ゆめ未来     

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明日がくるようには思えなかったが

2020年04月13日 | もう一冊読んでみた
昨日がなければ明日もない/宮部みゆき    2020.4.13  

2020年版 このミステリがすごい! 国内編 第8位 『昨日がなければ明日もない』 を読みました。

馬鹿娘、佐々優美には、いらいらさせられる。
「好きで好きでたまらない」の優美と笠井いずみさんとのやりとりはよく分か.る。
常識人、笠井さんのイライラ苛立ちはいかばかりか。
この物語には、もうひとりすごい女性が登場する。
実生活では、絶対に係わりたくない人。 朽田美姫。
いるんですよね、想像を絶するこんな嫌な奴。
そんな馬鹿な娘と係わりたくない人が巻き込まれた明日が訪れるか分からない人のお話でした。

 「不躾ですが、参考のためにお伺いしたいので、お許しください。毅さんは、佐々知貴さんのどんなところが自分とは合わないと感じるんですか」
 「----一言で言うなら、いわゆる<俺様>なところです」


 所長の蛎殻昴氏は、子供のころに怪我をして左脚を痛め、歩行に若干の障害があって杖をついていること。車椅子テニスのかっこういいプレイヤーであること。そして料理が巧い。所長についてはそれぐらいしかしらないが、意中の女性ができたらある日突然結婚するぐらいのことはやりそうな、いろいろな面で慣例だの世間体だの他人の思惑だのを気にしない人物だということは理解しているつもりだ。

 「わたし、うちの祖母が言ってたことを思い出しました。お酒さえ飲まなければ、ギャンブルさえしなければ、浮気さえしなければいい人ってのは、それをやるから駄目な人なんだって」

 「わたしもウオッチしてきましたけど、いつも夢のようにハッピーなことだらけですよね。SNS上の日記なんて、だいたいがそういうものですけど」
 そこで披露されるのは、他者に見てもらうために演出、粉飾、トリミングした生活だ。見る側も、ある程度はそれを承知の上で見ている。
 「優美の幸せぶりに嘘はないんだろう。彼女の暮らしは、新婚旅行で行った地中海みたいに青い海なんだろう。だけど、どっかウェブでは見えないところに赤潮が発生している。どうしてもそんなふうに思ってしまって」


 「すご~い! プレ・ウェディングのエステや脱毛や、集中ダイエット宿泊プランなんてのもある。十日間でマイナス三キロから五キロって、キッそう」
 竹中夫人が鼻で笑った。「大枚払ってそんな真似しなくたって、結婚して苦労すりゃ痩せるのに。ねえ、杉村さん?」


 「お父さんにも、お母さんの気持ちをわかってやりなさいってお説教されました。やった方は忘れちゃうことでも、やられた方は何十年経ってもわすれられないことってのはあるんだって 」

 「どんないいワインでも悪酔いしそうだ」

 私も、共に生きていこうと誓い合い、愛情と信頼を預けていたパートナーに裏切られた経験がある。こういう傷は、たぶん永遠に癒えない。出血が止まり痛みが消え、目立たなくなることはあっても治りはしない。痛めたところがかえって強化されるということもない。忘れることもできない。
 慣れてゆくか、切り離すか。人によって対処の仕方は異なるのだろう。


 「朽田さんは、私が説明したんじゃ信用しないでしょう」伊納弁護士が言う。「もしくは、信用できないふりをするだろうね。」

何年かぶりで読んだ宮部みゆきさん。
人物描写が巧みで、おもしろかったです。
登場人物には、随分とイラとさせられましたが。


        『 昨日がなければ明日もない/宮部みゆき/文藝春秋 』


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