石橋みちひろのブログ

「つながって、ささえあう社会」の実現をめざす、民主党参議院議員「石橋みちひろ」の公式ブログです。

福島原発作業員の安全・健康確保について(続報その2)

2011-05-01 16:10:27 | 活動レポート
おとといのブログで、4月28日(木曜日)に民主党政調の「雇用対策ワーキングチーム(WT)」が、福島原発作業員の安全・健康問題を特別に取り上げて議論したことを報告しました。事故発生後、間もない時期から民主党として取り組みが必要だと訴えてきた立場からすると、ようやくここまで来たかという思いがある一方で、何でもっと早くこういう取り組みが出来なかったのかと忸怩たる思いがあることも事実です。

しかし効果はあって、厚生労働省の担当部局もようやく動き出してくれました。私が強く主張したいくつかの点についても、動いてくれそうな感じです。ただ、これはやはり政治の責任として、引き続きしっかりと現場の取り組みや政府の取り組みを監視して、やるべき事が全て確実に実行されるように対応していかなければなりません。厚労省としての今後の取り組みについては、昨日、担当者が来て説明してくれたのですが、まだまだ内容が不明確かつ不十分、そしてスピードに欠ける部分が多いです。

この点は、5月10日に再度、WTの会合を開催して、厚生労働省としての取り組みとその進捗状況について確認することになりましたので、そこでまたしっかり確認作業を行いたいと思います。また、5月11日にはやっと、原子力安全保安院との会合が設定出来ました。原発関連の情報は保安院が一義的に統括していますので、今後の取り組みには保安院の役割が不可欠です。その点も併せてチェックしていきます。

さて、ブログにまたコメントをいただいています。皆さん、ありがとうございます。

まず、y浦野さんから概要、以下のようなコメントをいただきました:

「原発の作業員の健康の為に頑張って頂いて深謝いたします。縦割り行政の問題もありますが、学会も含めた関係団体トップの利害を優先したご都合主義も無いかと疑ってしまいます。この様な状況を変革する為には事実関係の確認を疎かににせずに、ひとつひとつの問題を必ず検証して責任の所在をはっきりさせることにあると思います。よろしくお願いします。又日本学術会議が造血幹細胞の保存に否定的な見解を発表していますが、その論旨には納得できないものがあります。この点についても徹底的に究明するようお願い致します」

ご存じない方のために少し説明すると、福島原発事故発生後、作業員の皆さんの緊急時の被ばく線量上限値を100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げる、という決定がされました。その時に、医療関係者の皆さんから、作業員の皆さんの万が一の事態に備えて事前に血液を採取し、ご本人たちの造血幹細胞を冷凍保存しておくべし、という提言があったのです。そうすれば、万が一大量の被ばくがあり、造血機能に障害が生じた場合でも、事前採取しておいた造血幹細胞を移植することによって機能を回復することが可能である、と。

しかしこの提言は、今に至るまで採用されていません。3月29日に、原子力安全委員会から「現時点で必要ない」という助言がなされたためです。今日も予算委員会でこの点について質問がありましたが、政府はあくまで「今後の選択肢の一つである」との立場を堅持しています。

しかし一方で、この提案は虎ノ門病院の谷口医師の主導の下、「谷口プロジェクト」として内外からの認知を受け、特に海外から大きな支援の声が上がってきています。そんな中、日本学術会議なる科学者の組織が、原子力安全委員会の「必要なし」という判断を支持する声明を発表したんですね。ところが、この日本学術会議なる組織の正統性や、声明の発出に至る論議の経緯などについて不明な点が多く、内部の会員からも「誰がどのように決めたのか?」という疑問の声が挙がっています。y浦野さんはこの点を指摘されているわけです。

今、谷口医師ご自身が、日本学術会議に対して公開討論会の実施を提案していますので、ぜひ早急に公開討論会を実施していただいて、公の場で、いかにして作業員の皆さんの安全・健康管理を図るかという点について医師や科学者の立場から議論していただき、提言をいただければと思っています。ただし、これも本来は政府の役割ですよね。原子力災害対策本部として、もしくは統合本部として、原子力安全委員会や原子力安全・保安院、さらには厚生労働省、経済産業省、文部科学省などの担当部局を集めて、専門家の知見をいただきながら、短期・長期の両面から取り得る最大の予防・防護策について検討するべきだと思うのです。この点は、今後も訴えていきたいと思います。


次に、西野さんから再度、メッセージをいただきました:

