮮の官吏への面会を口実に、江華島に接近して因縁をつけたのも、それほど昔のことでもない130年前のことだ。日本が今回独島近海まで接近すれば、今度は独島の地質を探査するために上陸すると挑発するかもしれない。
 大統領は昨年の今頃、「日本の覇権主義を必ず根絶やしにする」と公式宣言した。その後、政府が日本の覇権主義を根絶やしにするために取った措置とは、韓日首脳会談を行わないことぐらいしかなかった。独島に向けて再び一歩踏み出した現在の日本の行動は、韓日両国の首脳が会わなくとも、どこ吹く風といった様子だ。
 一方、韓日両国がこうした紛争に巻き込まれるたびに、舞台の裏でもつれをほぐすきっかけを提供してきた米国は沈黙を守っている。韓米同盟が根幹まで揺さぶられ、韓米日のトライアングル協力体制も働かなくなって久しい。だとすると、日本がこのようにずんずん一歩ずつ独島に向かって近づいている現在、韓国政府はいったいどんな対応策を講じているのか。国民としては疑念を抱かざるを得ない。
(朝鮮日報 2006/04/15 08:20)


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9 コメント

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日本の覚悟 (PJ)
2006-04-20 14:00:11
天候のためということで調査船はまだ沖合いに待機しているようですが、政府は韓国の反応をどの程度予測できていたのでしょうか?

韓国が武力の威嚇に訴えた場合でも実施する覚悟が出来ているのか、それともそこまではしないだろうとタカをくくっていたのか、日本政府の領土に対する見識が問われますね。

お手並み拝見です。(でもガッカリするのはイヤです。)
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PJさまへ (猫研究員。=高峰康修)
2006-04-21 00:06:00
>韓国が武力の威嚇に訴えた場合でも実施する覚悟が出来ているのか



調査船を「丸腰」で送り込もうということですからね。丸腰の調査船を撃沈しようものなら韓国への国際的非難は高まるでしょう。「だからできまい」と、そこまで計算して実施しているのかどうか判然としない面は残りますね。「韓国が竹島近海の国際名として韓国名を国際機関に提案するのをやめたら測量は中止にする」などという妥協案も出ているようです。腰砕けになったら禍根を残しますよ。
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お願いします。 (総理大人)
2006-04-21 00:11:45
「北東アジア秩序…挑戦だ!」ってなんか戦争でも起きそうなセリフ。ちょっと腹立ってしまいました。どっちが挑戦だか。

いたずらに日本人の反韓感情をあおるだけ、韓国内の反日感情を煽るだけで何の生産性もない。



日本は海洋調査権行使を留保しながらも、外交交渉を優先させる方針のようですが、これが韓国に諸外国にどのように映るんでしょうか。

粛々と冷静に(日本国民も冷静に)、海洋調査すればいいと思ったんです。そうすれば、韓国の騒ぎっぷりとの濃淡が出て、ノムヒョンのセンスのなさがより浮き彫りになるかなあと。まさか拿捕はしないでしょうし。

師匠に現時点で何がベストかっていうのお聞きしたいと思うんです。



返信する
>提案するのをやめたら測量は中止 (PJ)
2006-04-21 11:34:48
これもどうかと思うんですよねぇ。

結局、消極的な決着だし。

でも、韓国が武力も辞さないと言ってるところに調査船を出せば、対外的には日本側の挑発と受け取られるのでは?とも思うし。日本は『竹島は韓国のものだ』と言う必要は無いが竹島は返って来ないという事実を受け入れなければならない、って言う人もいるし。

このまま引き下がって『韓国に威嚇を受けた』と訴えるんだろーか?と心配してるところに国会議員が打ち揃って靖国参拝・・・。

どーなるんだろう。
返信する
Unknown (猫研究員。=高峰康修)
2006-04-21 12:24:52
>総理大人さま

今回は、巡視艇をつけて送り出し、粛々と調査を実施べきだと思いますよ。一応、係争地域ですから、間違いがあってはいけないので丸腰はよくないです。

また「近海の韓国名を国際機関に提案するのをやめたら中止にする」という妥協案だったら、こちらのカードは測量よりもっとふっかけておくべきでした。したがって、これは採るべきでない。



>PJさま

>竹島は返って来ないという事実を受け入れなければならない、って言う人



こう言ってしまうと、北方領土なんて「何をかいわんや」ということになってしまいます。また、中国は日本の対応に注目していると思いますよ。今さら下手に引くと尖閣の問題で変なメッセージを送ることにつながります。



>韓国が武力も辞さないと言ってるところに調査船を出せば、対外的には日本側の挑発と受け取られるのでは?



