猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

「骨太の方針06」閣議決定

2006-07-09 20:15:53 | 財政・税制
 政府は7日、経済財政諮問会議(議長=小泉純一郎首相)がまとめた経済財政運営の基本方針「骨太の方針06」を閣議決定した。
 「骨太の方針06」の最大の柱は、2011年度のプライマリー・バランス(借金と元利払いを除く収支)の黒字化に向けて、11兆4000億~14兆3000億円の歳出を削減するという目標の設定である。2011年度にプライマリー・バランスを黒字化するには16兆5000億円の財源が必要なので、その大部分を歳出削減によってまかない、消費税引き上げによる分は2~5兆円(約1~2%分に相当)だということだ。ただし、具体的な引き上げ時期や引き上げ幅については先送りしている。橋本内閣の時に消費税を3%から5%に引き上げたことが結果として景気回復の腰を折ったことを教訓として、景気の動向をもう少し見極めたいということなのかもしれないが、それならばそうと明確に説明しなければ、読売の社説にある「消費税率の引き上げをなんとしても先送りする――。こんな思惑ばかりが浮かび上がる」という印象を排除できない(必ずしも同社説に隅から隅まで賛成というわけでもないが…)。また、消費税の税率の長期的な展望を具体的に数値で示しておかないと、どこまで引き上げられるのか国民も疑心暗鬼になるというものだ。
 消費税の引き上げ時期は、当初は07年度が想定されていたが、政府与党の方針では07年度は見送りたいということらしい。その結果、07年度予算編成において、年金財政への信頼を確保する措置として、基礎年金への税金投入の割合である国庫負担率を数%程度引き上げる方針を固めた。財源を明確にしないで国庫負担率を引き上げるというのは、ちぐはぐな感じが否めない。



(参考記事1)
<骨太の方針>閣議決定、07年度予算から反映させる
 政府は7日、経済財政諮問会議(議長、小泉純一郎首相)がまとめた経済財政運営の基本方針「骨太の方針06」を閣議決定した。小泉政権最後の骨太の方針は、財政健全化を目指す歳出・歳入一体改革が柱で、2011年度の基礎的財政収支(借金と元利払いを除く収支)の黒字化に向けて、11兆4000億~14兆3000億円の歳出を削減する目標を盛り込んだ。07年度予算から反映させる。
 11年度の財政収支黒字化に必要な財源は16兆5000億円で、歳出削減で足りない部分は、増税などの増収措置で穴埋めする。09年度の基礎年金の国庫負担割合引き上げのため安定財源の確保が必要と指摘し、消費税率1~2%程度の引き上げと、社会保障目的税化の方向性をにじませた。ただ、税率の上げ幅や時期などの具体的議論は先送りした。
 財政健全化の中長期的な目標として、2010年代半ばまでに、国・地方ともに債務残高の国内総生産(GDP)比を安定的に引き下げることを目指すとした。
 骨太の方針はこのほか、▽徹底した政府のスリム化▽成長力の強化▽国・地方間のバランスのとれた財政再建▽将来世代に負担を先送りしない社会保障制度の構築▽国有財産の売却などによる政府資産圧縮――などの原則を掲げた。【尾村洋介】
(毎日新聞) - 7月7日23時3分更新

(参考記事2)
[基礎年金の国庫負担引き上げ、消費税論議先送りで]
 政府は、2007年度予算編成で、基礎年金への税金投入の割合である国庫負担率を数%程度引き上げる方針を固めた。
 04年の年金改革では、07年度に消費税を含む税制の抜本改革が実施されることを想定していた。しかし、政府・与党内では、07年度に消費税率を引き上げる法案を国会に提出することへの慎重論が強まっているため、年金財政への信頼を確保する措置として、国庫負担率を上げることにしたものだ。
 政府は、週明けにも閣議了解される来年度予算の概算要求基準(シーリング)で、引き上げに必要な財源について、「予算編成過程において検討する」と明記する予定だ。
 04年の年金改革では、保険料収入などに左右されず、税投入による安定した年金財政を確立するため、「09年度までに基礎年金の国庫負担率を50%まで引き上げる」と定めた。05、06年度に数%ずつ引き上げ、消費税率引き上げ後に一気に50%に上げる予定だった。06年度予算時点では、約35・8%(約6兆円)。50%にするには、約2兆3000億円が必要とされる。
(読売新聞) - 7月8日14時37分更新

