石橋みちひろのブログ

「つながって、ささえあう社会」の実現をめざす、民主党参議院議員「石橋みちひろ」の公式ブログです。

福島視察報告

2011-05-08 23:31:40 | 活動レポート
すでにお知らせしていた通り、5月6日(金)、福島県に視察に行ってきました。

訪問したのは、Jビレッジと小名浜コールセンター。視察の目的は、福島第一原発および第二原発で作業にあたっている全ての労働者の安全、健康、衛生、栄養の確保に関する取り組みの現状を調査し、今後の対応強化に向けた与党としての具体的施策の提言に資すること、でした。そして出来れば、個々の作業員の皆さんとも対話し、直接いろいろな意見を伺うと共に、皆さんを激励したいという希望も持って行ったわけです。

結論から言えば、目的の多くは達成出来ませんでした。しかし、現場を直に見ることが出来たことには大いに成果がありました。やはり、現場を見るのと見ないのとでは大違いですね。これは必ず、今後の政府や東電との議論に役立つはずです。

なお、所期の目的の多くが実現出来なかったことについては、一つ大きな理由があるのです。

実は、その翌日の5月7日(土)、細川律夫厚生労働大臣がJビレッジと福島第一原発を訪問されることになっており、その準備に忙しいために、我々の視察には十分な対応が出来ない、と事前に言われていたのです。それを覚悟で訪問を実行したわけですから、まあある程度の状況は覚悟して行ったわけです。

しかしそれにしても・・・いや、ここではあまり批判めいた話はしないようにしておきましょうね。現場を踏めたことを良しとしなければ。

むしろここでは、実際に現場を見て、不十分ながらも説明を聞いて、やはり大きな問題ありと確認した点について、以下、報告しておきます。

1.未経験作業員への事前研修、教育・訓練、健康診断

 初めて原発(管理区域)での作業に従事する未経験作業員には、事前研修や教育・訓練、健康診断が義務づけられていますが、これが適切に実施されているかどうか、確認できませんでした。
 東電からは「研修・訓練は、電力支援チームにより、全ての労働者に対して実施している」という説明がありましたが、現場ではその形跡が確認できなかったのです。唯一、階段の踊り場に簡易的に設置された打ち合わせスペースのような所で、指導員のような方の説明に耳を傾けている作業員の姿を見かけましたが、それが研修なのでしょうか? 
 何より東電は、作業員の動員を協力会社に一任しているという説明があって、だとすれば、どの作業員が初めての勤務なのかをいかに把握しているのが分からないのです。健康診断については一切、情報が得られませんでした。要確認です。

2.被曝線量管理の実情

 現在は、全ての作業員が線量計の交付を受けており、線量計をつけなければ現場に入ることはできないようになっているという説明で、この点については歓迎すべきです。
 しかし、その日の被曝線量については「口頭で」作業員に伝えられていて、累積の被曝線量は伝えられないということです。作業員は自分で毎日、被曝線量を記録しておかなければなりません。また、被曝線量管理は未だに手作業で行われていました。つまり、個々人の累積の被曝線量の管理はまだきちんと行われていないのです。
 どういうことかと言うと、毎日、記録簿に個々人のその日の被曝線量はチェックされているのですが、その記録簿がデータベースに入力されることなく、毎日積み上がっている状態なのです。これはいけません。この記録簿に何かあったらどうするのでしょう? ある日突然、高い線量の被曝を受けてしまった作業員の、これまでの累積被曝線量をこの積み上がった記録簿の中からどうやって知るのでしょう?
 また、3月31日までの間、線量計を着けずに作業をしていた作業員の被曝線量の推計については、「これからやらなければならない」という説明でした。つまり、その間の被曝線量の推計も、累積被曝線量への算入も、現段階では全くやられていないということになります。もしそれが本当だとすれば、現在、累積100ミリシーベルト超えは30人とされていますが、実際はもっと多くの作業員が100ミリシーベルト超えをしているのではないかと危惧されます。
 これらの点は早急に対応が必要です。

