日本抹殺を目論む中国に備えはあるか?
今こそ国家100年の計を立てよ、米国の善意は当てにできない
JB-PRESS 2011.01.12(Wed) 森 清勇
今日の国際情勢を見ていると、砲艦外交に逆戻りした感がある。そうした理解の下に、今次の「防衛計画の大綱」(PDF)は作られたのであろうか。「国家の大本」であるべき国防が、直近の政局絡みで軽々に扱われては禍根を千載に残すことになる。
国家が存在し続けるためには国際社会の現実から目をそらしてはならない。日本の安全に直接的に関わる国家は覇権志向の中国、並びに同盟関係にある米国である。両国の国家としての在り様を検証して、国家百年の計を立てることこそ肝要である。
■中国は日本抹殺にかかっている
1993年に中国を訪問したポール・キーティング豪首相(当時)に対して、李鵬首相(当時)が「日本は取るに足るほどの国ではない。20年後には地上から消えていく国となろう」と語った言葉が思い出される。
既に17年が経過し、中国は軍事大国としての地位を確立した。日本に残された期間はわずかである。
中国の指導者の発言にはかなりの現実味がある。毛沢東は「人民がズボンをはけなくても、飢え死にしようとも中国は核を持つ」と決意を表明した。
当時の国際社会で信じるものは少なかったが実現した。小平は「黒猫でも白猫でも、ネズミを捕る猫はいい猫だ」と言って、社会主義市場経済を導入した。
また香港返還交渉では、交渉を有利にするための「一国両制」という奇想天外なノーブルライ(高貴な嘘)で英国を納得させた。
政治指導者ばかりでなく、軍高官も思い切ったことをしばしば発言している。例えば、朱成虎将軍は2005年に次のように発言している。
「現在の軍事バランスでは中国は米国に対する通常兵器での戦争を戦い抜く能力はない。(中略)米国が中国の本土以外で中国軍の航空機や艦艇を通常兵器で攻撃する場合でも、米国本土に対する中国の核攻撃は正当化される」
「(米国による攻撃の結果)中国は西安以東のすべての都市の破壊を覚悟しなければならない。しかし、米国も数百の都市の破壊を覚悟せねばならない」
他人の空言みたいに日本人は無関心であるが、日米同盟に基づく米国の武力発動を牽制して、「核の傘」を機能不全にしようとする普段からの工作であろう。
2008年に訪中した米太平洋軍司令官のティモシー・キーティング海軍大将は米上院軍事委員会公聴会で、中国海軍の高官が「太平洋を分割し、米国がハワイ以東を、中国が同以西の海域を管轄してはどうか」と提案したことを明らかにしている。
先の尖閣諸島における中国漁船の衝突事案がらみでは、人民解放軍・中国軍事科学会副秘書長の要職にある羅援少将が次のように語っている。
「日本が東シナ海の海洋資源を握れば、資源小国から資源大国になってしまう。(中略)中国人民は平和を愛しているが、妥協と譲歩で平和を交換することはあり得ない」と発言し、また「釣魚島の主権を明確にしなければならない時期が来た」
こうした動きに呼応するかのように、中国指導部が2009年に南シナ海ばかりでなく東シナ海の「争う余地のない主権」について「国家の核心的利益」に分類したこと、そして2010年に入り中国政府が尖閣諸島を台湾やチベット問題と同じく「核心的利益」に関わる問題として扱い始めたと、香港の英字紙が報道した。
(中略)
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佐藤栄作政権時代に核装備研究をしていたことが明らかになった。「非核三原則」を打ち出した首相が、こともあろうにという非難もあろう。
しかし、ソ連に中立条約を一夜にして破られた経験を持つ日本を想起するならば、「日本の安全を真剣に考えていた意識」と受け取り、その勇気に拍手喝采することも必要ではないか。
国際社会は複雑怪奇である。スウェーデンもスイスも日本人がうらやむ永世中立国である。その両国が真剣に核装備を検討し、研究開発してきたことを知っている日本人はどれだけいるであろうか。また、こうした事実を知って、どう思うだろうか。
「密約」を暴かずには済まない狭量な政治家に、そんな勇気はないし、けしからんと難詰するのが大方ではないだろうか。しかし、それでは国際社会を生き抜くことはできない。
■終わりに
漁船衝突事案では、横浜APECを成功させるために、理不尽な中国の圧力に屈した。日本は戦後65年にわたって、他力本願の防衛で何とか国家を持ちながらえてきた。
しかし、そのために国家の「名誉」も「誇り」も投げ捨てざるを得なかった。
今受けている挑戦は、これまでとは比較にならない「国家の存亡」そのものである。
米国から「保護国」呼ばわりされず、中国に「亡失国家」と言われないためには、元寇の勝利は神風ではなく、然るべき防備があったことを真剣に考えるべきである。
そのためにはあてがいぶちの擬似平和憲法から、真の「日本人による日本のための日本国憲法」を整備し、名誉ある独立国家・誇りある伝統国家としての礎を固めることが急務であろう。