「応えていただいてありがとうございます。追加して今の状況下、厚生労働省の動きでどうしても納得いかないことを2つだけふれます。

まず、一時的とはいえ緊急時被ばく限度を250mSvに引き上げたことです。ICRPの2007年勧告取り入れのため放射線審議会が今年1月に出した報告で、緊急時を500mSvとしたことを根拠としています。しかし、この報告の提言で500の数字を出している3-aの二つあとにある3-c「緊急時に従事する者の要件について」で、「放射線業務従事者以外の防災業務関係者の要件は、『緊急作業に志願し、教育等をとおしてその作業で受ける可能性のある健康リスクを事前に理解した者であって、緊急時対応の訓練を受けた者』とするべきである。」としています。これは何を言っているかというと、放射線業務従事者以外の者(要するに放射線について知識等の前提がない)について、そのまま緊急時の作業に従事できることになっている現行の電離放射線障害防止規則第7条第3項を改正するべきということです。つまり、マスコミ等でも報道があるように、高放射線量下の作業に誰でもいいから行けというのでも今の規則ではかまわないとなってしまっている現状を変えろということです。限度を2.5倍に上げておいて、こっちはそのままになっているというのは言語道断だといえます。

それから、50mSv/年撤廃問題です。これこそ何を根拠にということになります。放射線審議会の報告もICRP勧告にも撤廃の根拠は見当たりません。昨日から報道されている小佐古教授の声明文だかに出ていた250という数字の根拠と同じですが、結局場当たりで東電と経産省からの大合唱に応えてずるずるとしか見えません。被ばく問題に及ばずながら取り組んできた立場から見て、厚生労働省はなしくずし状態で、まるで当てにならない存在になってしまっています」



いずれも、大変重要なご指摘だと思います。

まず一点目ですが、この点は私たちも「全ての作業員、とりわけ、今回初めて原発関係の作業、つまり放射線影響下での作業に従事する作業員について、必ず、現下の放射能汚染の状況や、身体へのリスク、安全の確保に向けた注意などについての事前ガイダンス、教育訓練を徹底すべし」ということで要求をしてきました。東電および東電労組からは、「正直なところ、事故発生後しばらくの間は混乱のために実行出来ていなかったが、その後は、全ての作業員について確実に実施している」との回答を得ています。

ただ、その内容が十分なものか、本当に下請けを含めた全ての作業員についてそれを実施しているのかという点については、今後、厚生労働省にしかるべき部署による直接的なチェックが必要だと考えています。私は、万が一、ちゃんとした知識を持たずに現場まで来てしまった作業員がいたとしても、事前のリスク説明や作業訓練がしっかりしていれば、そこで「やっぱり止めておきます」と言って考え直す労働者がいるかも知れない、そういう機会を確保することが必要だ、と主張しています。厚生労働省はしっかり確認しますと言ってくれているので、まずは報告を待ちたいと思います。

そして二点目ですが、これは厚生労働省としても相当に悩み抜いた上での判断であったと理解をしています。ご批判を覚悟で言えば、私はよく厚生労働省、この線で踏みとどまってくれた、頑張ってくれたと思っています。

すでにメディア等で報道されている通り、一部では、5年間で100ミリシーベルトという通常時の限度自体を(今回に限って)撤廃すべきであると主張している人もいます。しかしこれはそもそも、平時と緊急時の扱いに差を設けているのは何なのか、という問題になりますね。平時だろうが、緊急時だろうが、人間の身体は同じだし、放射能の影響も同じなわけです。にも関わらず、緊急時に違う限度枠を設けているのは、緊急事態が発生した時には、平時と同じ防護措置がとれる状況にない可能性があるし、また緊急事態の収束のためにやむを得ない対応があり得るだろうという、現実的かつ極めて例外的な判断に基づくものだと思うのです。

しかし、人間の身体は同じだからこそ、例えば5年間で100ミリシーベルト、年間で50ミリシーベルトという通常時の限度が設定されており、緊急時にこの50ミリシーベルトなり、100ミリシーベルトなりを超えてしまった作業員の方々は、それぞれ残余の期間の中でそれ以上浴びさせてはいけないし、浴びる可能性がある仕事に就けてはいけないというのが原則なわけです。それを「今後、他の原発で働けなくなるから」とかいう理由で基準を変更してしまうのは、正当化できないでしょう。

ご承知の通り、被ばく線量が200ミリシーベルトを超えていた作業員が二人いたことが、昨日になって東京電力から明らかにされました。今までは、最高でも197ミリシーベルトだと説明を受けていたのです。それが、二人ともすでに3月に被ばくしていて、うち一人は240ミリシーベルトだったわけです。それが明らかにされたのが昨日です。このような状況で、なし崩し的に被ばく線量の上限値だけが引き上げられていくのは、私たちとしても許容できるものではありません。

今後も皆さんのご指摘や提案をいただきながら、与党としての責任ある対応を率先していきます。