さる1月28日に麻生外務大臣が公演で、靖国参拝問題について「英霊からしてみれば、天皇陛下のために『万歳』と言ったのであって、総理大臣万歳といった人はゼロだ。天皇陛下の参拝が一番だ」と述べ、また天皇陛下が靖国参拝をすることができなくなった理由は、公私の別をつける必要に迫られるようになったからだと指摘した。大変正確な認識であると思う。「A級戦犯を合祀するようになったので天皇陛下が参拝できなくなった」とする説があるが、それは誤りであって謬説というものである。
昭和天皇の靖国御親拝は、昭和20年11月20日から昭和50年11月21日まで、数年間隔で8回実現している。ところが、昭和50年の8月15日に三木首相(当時)が「これは私的参拝」であるなどとうそぶいて以来、首相や閣僚の靖国参拝に際しては「公人ですか?私人ですか?」とマスコミが愚にもつかない質問を繰り返すのが恒例行事となってしまった。昭和50年11月21日の最後の御親拝は今更中止するわけにもいかないので辛うじて実現したというのが真相であろう。それ以降は天皇の身分を公私に分けるわけにも行かないので御親拝が不可能になってしまった。これが麻生外相の言うところの「公人、私人の話」の経緯である。安倍官房長官も記者会見で、天皇陛下が参拝されるとしたら公私が問題となるとして、あくまでも仮定の話として「私人ということになるだろう」と述べている。やはり、三木元首相の「私人として参拝した」の一言が諸悪の根源である。小泉首相が麻生外相の発言をとがめだてしなかったのは極めて当然のことだ。
ちなみにA級戦犯が合祀されたのは三木内閣の後の福田内閣での話である。昭和天皇はA級戦犯について「昨日まで朕の信頼していた臣僚である」と仰せになったという記録があり、昭和天皇御自身がA級戦犯合祀に反対して参拝を辞めてしまわれたという説も誤りであろう。さらには、昭和61年の8月15日に中国の圧力に屈して中曽根首相が参拝を断念した際には、昭和天皇は「この年のこの日にもまた靖国のみやしろのことにうれひはふかし」と御製を詠まれている。「この年のこの日にもまた」というのだから毎年憂えていらっしゃったということになる。
天皇陛下の靖国御親拝が実現するとしたら、8月15日ではなくて春か秋の例大祭が望ましい。総理大臣以下閣僚も同様だが、8月15日となると政治的色彩や歴史認識がどうしても絡んでくるからである。以前に麻生氏は「わざわざ負けた日に行くこともあるまい」と言ったことがある。なるほどもっともな話ではある。ただし、現在は「首相は8月15日に参拝するな」と隣国に内政干渉まがいのことを言われているので、それこそアーミテージ氏が言う通り「参拝するなといわれるからこそ参拝しなければならない」のである。8月15日に「不戦の誓いとして」というのも理屈では成り立つけれども、それよりは、由緒正しい行事である例大祭に我が国の祭祀の頂点であられる天皇陛下が純粋に祭祀の行為として参拝されるのがあるべき姿ではないかと思う。
靖国問題を取り上げてことさらに反中感情を煽り立てることは、筆者の望むところではない。麻生外相の主張が正確なものであると考えるので改めて紹介したいと思ってまとめてみた次第である。
(参考記事1)
[天皇の靖国神社参拝を 外相、公私区別が問題]
麻生太郎外相は28日午後、名古屋市で講演し、小泉純一郎首相の靖国神社参拝問題に関連し「英霊からしてみれば、天皇陛下のために『万歳』と言ったのであって、総理大臣万歳といった人はゼロだ。天皇陛下の参拝が一番だ」と述べ、天皇の参拝実現が望ましいとの認識を示した。
天皇の靖国参拝は1975年11月以来、行われていない。麻生氏は「なぜ(参拝)できなくなったのかと言えば、公人、私人の話(問題)だから、それをどうすれば解決できるかという話にすれば、答えはいくつか出てくる」と指摘、A級戦犯の合祀(ごうし)が天皇が参拝しない理由ではないと強調した。
参拝実現の環境整備として宗教法人格の見直しなどが必要との認識を示したものとみられる。首相参拝で悪化している中韓両国との関係がさらに冷え込むのは必至だ。
(共同通信) - 1月28日22時59分更新
(参考記事2)
[麻生外相の個人的考え 首相、天皇靖国参拝発言で]
小泉純一郎首相は31日未明、麻生太郎外相が天皇の靖国神社参拝実現が望ましいとの認識を示したことに関し「麻生氏自身の考え方だから、とやかく言うことではない」と述べ、麻生氏の個人的見解との認識を示した。その上で「私は誰に対しても行くべきとか、言うことはしない」と強調した。首相官邸で記者団に語った。
(共同通信) - 1月31日0時51分更新
(参考記事3)
[麻生外相発言を強く批判 新華社]
