学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

丸谷才一著『完本 日本語のために』を読む

2019-02-19 20:18:08 | 読書感想
私達はいつも日本語で物事を考え、会話をし、言葉を書いています。けれども、近頃は世の中の傾向として、世界中で使われている英語への関心が軒並み高いようです。すでに小学校では英語の授業が始まっているし、大人については言うまでもありません。こういう時勢のなかにあって、日本語とは何だろうかという素朴な問いが浮かび、丸谷才一氏の『完本 日本語のために』を読みました。

この本は2011年に書かれた本で、丸谷氏は現在の日本語教育のまずさと、本来の日本語の言葉が持つ魅力を記しています。これは、近代からの口語文がまだ文体として確立しておらず、さらに戦後の国語改革が私達の言語をまずくさせているといいます。そこで、私達が必要なこととして「形と整ひの規範は、実質的にも歴史的にも文語体にある」とし、文語文の素養を身につけることを勧め、永井荷風を例に挙げて、彼の言葉には「過去が付着して」いると評価します。

私自身、英語は仕事で使いますし、社会人にとって「世界経済」を生き抜くためには必要不可欠な言葉であることは理解しています。ただ、近頃はあまりに関心が英語に偏り過ぎているのが気になるところです。例えば、子供の名前も以前は漢字の意を組み合わせていたものが、今は音を漢字に嵌め込んでいくことが増えてきたよう。私達の言葉の捉え方が少しずつ変わってきたのかもしれません。

最後に、同著のあとがきを務めた大野晋氏の言葉を引きます。

「言葉を、伝わればよいと考えるところに、すでに精神の荒廃がある」

もっと、日本語について深く学びたいと思いました。

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