そうならないためにも、国際法上日本が測量を行う行為は正当であることをもっとアピールすべきなんですね。

靖国参拝は春の例大祭じゃないですか?たまたま時期が重なっただけだと思います。
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お返事いつもありがとうございます (総理大人)
2006-04-21 22:03:15
>巡視艇をつけて送り出し

>一応、係争地域



そうですよね。これによって韓国を刺激するのはこの際全然構わないんだと思いますが、他の国々に向けてのメッセージとして、



>国際法上日本が測量を行う行為は正当である



にも関わらず、韓国が大騒ぎで



>武力も辞さないと言ってるところに



送るんだから、怖くて巡視艇つけます。ってことをアピールしてほしい。



>「近海の韓国名を国際機関に提案するのをやめたら中止にする」という妥協案だったら、こちらのカードは測量よりもっとふっかけておく



何をふっかけられますかね。相応のレベルとしてどんな吹っかけ方があるのか想像できる脳がなかったです。

「竹島近海を海洋調査する上に、竹島が我が国の領土あることを示す詳細な資料を外務省HPに韓国の主張を論破するため韓国語でも記載するし、東海じゃなくて日本海だってことも韓国語で詳細に説明してあげるし、海保のHPももっと詳しく書くし、これらをちゃんと読め、と韓国の国民に投げかけた上に、そのため竹島視察を日程に含めると言った上に…」とか?

現実的には今回の「海洋調査」は精一杯のアピールなのかなあって。















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総理大人様へ (猫研究員。=高峰康修)
2006-04-22 06:33:05
>相応のレベルとしてどんな吹っかけ方があるのか



「具体的なことは後で書くとしてまずは抽象論を書いておこう」と思ったのですが、国家として品格を失わない範囲で、なおかつふっかける策は、なかなか思いつきませんね。書いておられる”視察”はよいかもしれません。調査+上空からの視察を通告しておいて「取り下げれば今回は視察は中止する」といった具合に。

国際司法裁判所の見解に「ペーパープロテスト(口頭だけの抗議)は不十分」というのがるので、国際司法裁判所への付託を呼びかけることと、調査・測量、上空からの視察を地道に積み上げていくことは不可欠です。日本に領有権があるという論拠も外務省がもっと積極的に広報していく必要があります。 もちろん外国語で。
返信する
ありがとうございます。 (総理大人)
2006-04-22 08:33:42
なんでも伺ってみるものです♪師匠にはお手数かけましたが…。



>調査・測量、上空からの視察を地道に積み上げていくことは不可欠です。



なんですね。でも、やっぱスクランブルかけられるんでしょうかね。



>国際司法裁判所の見解に「ペーパープロテスト(口頭だけの抗議)は不十分」



そうなんですか。では、ICJに付託って言ってる中での日本の過去からの行動は、全体的になんていうかやっぱり弱腰なわけなんですね…。

返信する
総理大人様へ (猫研究員。=高峰康修)
2006-04-24 02:57:40
国際法の考え方は、敢えて言えば、民法に近いところがあって、権利を主張するにはある程度の自助努力が求められるわけです。「ペーパープロテスト(口頭だけの抗議)は不十分」という見解ですが、ちょっと曖昧な面もあり、「第三国の目から見て十分主張しているなと分からなければダメだ」というぐらいのニュアンスかもしれません。日本政府は「ICJに付託せよ」と主張していますが、実行行動があまり伴っていないので、不十分だと思いますよ。そもそも日本国民自身の多くにこの事実が知識として行き渡っているのかあやしいところです。
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