【北京29日共同】中国の国営通信、新華社は29日、天皇の靖国神社参拝実現が望ましいとした28日の麻生太郎外相の発言を「こともあろうに天皇参拝を吹聴」との見出しで伝え、強く批判した。
新華社電は、靖国参拝は日本の指導者が正確に歴史に直面していないことを反映した「厳粛な政治問題」だと指摘し、麻生外相は「中国が反対すればするほど首相は参拝をやめられなくなるといった詭弁(きべん)を使っている」と非難。
その上で、麻生外相の談話は天皇の参拝を求める右翼勢力の立場を代表するものだと批判した。
(共同通信) - 1月29日23時7分更新
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昭和天皇の靖国御親拝は、昭和20年11月20日から昭和50年11月21日まで、数年間隔で8回実現している。ところが、昭和50年の8月15日に三木首相(当時)が「これは私的参拝」であるなどとうそぶいて以来、首相や閣僚の靖国参拝に際しては「公人ですか?私人ですか?」とマスコミが愚にもつかない質問を繰り返すのが恒例行事となってしまった。昭和50年11月21日の最後の御親拝は今更中止するわけにもいかないので辛うじて実現したというのが真相であろう。それ以降は天皇の身分を公私に分けるわけにも行かないので御親拝が不可能になってしまった。これが麻生外相の言うところの「公人、私人の話」の経緯である。安倍官房長官も記者会見で、天皇陛下が参拝されるとしたら公私が問題となるとして、あくまでも仮定の話として「私人ということになるだろう」と述べている。やはり、三木元首相の「私人として参拝した」の一言が諸悪の根源である。小泉首相が麻生外相の発言をとがめだてしなかったのは極めて当然のことだ。
ちなみにA級戦犯が合祀されたのは三木内閣の後の福田内閣での話である。昭和天皇はA級戦犯について「昨日まで朕の信頼していた臣僚である」と仰せになったという記録があり、昭和天皇御自身がA級戦犯合祀に反対して参拝を辞めてしまわれたという説も誤りであろう。さらには、昭和61年の8月15日に中国の圧力に屈して中曽根首相が参拝を断念した際には、昭和天皇は「この年のこの日にもまた靖国のみやしろのことにうれひはふかし」と御製を詠まれている。「この年のこの日にもまた」というのだから毎年憂えていらっしゃったということになる。
天皇陛下の靖国御親拝が実現するとしたら、8月15日ではなくて春か秋の例大祭が望ましい。総理大臣以下閣僚も同様だが、8月15日となると政治的色彩や歴史認識がどうしても絡んでくるからである。以前に麻生氏は「わざわざ負けた日に行くこともあるまい」と言ったことがある。なるほどもっともな話ではある。ただし、現在は「首相は8月15日に参拝するな」と隣国に内政干渉まがいのことを言われているので、それこそアーミテージ氏が言う通り「参拝するなといわれるからこそ参拝しなければならない」のである。8月15日に「不戦の誓いとして」というのも理屈では成り立つけれども、それよりは、由緒正しい行事である例大祭に我が国の祭祀の頂点であられる天皇陛下が純粋に祭祀の行為として参拝されるのがあるべき姿ではないかと思う。
靖国問題を取り上げてことさらに反中感情を煽り立てることは、筆者の望むところではない。麻生外相の主張が正確なものであると考えるので改めて紹介したいと思ってまとめてみた次第である。
(参考記事1)
[天皇の靖国神社参拝を 外相、公私区別が問題]
麻生太郎外相は28日午後、名古屋市で講演し、小泉純一郎首相の靖国神社参拝問題に関連し「英霊からしてみれば、天皇陛下のために『万歳』と言ったのであって、総理大臣万歳といった人はゼロだ。天皇陛下の参拝が一番だ」と述べ、天皇の参拝実現が望ましいとの認識を示した。
天皇の靖国参拝は1975年11月以来、行われていない。麻生氏は「なぜ(参拝)できなくなったのかと言えば、公人、私人の話(問題)だから、それをどうすれば解決できるかという話にすれば、答えはいくつか出てくる」と指摘、A級戦犯の合祀(ごうし)が天皇が参拝しない理由ではないと強調した。
参拝実現の環境整備として宗教法人格の見直しなどが必要との認識を示したものとみられる。首相参拝で悪化している中韓両国との関係がさらに冷え込むのは必至だ。
(共同通信) - 1月28日22時59分更新
(参考記事2)
[麻生外相の個人的考え 首相、天皇靖国参拝発言で]
小泉純一郎首相は31日未明、麻生太郎外相が天皇の靖国神社参拝実現が望ましいとの認識を示したことに関し「麻生氏自身の考え方だから、とやかく言うことではない」と述べ、麻生氏の個人的見解との認識を示した。その上で「私は誰に対しても行くべきとか、言うことはしない」と強調した。首相官邸で記者団に語った。
(共同通信) - 1月31日0時51分更新
(参考記事3)