(参考記事3)
[7月8日付・読売社説:骨太の方針、消費税率引き上げがなぜ言えぬ]
 消費税率の引き上げをなんとしても先送りする――。こんな思惑ばかりが浮かび上がる。
 今後の経済財政運営の指針となる「骨太の方針2006」が閣議決定された。
 小泉内閣が示す最後の戦略方針だ。最も重要な課題である財政再建について、消費税率の早期引き上げを含む解決策を大胆に打ち出すべきだった。
 だが、税制改革の必要性がお題目としてうたわれただけで、やる気はほとんど伝わってこない。
 来年の参院選をにらんで、国民に不人気な増税策を回避したいと考えたからだろう。社会保障の財源確保や財政再建には、消費税率の早期引き上げが欠かせないことを率直に訴えるのが政府・与党の責任ではなかったか。
 5年前の政権発足以来、郵政4事業の民営化など、小泉内閣はさまざまな改革に取り組んだが、消費税には常に後ろ向きだった。最終局面でも姿勢が変わらなかったことは極めて残念だ。
 だれが次の首相になろうとも、消費税率の早期引き上げに、正面から取り組むよう強く望みたい。
 骨太方針の2本柱は、「新経済成長戦略」と「歳出・歳入一体改革」だ。成長戦略で経済の安定成長を実現し、同時に歳出入改革を進めて財政再建のめどをつける、というシナリオを描いている。
 財政再建の当面の目標は、5年後に基礎的財政収支を黒字化することだ。年率3%の名目成長を前提に、黒字化に必要な16・5兆円を、歳出削減と増税で確保するとしている。
 問題は、骨太方針の2本柱が連動していない点だ。成長戦略には、外国人観光客を増やすための空港整備や、地域活性化のための投資促進など、財政支出を伴う項目が少なくない。
 ところが歳出改革の方は、公共事業はじめ、多くの歳出項目で予算の大幅カットが盛り込まれた。歳出削減額を積み上げないと、増税で賄わなければならない分が増えるためだ。これで、ハードルの高い3%成長が実現できるのか。疑問視する声も少なくない。
 経済成長の前提が崩れれば、思うような税収が確保できず、2~5兆円で済むと試算した税制改革による増税分だけでは、基礎的収支の黒字化は不可能だ。この矛盾をどう解きほぐすのか。最初からそれなりの消費税による負担を求めておいた方が、説明がつくというものだ。
 自民党税制調査会の一部には、財政再建の実現のためには、早期に消費税率を10%に引き上げなければならないとの意見もある。これが正論であろう。
(2006年7月8日2時41分 読売新聞)


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3 コメント

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毎年少しずつ・・・・ (tsubamerailstar)
2006-07-10 07:21:22
基礎年金の国庫負担に関しては、平成21年までの何れかの年度に2分の1まで引き上げられる間、3分の一+α(昨年は1000分の11)の引き上げが行われているようです。

数年前では想像もつかないことですが、雇用保険の求職者給付の国庫負担の廃止が検討材料に上っているのが目を引きました。

基礎年金に関しては徴収体制をきちんとしないと如何ともし難いですね。私は以前から国税と一本化する以外にないと思っております。それと、安倍提言でそんなこと言っていましたが、就業形態の多様化をふまえ、厚生年金保険の適用範囲の拡大を図ることでしょう。具体的には正社員の労働時間の4分の3という目安を2分の1、週20時間以上の短時間労働者まで拡大するべきであろうと思います。

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う~ん (PJ)
2006-07-10 10:36:37
通常予算の何倍もあるという特別予算や特別法人は、もう整理できたんでしょうか?

『消費税を上げなくても大丈夫なのか?』という議論には、

『印象操作じゃないのか?』という疑念を拭いきれません。

先日はテレビで、長年掛けて来た年金の記録が消えるという恐ろしいリポートがあり、ぞっとしました。

倹しい庶民の懐から抜いたお金で、役人や官僚がぬくぬく暮らしているのなら、庶民に税金を払う義務なんてあるでしょうか?

整理したというのなら、どこをどんな形で整理したのか、

整理できない理由が何なのか、もっと説明があってしかるべきだと思います。
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コメントありがとうございます (猫研究員。=高峰康修)
2006-07-10 23:11:17
>tsubamerailstarさん

基礎年金の徴収体制を国税と一本化するというのは、民主党が提唱していたはずです。両方とも「国民負担」としてひとくくりにされるぐらいだから、一本化は理屈にかなっています。

それから、厚生年金保険の適用範囲の拡大は是非ともやるべきでしょう。厚生年金保険の適用範囲を拡大することで、企業が正社員として雇用するインセンティブが生み出されるのか、労働者が積極的に契約的立場でありながら厚生年金の恩恵に浴することができる立場をとる傾向になるのか、どちらにせよ、生活の安定に繋がることですよね。



>PJさん

特別会計は、確か200兆円を超えていたと思うのですが、整理の方向性を打ち出した後、進捗具合があまり伝わってきませんね。マスコミも、地味なネタですがきちんと取材して報道するべきだと思いますよ。ただ、1年や2年でいきなり全部廃止するということは現実問題として混乱を招くので無理でしょう。
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