最近、メディアで、年金問題をはじめとする社会保障改革の話しが盛んに取り上げられています。報じられる内容をご覧になって、ビックリしたり不安になったりされている方々も多いはず・・・。なので、現在の論議状況について少し解説を。
ご存じの通り、政府は昨年から継続的に、社会保障改革の全体像と、必要な財源を確保するための税制抜本改革の基本方針を示すべく議論を進めてきました。その結果、6月30日に「社会保障と税の一体改革成案」を閣議決定して、議論の大枠と今後の工程表を確認しました。詳しくはこちらを:
目標は、来年の通常国会に改革に必要な法案を提出すること。ただそのためには、12月までに結論を出さないといけないので、今、各論について集中的に議論を進めているところなのです。
そして、与党民主党でも、政府側の論議に合わせ、党としての政策とりまとめを行うべく、議論を活発化させています。具体的には、政策調査会の下に「社会保障と税の一体改革プロジェクトチーム(PT)」が設置され、そのPTで大枠の議論を進めているのですが、社会保障の個別課題についての議論は「厚生労働部門会議」に委ねられています。
そこで、厚生労働部門会議の下に課題毎に設置したワーキングチーム(WT)で精力的に議論を進めているのですが、これがもう連日、大変な議論になっているんです。
ちなみに、社会保障と税の一体改革に絡んだ議論を進めているのは、以下のWTです:
- 年金WT
- 医療・介護WT
- 生活保護WT
- 雇用WT
- 障がい者政策WT
医療・介護WTは、来年の診療報酬・介護報酬のダブル改訂に向けた議論が中心。要は、それぞれ引き上げるべきか、現状維持か、引き下げるべきかという議論です。政府内では、財務省を中心に引き下げるべきという意見も強いのですが、民主党は昨年の2010マニフェストでも「引き続き引き上げをめざす」と明記しており、厳しい財政の中でもやはり引き上げを目指すべきだという意見が大勢です。
医師不足や偏在の解消、介護職の処遇改善など、引き上げによって実現すべき課題が大きいと考えるからですね。私もこの立場です。
生活保護WTでは、生活保護のあり方を議論しています。先般も、生活保護受給者が204万人に達しているとの報道があったとおり、生活保護受給者は増加の一途を辿っています。その状況を受けて、議論の方向がどうしても制度の適正化とか、不正受給対策、自立・就労促進機能の強化といった方へ行きがちです。
しかし、私は、日本では生活保護による保護率が1.6%と、ヨーロッパ諸国と比較して格段に低い状態にあること、つまり、本来保護されるべき国民に未だに支援が行き届いていないのが現状ではないかと訴えています。まずは、生活保護が本来果たすべき役割を果たしているのか同か、その上で、適正化や不正受給対策があるべきだという考えですね。
雇用WTでは、直近の課題である「有期雇用規制のあり方」「パート労働法の改正」「高齢者雇用安定法の改正」「雇用保険の暫定措置の扱い」という4点と、中期的な課題である「若年者雇用のあり方」を中心に議論をしていくことを確認しています。私は、これらの議論の前提として、そもそも雇用がどうあるべきかをきちんと議論すべきだと要請しています。
雇用は、「期間の定めのない常用・直接雇用であり、かつ健康で文化的な生活に足る収入が得られるもの」であるべきで、そのことを確認した上で各論の議論を進めていこうという立場です。
障がい者WTは、「障害者総合福祉法」についての議論を進めていますが、基本的には、出来る限り広範に障がい者団体の皆さんの意見をお聞きしようということで、今、精力的にヒアリングを行っています。障がい者の皆さんの福祉を総合的に向上していくための法律なのだから、当事者である障がい者の皆さんの参加・参画によって成案づくりを進めていこうということで、大変重要なアプローチだと思っています。
そして、年金WT。皆さんも最も注目している議論ではないでしょうか。これについてはまた長い解説が必要なので、明日、あらためて解説したいと思います。