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両京十五日Ⅰ凶兆/馬伯庸

2024年04月29日 | もう一冊読んでみた
両京十五日Ⅰ凶兆 2024.4.29

馬伯庸の『両京十五日Ⅰ凶兆』を読みました。
登場人物たちが、躍動しています。

朱瞻基 明の皇太子
呉定縁 金陵の捕吏
于謙  金陵・南京行人司につとめる行人
蘇荊渓 医者
朱卜花 騎馬を管理する南京駐在の太監
昨葉何 暗躍する白蓮教徒
梁興甫 “病仏敵”の異名を持つ、白蓮教徒の男
老龍頭 南京の盗賊集団“白龍掛”の頭目
汪極  揚州の大塩商の当主
孔十八 偵察騎兵の元尖兵。精鋭中の精鋭

朱瞻基は遷都を図る皇帝に命じられ、北平から金陵に使わされる。
運命のいたずらか、この皇太子は図らずも、民の現実の生活をまざまざと見せつけられる。


 孔十八は眼をむいて、大声で怒鳴る。
 「なぜ迷う? 万一の事があれば生き残った者で家族の面倒を見る。事を起こす前に約束した事だ。俺は一人身の老いぼれ、死んだ方がさっぱりする。残された家族をお前たちか負担しなくてもいいんだ。安いもんだろ!」
 朱瞻基はずっと冷静な眼で傍観していた。孔十八の言う通りかも知れないと思った。彼らが暴動を起こした目的は薛孔目の横領をやめさせ、人夫たちが十分に食えるようにするためだ。今、十人が牢獄に入るという代償を払って目的を達したのだから、たとえ孔十八が殺されても。“安い”ものなのだ。
 ふいに白龍掛のことを思い出した。あの者たちも毎年数人を官府に差しだし、糧米を盗む目こぼしを得て、楊家墳の流民千余名を養っていた。彼らのやり方と孔十八の言っていることが重なる。底辺の民が交換に差しだせるものは人命だけで、それも見方によれば“安い”と言える。


 孔十八の統率は見事だ。京城の兵営で要職に就かせたら、どんな部隊を調練するか分からない。太子はひそかに感嘆して、身をかがめて抜け穴に入った。

 この情景を見ていて、朱瞻基にも激しくこみあげて来るものかあった。自分の本当の身分を明かしてしまいたいという強烈な衝動に駆られた。自分が太子だと口に出せば孔十八は生きられ、全員が放免される。
彼らは何も間違っていない。ただ必死に生きようとしただけだ。それがどうしてこんな苦難を強いられる?


地の文を読む煩わしさはあるが、それぞれの登場人物たちが絡む話が面白い。ついつい最後まで読み切ってしまった。

  『 両京十五日Ⅰ凶兆/馬伯庸/斉藤正高・泊功訳/ハヤカワ・ミステリ



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