[麻生外相発言を強く批判 新華社]
【北京29日共同】中国の国営通信、新華社は29日、天皇の靖国神社参拝実現が望ましいとした28日の麻生太郎外相の発言を「こともあろうに天皇参拝を吹聴」との見出しで伝え、強く批判した。
新華社電は、靖国参拝は日本の指導者が正確に歴史に直面していないことを反映した「厳粛な政治問題」だと指摘し、麻生外相は「中国が反対すればするほど首相は参拝をやめられなくなるといった詭弁(きべん)を使っている」と非難。
その上で、麻生外相の談話は天皇の参拝を求める右翼勢力の立場を代表するものだと批判した。
(共同通信) - 1月29日23時7分更新
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私もあなたの考えに賛同します。中・韓国を揺れ動かしている麻生外相はすばらしい!また、独特でユニークな表現を交えてのマスコミ対応も、興味深いものがあります。しばらくは麻生外相から目が離せませんね。
先日、靖国神社を参拝しました。やたらと「靖国問題」ばかりが取り上げられていますが、「神社」としての魅力にスポットライトがあたることがありません。靖国批判をする人に限って、靖国に行ったことのない人が多いのも、これまた事実。
毎年、世界各国の要人が戦没者への敬意をあらわすために参拝されています。あのダライラマ14世だって参拝してくれました。そんな事実があることさえも知らない日本人も多いのではないでしょうか。
ともかく、昭和50年の終戦30周年の年が最後になっている「天皇参拝」の復活をひたすら祈っております。
これ、小泉総理の就任前ならクビがいくつ飛ぶことやらって発言ですよねぇ。
海外からの依頼です。
お手数ですが、アンケートに協力していただけませんでしょうか。
アンケートは、日本語です。
本当に知らないのか、歪曲しているのか…。どちらにしても大多数のマスコミや有識者は罪が重いです。
>伊藤純子さま
はじめまして!
麻生外相の発言はひねりが効いているというかワサビがきいているというか、的確な内容を大きなインパクトをもって伝えることのできる政治家だと見受けられます。文字通り「ステーツマン」だなあと感じます。
ブッシュ大統領も前々回の訪日では靖国参拝を希望したのに外務省が大慌てで断ったと伝わっていますよね。何という痛恨事!
こちらこそ、これからもどうぞよろしくお願いしたします。
>keikoさま
全くもってその通りですよ。靖国問題が外交カードとして無力化されれば(というか現にされつつありますが)小泉内閣の歴史的功績といえます。報ステ見たかったなぁ。
>あくてぃぶ・そなあさま
了解です。行ってみます。
私は当初麻生外相の発言に納得いかなかったのですが、次第に真意がわかり理解した次第です。
しかし、ライブドアの件、米国産牛肉の件などが続き、自民党は真のリーダーが誰になるのか混沌としてきましたね。
ところで、こちらのブログをリンクさせていただきました。不都合があれば仰ってください。
「それでは今後ともよろしくお願いします。」
を忘れていました。
コメントありがとうございます。麻生大臣は、なかなかよい問題提起をしたと思います。
自民党次期総裁選の件は、あと7ヶ月ありますので、どう動くか要注目です。
リンクは大歓迎です!ありがとうございました。こちらからもリンクしておきます。
総理の参拝と、陛下の参拝とではその意味合いも重みも違います。陛下が参拝されることは、中国や韓国が批判する理由には当たらないでしょうし、当然、陛下は平和を尊重されると常々おっしゃっていましたから、戦争美化ととるほうがおかしいと思います。
それよりも、靖国神社自身が、諸外国の戦没者も祀っているという事実をどうして公にしていないのかが問題だと思います。靖国神社の本殿の左横に、太平洋戦争に巻き込まれて亡くなったアジア・太平洋諸国の方々を祀るお社(鎮霊社)があることは、ほとんどの国民が知らないのではないかと思いますが、私も最近になってようやく知りました。この事実を含め、日本国民がもっと真剣にこの問題を考えていかないと、永遠にこの問題は解決しないと思います。
天皇陛下は、先のサイパン島慰霊訪問でもお示しになったように、敵味方の区別なく、また朝鮮半島出身の犠牲者にも配慮されるなど、純粋に世界平和を願っていらっしゃる。また、新年の一般参賀でも「世界が平和でありますように」とおっしゃるなど常に世界の平和のことが頭におありなのだと思います。
>それよりも、靖国神社自身が、諸外国の戦没者も祀っているという事実をどうして公にしていないのかが問題だと思います。
これは実に重要なことです!こういう事実は多数の国民が認識しておくべきことですよね。このブログでも折に触れて取り上げていければと思います。