猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

情報管理について総合的に考える必要―Winnyだけではない

2006-03-16 01:02:00 | 情報化社会
 情報交換ソフトWinnyを通じた情報漏洩問題について、これ以上個々の事例をフォローするのはやめておきますが、一点だけコメントしておきたい。それは、Winnyばかりに焦点が当たりがちだということである。もちろん、Winnyの危険性はきわめて大きく、使用を控えるべきだというのは間違いではないのだが、情報管理体制そのものについて、ひいては情報管理に関する意識の涵養について、もっと焦点をあてるべきである。
 このように考えていたところ、読売の社説でほぼ同趣旨のことを書いてあった。まさに「わが意を得たり」である。「大量流出したのがパソコンのデータではなく、紙の文書と考えてみれば、事態の異常さが浮き彫りになる。流出が起きた職場では、重要な文書を職員が勝手にコピーして外部に持ち出せるのか。自宅に持ち帰れるのか。国や自治体には、機密情報、個人情報が大量にあるが、これで管理は大丈夫か。」というくだりは大変分かりやすいたとえである。防衛庁が公費でパソコンを購入して支給する件に関しても「情報管理の徹底が大前提だ。」と釘を刺しているのは正鵠を射ている。難を言えば、読売社説は政府や関係機関の責任のみにしか言及していない点である。政府や関係機関に重要な機密が特に集積されていることは間違いないが、金融機関やエネルギーや交通インフラに携わる民間企業をはじめとする「民」も情報に関して脆弱であってはならない。これらは、サイバーテロ対策を考える上での重点である。
 そうはいっても「情報を持ち出させない。持ち出す場合は、漏れても内容を知られないように暗号化する。職員の情報管理教育も徹底して、対策がきちんと守られていることをチェックする。」という結論は極めて妥当であり、民間にもそれが当てはまるのだと正しい認識を持つ必要がある。
 今回明るみになった一連の事件は、情報化社会の脆弱性を白日の下にさらしてくれた。これを機会に、官民が連携して情報管理の強化に取り組まねばならない。研究開発、専門家の育成、国民の意識向上など、情報最先進国である米国で2000年にすでに出されたプログラムを、日本も遅ればせながら見習うべきである。情報化社会では「情報の民間防衛」という意識が必須である。


(参考過去ログ)
『情報後進国日本―警察、NTT、生保などでもWinnyで情報流出』
『情報流出、陸海空自衛隊全てに拡大』


(参考記事)
3月15日付・読売社説
[情報流出続発]「『ウィニー』だけが問題なのか」


 悪いのは、「ウィニー」なのだろうか。やはり、情報を扱う側の責任が極めて重い。
 政府の機密や個人情報などがインターネットに大量流出する騒ぎが連日、表ざたになっている。やり玉に挙げられているのは、ファイル交換ソフト「ウィニー」だ。
 このソフトは、インターネットに接続されたパソコン同士で音楽や映像ファイルを交換する目的で開発された。ところが、ウィニーに感染して悪さをするコンピューター・ウイルスが出てきた。
 感染すると、パソコン内のデータを勝手にインターネットに流出させる。
 流出騒ぎでは、いずれの例でも、ウィニー入りの私物パソコンに、重要なデータを入れていた。しかもウイルスに感染していたため、漏れた。だからウィニーが悪い、となる。
 岡山、愛媛県警などで捜査情報の流出が相次いで明るみに出た警察庁も、漆間巌長官が、「ウィニーを自分のパソコンに入れて使うとは、警察職員としての意識が欠けている」と述べている。
 だが、ウィニーのせいだけにしていては問題の本質を見失う。むしろ一連の情報流出騒ぎで露呈したのは、流出が起きた組織の情報管理のお粗末さだ。
 どうして私物パソコンに、重要な情報やデータが簡単にコピーされ、持ち出されてしまうのか。機密を扱う職場なら当然あるべき対策がない。
 大量流出したのがパソコンのデータではなく、紙の文書と考えてみれば、事態の異常さが浮き彫りになる。
 流出が起きた職場では、重要な文書を職員が勝手にコピーして外部に持ち出せるのか。自宅に持ち帰れるのか。国や自治体には、機密情報、個人情報が大量にあるが、これで管理は大丈夫か。
 政府や関係機関は、情報管理体制を根底から見直さなくてはならない。
 防衛庁は、業務に私物のパソコンを使わせていたことが問題とし、公費でパソコンを購入して支給するという。
 その場合も、情報管理の徹底が大前提だ。機密情報をコピーして外部に持ち出せるなら、危険性は変わらない。ウィニーと関係なく、情報を流出させるウイルスさえある。支給されたパソコンの私的使用を厳しく禁じるのも当然だ。
 情報を持ち出させない。持ち出す場合は、漏れても内容を知られないように暗号化する。職員の情報管理教育も徹底して、対策がきちんと守られていることをチェックする。
 いずれも、痛い目を見た組織では、日常やっていることだ。情報管理の本質を見誤ってはならない。
(2006年3月15日1時46分 読売新聞)


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