春夏秋冬 思いのままに

春夏秋冬東西南北右往左往の過去現在、そしておそらく未来も

床屋のこと

2010年05月03日 | 日記
床屋が嫌いである。

物心ついた時から嫌いだった。
床屋の入口に座り込んで拒んだ。
業を煮やして親は私の頭を丸刈りにした。

それで暫く、家を出ることをしなくなった。
母が、そう話したことが有った。
その話と私の実感とが相乗してさらに床屋嫌いになったのか、もしれない。

友達に髪が耳に触るのが嫌でしょっちゅう床屋に行くのがいる。
それはそれで清々として良いのである。

床屋に行かないから、無精に見える期間が結構長いのである。
下を向いたり、横を向いたりと触りまくられるのが
厭なこともある。

昔は
目を閉じて髪を刈ってもらうことが恥ずかしかった。
かと言って目が合った時の恥ずかしさはぞっとするほどだった。

最近では、目をつむっているうち寝てしまったことも有る。
それはそれで気持よくよいのである、

どうしてなのだろう。
めんどくさくなっている。最近は。

嫁さんの手

2010年05月03日 | 災害援助
朝、目が覚めて寝ぼけた頭でメガネを探った。
指先に感触が有ったがポトと言って落ちた。
午前5時、早朝である。

極端に目が悪いと言う訳ではないが40年以上
体の一部としてきたのだから、はずしていると落ち着かない。
目が醒めればメガネをかけるのが習慣になっている。
トイレに起きてもうひと眠りしようとしたが、落ちたメガネが気になる。
見るとベットのしたにあった。
が、手が届かない。マットと背板の間から床に落ちたらしい。
朝の5時である。
マットを力任せにめくって手を突っ込んだが取れない。
あきらめた、が落ち着かない。

幸い、嫁さんのベットとは別である。
と言って、ガサゴソやっているのだから、
気が付いている、はずである。
なにしてんのとは言わない。
嫁さんの気遣い、である。はずである。

6時になって彼女が起きだした。
すかさず、ちょっと手伝ってほしいと言った。
怪訝な顔をしている。
メガネが隙間に落ちて・・。

マットをめくって、そのすきに嫁さんが手を突っ込んで
取れた。
良かった。ありがとう。と言った。

なにも返さず下に降りて行った。


思い出し方

2010年05月03日 | 日記
2カ月前だったか、半年前だったか思いだせない。

突然、目の前に現れた人に、アッと思った。
振り返ったときはショウウインドウの角を曲がったところだった。
少し、口元に笑みが有ったように感じた。

私と同じ年だから、年相応だったような、も少し若かったか、
あかぬけしていた。
一瞬なのにそこまで見届けた。

同じ年の同じ月に、4日遅く私が生まれて、
それがなぜか、負けている気になった。

夜行列車で逢いに行った。
ハンカチにミカンのにおいが有った。
8月の夜に。

追いかけて話しかけようかと思った。
待てと頭の中に声がした。
冷静に。

今日ね、珍しい人に逢ったような気がすると、
リハビリしながら話した。良かったですねと手を
揉まれながら言われた。 良かった。

緊張で、体調をくずし入院していた。
逢う1日前まで。
気持が沈んでいた。交差点の向こうに止めた車から
彼女が下りて口元に笑みを作ったように見えた。
見えないふりをした。
助手席に乗った。負けているような気がした。
なにも話さなかった。
話さなくちゃと思っても言葉が出なかった。
なにを話せばよいのか、まとまらなかった。

手紙が届いた。返事は書かなかった。
40年前のことである。

嫁さんには話さない。
あったりまえでしょう。