3.1ヶ月毎の義務的健康診断の実施

 4月下旬に、厚生労働省から「1ヶ月以上勤務している作業員については電離則56条に基づく健康診断を受けさせること」という指導が東電に対して出されています。これが実際に行われているかどうかという質問に対して、東電側からは「連休明けから始める」という回答がありました。
 Jビレッジのメディカルセンターで行う計画のようですが、①1ヶ月以上作業している労働者の特定、②計画的な健康診断の手配、③十分な医師・看護士の配置など、実施に向けて今後整理されるべき課題は多いと思われます。
 一部メディアでは、すでに健康診断を始めたという報道がされていましたが、現場ではそれは確認出来ませんでした。今後の実施状況をしっかり確認していく必要があります。


以上の点については、今回の視察で本当に正確な情報が得られたのかどうかという検証も併せて必要ですが、今後、早急に対応が図られるよう、取り組みを強化していかなくてはなりません。とりわけ、累積の被曝線量管理については、今後の健康被害や補償問題にも密接にかかわる重要な課題です。これがうやむやにならないよう、事業者によるしっかりとした対応を政府に監督させなければなりません。

しかしJビレッジを訪問して、本当にこれだけ多くの皆さんが、福島原発事故の収束のために協力し、努力していることを改めて確認しました。東電社員も、協力会社の皆さんも、自衛隊や消防の皆さんも、本当に献身的にがんばってくれていります。視察後、「一層、頑張らなければ!」という決意を新たにしたのは言うまでもありません。ただ今回は、一番望んでいた、作業員の皆さんとの直接対話が実現出来なかったのが心残りですが、それはまた別の機会に必ず実現したいと思います。

さて、Jビレッジの後に、東電の小名浜コールセンターにも視察に行きました。こちらは、内部被曝線量チェックのためのホールボディカウンター(WBC)が設置してある場所。これがそのWBCです。





これは、3月末から、東電が原子力緊急時支援・研修センター(JAEA)から借り受けている車載移動式のホールボディーカウンター(WBC)です。福島第一原発および第二原発にあるWBCは、被災後、使用不能になり、現在は復旧しているのですが現場の線量が高すぎて検査に使えません。そこで、この小名浜のWBCが唯一、稼働しているわけです。

設置後、現在まで延べ約800人がこのWBCでチェックを受けたとのことです。現在は、協力会社も含めて、1ヶ月以上作業している作業員には必ず内部被曝線量チェックを受けさせるように要請を出しているようで(これは大きな前進!)、最近になってチェックを受けに来る作業員が増えているという説明でした。


(WBC検査受付に掲げられた説明書き)

ただ、この小名浜でのWBCの検査データは、解析のために一旦、JAEAに送られ、その結果が東京電力本社経由で作業員に伝えられるシステムになっています。そのため、検査結果が作業員に伝わるまで三日程度要しています。中には、すぐに結果を手にしたい作業員(例えば、解除の際、すぐに別の原発で仕事をしたい作業員など)もいて、その場合は柏崎刈羽原発まで行って検査を受けているという話でした。

つまり、内部被曝線量の確認のためには、小名浜だけでなく、柏崎刈羽や、その他の原発も含めて全てのデータを確認しなければならないということですね。

なお、当初は、福島原発で作業をしている作業員の多くがこの小名浜コールセンターで寝泊まりをしていると伝えられていましたが、事実ではなかったようです。ここは当初より、原発作業員の集合場所(一次通過拠点)として使用され、出発前にここで一泊してからJビレッジに向かう流れだったとのこと。Jビレッジの放射線量低下に伴い、作業員は4月末頃から直接Jビレッジに集合することになっているので、現在はWBCの検査場としてのみ使われています。


(かつて多くの作業員がJビレッジ出発前に宿泊した大広間)

その大広間の壁には、各地の子どもたちから贈られた激励のメッセージが数多く掲げられていました。下の写真は、淡路島の子どもたちからのメッセージ。「多くの作業員が、このメッセージに元気づけられて現場へ向かってきました」とのお話を聞き、感動しました。本当に、多くの国民が作業員の皆さんを応援しています。私たちは、政治の立場から、作業員の皆さんに安全と安心を感じていただけるよう、何としても応援をしていかなければなりませんね。