・堀川恵子作・第48回大佛次郎賞受賞作品。
(広島の軍港・宇品に置かれた陸軍船舶司令部)
(前半は田尻昌次中将、後半は佐伯文郎中将という
高潔な軍人を据え、彼らの英知と懊悩を
自叙伝、証言、日記から再現する確かな
筆致に思わず「膝を打ち」ました)
・人類初の原子爆弾は、なぜヒロシマに投下
されなくてはならなかったか?
(アメリカの公文書では京都、広島、横浜、小倉が
狙われ、特に広島、京都がAA級。
最終的には古都を破壊すれば日本人の反発が強まり
占領後の統治が難しくなるとの懸念から外された。)
(広島が選ばれた理由は、重要な「軍隊の乗船基地」があり
隣接する丘陵が爆風の集束効果を生まじさせて被害を
増幅させることができる。・・・すごい緻密な洞察力!)
・広島で軍隊の乗船基地といえば、海軍の呉ではなく、
陸軍の「宇品」である。
(日清戦争、日露戦争、シベリア出兵、満州事変、日中戦争
そして太平洋戦争とこの国のすべての近代戦争において
幾百万もの兵隊が宇品から戦地へ送り出しました。)
・その日の朝、宇品の空は一点の雲もとどめぬ晴天が広がった。
海原は風ひとつたたず、真夏の日差しが炎熱焼くがごとく
照りつけている。食卓の机の上に「ピカッ」と真っ白な
閃光が走った。(1945年8月6日午前8時15分)
・376ページ、前後左右の資料から紡ぎだす、迫真の
文章力・・・ページをめくるのももどかしかった。
※ よい本に出合えました! 「読書の秋」始まり!始まり!